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「こころ」の「上二十八」
日本語を勉強中の中国人です。夏目漱石の「こころ」の中国語版を読み終えました。いま日本語版を読んでいるところです。「上二十八」の中に理解できないところがありますので、お伺いしたいと思います。原文が載っているサイトは次の通りです。ご参考になさってください。 http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/773_14560.html 1、あなたのお父さんが亡くなられるのを、今から予想してかかるような言葉遣(ことばづか)いをするのが気に触(さわ)ったら許してくれたまえ。 ここの「かかる」はどういう意味でしょうか。 2、「君の兄弟(きょうだい)は何人でしたかね」と先生が聞いた。 先生のこの質問はなぜ「何人ですか」ではなく、「何人でした」でしょうか。 3、田舎者は都会のものより、かえって悪いくらいなものです。 ここの「くらい」はどういう意味でしょうか。 4、犬はその顔と背を熊笹の上に現わして、盛んに吠え立てた。そこへ十(とお)ぐらいの小供(こども)が馳(か)けて来て犬を叱(しか)り付けた。 「そこへ」はどういう意味でしょうか。 5、「姉さんやおっかさんが勝手の方にいたのに」 「台所」という意味として、「勝手」は現代でも使われるのでしょうか。 6、「ああ。叔父さん、今日(こんち)はって、断ってはいって来ると好(よ)かったのに」 先生は苦笑した。懐中(ふところ)から蟇口(がまぐち)を出して、五銭の白銅(はくどう)を小供の手に握らせた。 (1)先生はなぜ苦笑するでしょうか。 (2)先生はなぜ子供にお金をあげるのでしょうか。 7、「今斥候長(せっこうちょう)になってるところなんだよ」 この文はどういう意味でしょうか。 また、質問文に不自然な表現がありましたら、それも教えていただければ幸いです。よろしくお願い致します。
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1、あなたのお父さんが亡くなられるのを、今から予想してかかるような言葉遣(ことばづか)いをするのが気に触(さわ)ったら許してくれたまえ。 ここの「かかる」はどういう意味でしょうか。 : http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn/31529/m1u/%E3%81%8B%E3%81%8B%E3%82%8B/の [18] (動詞の連用形に助詞「て」の付いたものに付いて) 『…した態度で臨む。』 「子どもだと思ってばかにして—・る」「相手をなめて—・る」 です。 直訳的には、 「あなたのお父さんが亡くなられるのを【予想しているかのような態度で】発せられた言葉遣い」 という意味になります。 2、「君の兄弟(きょうだい)は何人でしたかね」と先生が聞いた。 先生のこの質問はなぜ「何人ですか」ではなく、「何人でした」でしょうか。 : この表現は色々なパターンがあると思います。 ただ、この箇所に限って言えば、 「すでに定まっている【確定的な事実】」として聞いたからでしょう。 そのために過去形の形をとっているのだと思います。 なぜこのような聞き方をするかと言えば、 「兄弟の人数自体」が話の本意ではないニュアンスを出したいから、です。 人数云々よりも、兄弟や親戚の関係性について先生は話そうとしています。 「兄弟の人数自体」が本意の場合とは、たとえば次のような場合です。 (ex1) ア:「あなたの兄弟姉妹は全部で何人いますか」 イ:「3人です」 ア:「ではあなたを入れて4人分の席を用意しておきます」 もう少し例をあげます。 (ex2) 社員A:「会社までの所要時間はどのぐらいでしたか?」 社員B:「大体1時間です」 社員A:「私より少ないですね」 社員Aは、「所要時間自体」に関しては「すでに定まっている【確定的な事実】」として過去形扱いしています。 現在知りたいのは「所要時間自体」ではなく、「どちらが所要時間が少ないか」ということだからです。 「所要時間自体」について知りたい場合とは、たとえば次のような場合です。 (ex3) 社員A:「会社までの所要時間はどのぐらいですか?」 社員B:「大体1時間です」 社員A:「では、毎日遅くとも8時には家を出なければなりませんね」 ただ、これらは、あくまでニュアンスの問題です。 話者の感覚次第なので、通常の場合、厳密な区別はないとお考えになってよいでしょう。 3、田舎者は都会のものより、かえって悪いくらいなものです。 ここの「くらい」はどういう意味でしょうか。 : #1さんのご回答と同じですが、http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn/54933/m1u/%E3%81%8F%E3%82%89%E3%81%84/の、 (3)ある事柄を示し、【動作・状態の程度】を表す。 「あんなことを言う—だから、何をするかわからない」「辺り一面真っ暗になる—のどしゃぶり」 でしょう。 「私」は、田舎ものは純朴で素直な(=良心的な)人間が多いと思っていたのですが、先生は、 「それは違う。田舎もののほうが都会のものより【「悪い」程度が甚だしい】」 と言ったわけです。 