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行列の対角和について
行列の対角和(トレース)をとるという事は、 物理的にはどういった意味があるのでしょうか? よろしくお願いします。
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オブザーバブルは測定結果と対応づけられる固有ベクトルと固有値を用いて対角化が可能であることから、対角化した時の対角成分が物理的に意味を持ちます。 一方、A,Bを行列として Tr(AB)=Tr(BA) の関係が一般に成立しますので、オブザーバブルAを たとえば A=UBU^-1 の形に対角化したとして Tr(A)=Tr(UBU^-1)=Tr(BUU^-1)=Tr(B) となります。このような性質が、系が密度行列ρで指定されている時に、オブザーバブルAの期待値がρやAの行列表現の基底をどのように選んでもTr(ρA)となることにつながります。 ※Tr(ρA)となることの導出は省きます。詳しくはペレスの教科書でも読んでみて下さい。 また、Trにはもう一つの重要な性質 Tr(aA+bB)=aTr(A)+bTr(B) が存在します。(a,bはスカラー) これは系が混合状態にある場合に役立つ性質で、系の密度行列ρが純粋状態の密度行列ρ1とρ2を用いて ρ=a1ρ1+a2ρ2 と分解できた場合に、 Tr(ρA)=a1Tr(ρ1A)+a2Tr(ρ2A) となり、やはり混合状態の期待値をうまく計算できます。
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- grothendieck
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下の回答でURLを付けるのを忘れていましたので、ここでつけさせていただきます。
- grothendieck
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物理におけるトレースは重要なものが多く、全部は書けません。ここではGutzwillerのトレース公式と呼ばれるものを簡単に書くことにします。 Hをハミルトニアン,Eを実数としたとき、(E-H)の逆をグリーン関数と呼びます。ただしEがHの固有値と等しいと逆は存在しないのでEに無限小の虚部をつけます。 G(E)=(E+iε-H)^-1 Hの固有関数系でトレースをとると容易に分かるように Tr G(E) = Σ1/(E-En+iε) (Enはエネルギー準位) となりますが、Tr G(E)は非常に重要です。アインシュタインは古典的にカオスになるような系では作用-角変数が導入できないため量子化に困難があることを指摘しました。Gutzwillerはグリーン関数に反古典的な方法を適用することでエネルギー準位を古典的な閉じた軌道で表すことに成功しました。その導出は複雑ですので下記URLなどを見ていただきたいのですが、グリーン関数のトレースをとることはグリーン関数を始点と終点が一致するような空間内のすべての軌道について積分することを意味します。これによりカオスも量子論的に考察できるようになり、最近注目されているのではないかと思います。
- qntmphscs
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量子力学の意味での力学量Aの統計的平均値は、密度行列ρを用いて Tr[ρA] で表されます。また、カノニカル分布における任意の量Aの平均値は {Tr[Aexp(-βH)]}/{Tr[exp(-βH)]} です。ここでHはハミルトニアン、βは1/(kT)です。 上記の例では、トレースは平均値を求める数学的な道具として機能しているだけで、物理的な意味は持ちません。初等数学の「数値の和」が「無限次元対角行列の対角要素の和」に拡張されたものと理解しています。