- ベストアンサー
夏目漱石「こころ」の「上三十」の理解について
- 日本語を勉強中の中国人が夏目漱石の「こころ」を読んでいる。特に「上三十」の理解に困っている箇所がある。
- 具体的には、「すます」の意味、「仕切りなく」の意味、「いかな」の意味、「高い」の意味、「この言葉の前に小さくなった」の意味、「欺く」という言葉の使われ方、および「不徳義漢」の「漢」についての質問がある。
- また、彼らが代表している人間というものを一般に憎む理由についても知りたい。
- みんなの回答 (2)
- 専門家の回答
質問者が選んだベストアンサー
1.いつもの通り沈黙がちに落ち付き払った歩調をすまして運んで行くので、私は少し業腹(ごうはら)になった。 ここの「すます」はどういう意味でしょうか。 : http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn/104128/m1u/%E3%81%99%E3%81%BE%E3%81%99/の、 (5)(自動詞的に用いて)よそ行きの表情やそぶりをする。そんなことにはかかわりがないという表情やそぶりをする。 だと思います。 「いつもの通り沈黙がちに落ち付き払った歩調を運んで行くので、私は少し業腹(ごうはら)になった。」 という文に「すまして」が挿入されている構文でしょう。 「腹の中で先生を憎らしく思った」というのが「私」の感情だったのですが、先生は、 「そんなことには関わりが無い」と言わんばかりに落ち着き払って歩いて行く」 という意味です。 2.市中から帰る駄馬(だば)が仕切りなく擦(す)れ違って行った。 ここの「仕切りなく」はどういう意味でしょうか。 : http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn/81877/m1u/%E3%81%97%E3%81%8D%E3%82%8A/の、 (1)しきること。へだてを設けること。また、そのへだて。 「部屋の—」 かもしれません。 「隔てる(へだてる)ものが無いと感じるほど、すぐ近くを(非常に接近して)」という意味のような気もします。 ここは自信がありません。 3.先生の口からこんな自白を聞くのは、いかな私にも全くの意外に相違なかった。 ここの「いかな」はどういう意味でしょうか。 : http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%84%E3%81%8B%E3%81%AA&stype=0&dtype=0の[1] 「2 さすがの。」 「さすが(流石)」 http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn/76477/m1u/%E3%81%95%E3%81%99%E3%81%8C/の[一]の(3) です。 「これほど親しく付き合っているつもりの私であっても」 という意味になると思われます。 4.私は先生をもっと弱い人と信じていた。そうしてその弱くて高い処(ところ)に、私の懐かしみの根を置いていた。一時の気分で先生にちょっと盾(たて)を突いてみようとした私は、この言葉の前に小さくなった。先生はこういった。 (1)ここの「高い」はどういう意味でしょうか。誉め言葉でしょうか。 : 褒め言葉です。 「弱い」というのは自己主張をあまりしない(=自我的に弱い)というニュアンスで、 「高い」というのは精神的な高みを指しているのでしょう。 「自分のことには執着しないが、精神的には常に崇高なものを追求している」という印象を先生に対して持っていたのだと思われます。 (2)「この言葉の前に小さくなった」はどういう意味でしょうか。 : 「一時の気分で先生にちょっと盾(たて)を突いてみようとした」というのは、冒頭近くの 「私は少し業腹(ごうはら)になった。何とかいって一つ先生をやっ付けてみたくなって来た。」 と同じ意味です。 「小さくなった」は、 先生の素直な告白を聞いて、 「やっ付けてやろうとしていた気持ちが萎縮した」 という意味になるでしょう。 5.私は他(ひと)に欺(あざむ)かれたのです。 「だます」の意味として、「欺く」という言葉は現代でも使われるのでしょうか。 : 使われます。 http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn/2663/m1u/%E3%81%82%E3%81%96%E3%82%80%E3%81%8F/ (1)相手を信頼させておいてだます。 ですから、「だます」よりもさらに恨みが深いニュアンスがあるでしょう。 6.私の父の前には善人であったらしい彼らは、父の死ぬや否(いな)や許しがたい不徳義漢に変ったのです。 「不徳義漢」の「漢」は男性だけ指すのでしょうか。 : 殆どの場合、基本的にはそうです。 ただ、一人の女性に対して使うことはありませんが、「彼ら」の中に親戚の女性が一人も混じっていない、とまでは言い切れないような気もします。 「不徳義な人間ども」といったようなニュアンスで使った可能性はあるかもしれません。 しかし、ここはあくまで私見です。 7.私は彼らを憎むばかりじゃない、彼らが代表している人間というものを、一般に憎む事を覚えたのだ。 「彼らが代表している人間」はどのように理解するのでしょうか。 : 彼らは不徳義漢である→彼らは人間である→よって人間は不徳義漢である。 という三段論法が働いてしまった。 ということでしょう。 「彼らは不徳義漢である→彼らは人間である」までは正しいのですが、この三段論法が成立するためには、最後の結論部が 「よって人間は【すべて】不徳義漢である。」 となる必要があります。 しかし、「すべて」かどうかは検証されていません。 よってこの論法は成立しないのですが、「彼ら」に欺かれたショックが大きすぎて、冷静になる精神的余裕が持てなかった、ということになるでしょう。
その他の回答 (1)
- hakobulu
- ベストアンサー率46% (1655/3578)
>「擦れ違う」は普通「すぐ近くを(非常に接近して)」の状態でしょう。意味が重複したのではないでしょうか。中国語版はここを「絶えず」、「しきりに」と訳されています。いかがでしょうか。 :なるほど。 「仕切りなく」→「【時間の】隔てなく」→「絶えず」というわけですか。 当時のその時間帯はそれほど馬が多かったと考えれば、こちらの解釈のほうが自然かもしれません。 勉強になりました。 「仕切りなく」は現代では使われない言葉ですが、 現在使われている「ひっきりなし」 http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn/162906/m1u/%E3%81%B2%E3%81%A3%E3%81%8D%E3%82%8A%E3%81%AA%E3%81%97/ という言葉があります。 語感が似ていますから、もしかすると何か関係があるのかもしれませんね。
お礼
再びありがとうございます。大変参考になりました。本当にありがとうございました。
お礼
早速のご回答ありがとうございます。非常に参考になりました。大変助かりました。一箇所まだよくわからないのですが、もう一度教えていただけないでしょうか。
補足
2についてですが、 >「隔てる(へだてる)ものが無いと感じるほど、すぐ近くを(非常に接近して)」という意味のような気もします。 「擦れ違う」は普通「すぐ近くを(非常に接近して)」の状態でしょう。意味が重複したのではないでしょうか。中国語版はここを「絶えず」、「しきりに」と訳されています。いかがでしょうか。