「都会のものより」は一種の比較表現ですが、これは原文の「かえって」という語の作用です。 4、犬はその顔と背を熊笹の上に現わして、盛んに吠え立てた。そこへ十(とお)ぐらいの小供(こども)が馳(か)けて来て犬を叱(しか)り付けた。 「そこへ」はどういう意味でしょうか。 : 「(犬が)その顔と背を熊笹の上に現わして、盛んに吠え立てているところへ」 です。 この場合の「そこ」は場所を指すのではなく、 http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn/113668/m1u/%E3%81%9D%E3%81%93/にある(1)の (ウ)今述べた場面。その場面。その時。 「友達と話し込んでいると、—へ電話が掛かってきた」 です。 5、「姉さんやおっかさんが勝手の方にいたのに」 「台所」という意味として、「勝手」は現代でも使われるのでしょうか。 : 今ではあまり使われないと思いますが、台所という意味として「お勝手」という言葉は、まだいくらか使われることがあります。 また、他の方々がおっしゃるように「勝手口」という熟語としてはよく使われています。 6、「ああ。叔父さん、今日(こんち)はって、断ってはいって来ると好(よ)かったのに」 先生は苦笑した。懐中(ふところ)から蟇口(がまぐち)を出して、五銭の白銅(はくどう)を小供の手に握らせた。 (1)先生はなぜ苦笑するでしょうか。 : #3さんのご回答どおりと思います。 植木屋といってもちゃんとした普通の家があったのですから、誰かいないかと一声かけるのが本来の対応でしょう。 子供に教えるようなことを逆に子供に諭されたので、これは苦笑するより他ありませんね。 ましてや人にものを教える「先生」ですから。 (2)先生はなぜ子供にお金をあげるのでしょうか。 : 以下の3つの事柄に対するお礼、並びに先生の気持ちでしょう。 ・犬を止めてくれた。 ・子供なのに先生を苦笑させるような正論をきちんと言えたことに対して感心した。 ・「おっかさんにそういっとくれ。少しここで休まして下さいって」と頼みごとをした。 7、「今斥候長(せっこうちょう)になってるところなんだよ」 この文はどういう意味でしょうか。 : 他の方々がおっしゃるとおり偵察部隊の隊長になって遊んでいるところだ。 という意味です。 子供らしい一面が表現されていて、一息つかせる場面ですね。 ただの「斥候」ではなく、わざわざ「斥候長」と言わせたところに面白さを、漱石は意図していたような気もします。 「同じくらいの年格好の小供が二、三人、これも斥候長の下りて行った方へ駈けていった。」 ということで、「~長」という表現が子供の単なる自慢ではなかったということが判明し、 「あ、なるほど。本当の意味での[長]だったんだ」 と納得すると同時に、そのことを一生懸命説明していた子供の様子を思い出しつつ、(作品には書かれていませんが)二人で再度苦笑したことでしょう。
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- hakobulu
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#4です。 すみません。 例によって訂正があります。 × 「都会のものより」は一種の比較表現ですが、これは原文の「かえって」という語の作用です。 ○ 「都会のもの【より】」は一種の比較表現ですが、「かえって」という語で、「あなたが思っているのとは逆に」という意図を付け加えています。
お礼
意味はよくわかりました。ありがとうございました。
- k99
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先賢のご回答に補足。 5 あまり使いません。 なお、「勝手」(口語では「お勝手」と言うケースが多いと思う)のみで台所などを指します。http://dictionary.infoseek.co.jp/?ii=0&lp=0&sm=1&sc=1&gr=ml&qt=%BE%A1%BC%EA&sv=KO&se=on ここに付いている出入り口が「勝手口」であり、勝手口から派生して「勝手」が台所を指すという説明は倒錯しています。 6 1)植木屋(当時、郊外には市内の庭園のための植木屋が多くありました)の敷地に入っているので、断らずに入ってもとがめられるところではありません(二十六で、そのようなやり取りがあったはずです)。敷地内は、いわばその植木屋のショールームのようなものですから、自由に見ても問題はありません。それは声をかけたほうが望ましいですが。 で、子供に「声を掛けてくれればいいのに」という正論を言われたために苦笑した、ということだと思います。 2)この場合は、伝言を頼んでいるために、お駄賃(チップ)としての小遣い銭を与えている、と思われます。 7) 「今斥候長(せっこうちょう)になってるところなんだよ」 今と違って、子供の遊びとしてメジャーなものに「兵隊ごっこ」がありました。軍隊のまねごとをするわけですね。意図的に無視されていますが、この時代は戦間期ですが、勝ち戦のあとだったわけで、軍に対する嫌悪感はあまりありません。 それで斥候長(先賢ご回答通り、偵察部隊の長)の役をやっている、ということでしょう。 なので、この子供が藪の中から出てきたことが、さほど不思議ではないわけです。
お礼
ご親切に回答していただきありがとうございます。とても参考になりました。本当にありがとうございました。
- sanori
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湖さん こんばんは! お答えします。 >>>1、ここの「かかる」はどういう意味でしょうか。 「そのような」あるいは「このような」という意味です。 「かかる」=「かくある」=「そのように/このようにある」 =「そのような/このような状態だ」=「そのような/このような」 「かくある」を使った例文を創作してみます。 「あの将軍の勇猛さを見よ。軍人たるもの、かくあるべし。」 >>>2、先生のこの質問はなぜ「何人ですか」ではなく、「何人でした」でしょうか。 理由はいくつか考えられます。 a)以前に聞いたことを再び聞くから。 b)知っていて当然のことを聞くから。 c)遠回しな聞き方をすることによって、表現を柔らかくしたいから。 >>>3、ここの「くらい」はどういう意味でしょうか。 普通の感覚での比較・判定とは逆の比較・判定になりうる、という意味です。 例文を作ってみますと・・・ 「彼はまだ高校生だがしっかりしてるから、もう大人と言っていいぐらいだ。」 「結婚するより、むしろ、独身でいる方が幸せなくらいだ。」 >>>4、「そこへ」はどういう意味でしょうか。 犬が吠えているところへ、という意味です。 >>>5、「台所」という意味として、「勝手」は現代でも使われるのでしょうか。 「勝手」という単独の言葉で台所を表すことは、あまりありません。 ただし、玄関ではなく、第二の出入り口のことを「勝手口」(かってぐち)と言います。 勝手口は、台所のすぐ近くにある場合が多いです。(私の家もそうです。) >>>6、(1)先生はなぜ苦笑するでしょうか。 気づかれないように入ろうとしたのに、気づかれてしまったからだと思います。 >>>(2)先生はなぜ子供にお金をあげるのでしょうか。 時代や、あるいは、それぞれの家や個人の習慣にもよりますが、 訪ねた家に子供がいたとき、お小遣いやお土産のお菓子をあげるのは、特段珍しいことではありません。 お年玉みたいなものです。 >>>7、この文はどういう意味でしょうか。 これは私にもわかりませんので、辞書を引きました(笑) http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn/108126/m1u/%E3%81%9B%E3%81%A3%E3%81%93%E3%81%86/ 「斥候」は軍隊において、相手の様子や地形を調べる役割をする部隊のようですので、 あたかも、その部隊のリーダーみたいだということですね。 >>>また、質問文に不自然な表現がありましたら、それも教えていただければ幸いです。 今回も大丈夫です。 ただし、細かいことですが、番号の後ろは「、」ではなく「.」と書くのが普通です。
お礼
さのりさん、おはようございます^^。早速のご回答ありがとうございます。とても参考になりました。本当にありがとうございました。
- OKWave_com
- ベストアンサー率46% (210/453)
1、「かかる」 私は2通りの解釈があると考えました。 一つは、「こんな。このような。」の意味です。後ろの「言葉遣い」に係って、「このような言葉遣い」の意味になります。 もう一つは、「着手・従事する。」の意味です。前の「予想して」に係って、「予想を始める」の意味になります。 原文をじっくり読ませていただけばどちらかに特定できると思うのですが、申し訳ありません。決めかねます。 2、なぜ「何人ですか」ではなく、「何人でした」でしょうか おそらく、初めて聞いた質問でなく、過去に同じ質問をして答えを聞いた記憶があるのだが、覚えていない、忘れてしまったようなケースでこのような(「かかる」)言い方をすることがあります。 3、「くらい」 この「くらい」は、辞書的には「ある事柄を示し、動作・状態の程度を表す。」となり、『田舎者は人が好い』という世間一般の印象と裏腹に、むしろ都会のものより総じて人となりの程度が悪いというニュアンスを表していると思います。 4、「そこへ」 「犬が吠え立てているその場面(状況)に」の意味です。 5、「勝手」(「勝手口」) 「台所」というより、「台所の出入り口。」の意味で、特に中高年の方は今でも使われると思います。 6の(1)、(2)については、申し訳ありません。もう少し前の章から読んでみないとお答えできそうもないです。さらっと眺めた限りでは、個人の邸宅ではないと判断し、黙って入ってきたことが関係しているのではないでしょうか? 7、「斥候長」 私も初めて聞いた言葉ですが、「斥候」とは、「地上戦闘の際,敵情,地形などを偵察,あるいはひそかに監視するため,本隊から派遣される単独兵または小人数の部隊」だそうです。 「斥候長」は「斥候」の隊長だと思います。 子供が遊びで今「斥候長」の役目を務めているところなのだと思います。
お礼
早速のご回答ありがとうございます。大変参考になりました。本当にありがとうございました。
お礼
ご丁寧に回答していただきありがとうございます。よくわかりました。非常に参考になりました。本当にありがとうございました。