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no one person's fault (ヘミングウェイ「フランシス・マコンバー」から)
ヘミングウェーの作品「フランシス・マコンバーの短い幸福な生涯」からです。 (Macomberの発音が、マコンバーなのか、マコーマーなのか、という疑問もありますが、それはさておき……) 主人公が、ライオン狩りのさいに目を覆いたくなるような臆病ぶりを露呈し、妻マーゴットから深く軽蔑された翌日、牛狩りの際には血気盛んで、ノリノリの態度を示し、逆に妻を白けさせてしまう場面。 (とはいえ、この男は、妻には、かなり以前からナメられている) "Isn't it sort of late?" Margot said bitterly. Because she had done the best she could for many years back and the way they were together now was no one person's fault. 果たして、この"no one person's fault"は、 a)「誰の」せいでもない b)「どちらか一方の責任」ではない どちらが正しい理解なのでしょうか? ちなみに翻訳では、谷口陸男・佐伯彰一・大久保康雄が(a)、高見浩が(b)を取っており、龍口直太郎は、いわば(a')とでもいうべき不明瞭な訳を付けています(「別に誰といってひとりの人間のせいではなかった」)。 ついでに、もう一つ質問ですが――ただこれは文学的内容なので、カテゴリーを逸脱してしまうかもしれません――上の部分が正確に理解できたとしても、bitterlyとBecauseの関係がよく分からないので、全体として私には疑問が残るのです。 どなたか、うまく説明できる方がおられましたら、ご教授ください。 つまり、because節が、うまく理由・根拠を提示しているようには思えず(おそらくハードボイルド的な省略のせいですが)、読んでいて、腑に落ちない。
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こんにちは。 先ほど別の件でもアドバイスさせていただいたのですが、その際のURLで、こちらの部分も読ませていただきました。提示された文の直前はこのようになっていますが↓ "You've gotten awfully brave, awfully suddenly," his wife said contemptuously, but her contempt was not secure. She was very afraid of something. Macomber laughed, a very natural hearty laugh. これは、しらけているというよりも、妻が素直な自分を見せているような部分でもありますよね。トゲトゲした奥さんがちょっとかわいく思える場面です。 >bitterlyとBecauseの関係がよく分からないので~ との事ですが、この場合の bitterly をすごくキツイ言い方をしたように捉えていますでしょうか?前後の文脈を考えますと、この文の中での bitterly はそのような意味ではなく、何となくみじめなような忍びない気持ちで言った言葉だと思います。bitterly にはそのような意味もあります。 カンマで区切らずそのまま続けると意味が通るかと思いますがどうでしょうか。 She said betterly because~ >果たして、この"no one person's fault"は、 a)「誰の」せいでもない b)「どちらか一方の責任」ではない どちらが正しい理解なのでしょうか? ですが、これもどちらも意味はほとんど変わりません。 [どちらか一方の責任ではない=誰の(他人)せいでもない=夫婦2人の責任だろう] ということだと思います。この文の中ではあくまでもこの夫婦2人の間のことについてしか述べていません。ですから、他に考慮すべき人や登場人物は考えにくくなります。 ちなみに、私は「マコーマー」だと思いますよ笑。 参考になれば幸いです。
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#1です。こんにちは。補足を拝見しました。 >bitterly は、聞き手のマコンバーにとって「苦い」(=耳が痛い)のか、発話者マーゴットにとって「苦い」(=言い出しにくい)のか、どちらでしょうか? 発話者であるマーゴットの心情的な部分を伝えている部分です。耳が痛いのではなく、#2,3の方がおっしゃるような「皮肉さ」も含まれているのだと思います。恐らくこの「皮肉」は嫌味やあてこすりというよりも、「相違」のことをおっしゃっているのではないかと思います。"皮肉な運命"などと言いますが、今までと状況や立場が変わってしまうであろう=相違、に対する思いです。 そういったことを踏まえ、前回、マーゴット自身、この変化に「がまんができないであろう/耐えられそうにもないだろう」という意味合いを込めて「忍びない気持ちで」と考えてみたのです。「苦々しげに」「興醒めな口調で」「はき出すように」と記載いただきましたが、にがにがした不愉快な雰囲気もあるでしょうし、興ざめた"口調"でしたら(言葉の調子がそのようなのであれば)興ざめも当てはまると思います。吐き出す、というと思っていたことを一度に口に出すイメージも無きにしもあらずです。苦々しいはどちらかと言えば直訳的な感じもしますが。 The winter wind felt bitterly cold~ というような文を目にした記憶があるのですが、その時は登場人物の辛い心情と外の空気を全て含めて「bitterly」と表現していたと記憶します。身に突き刺さるような寒さ、身にしみるような、痛みにも似た、というような意味合いだったと思います。 マーゴットも「ぐっ」っと、突き刺されるような心の動き(表現が下手ですが)があったのでしょう。 shiremonoさんが#3の中でおっしゃっているように「~さまざまな訳例と原文を参照することによってふくらませたイメージのなかから自分なりの読み方をつくっていくほうが楽しく~」というご意見には賛成です。特に先ほども申し上げたような、文学作品や小説などは、電化製品の説明書などとは全く違うものです。私自身、読んでいるうちにいろいろと想像が膨らんで勝手に結末を予測してしまい最後に「あれ?」と思うこともありますが、それはそれで良いのではないかなと思います。 理解していないのであればともかく、理解の仕方は人それぞれなんだな、と改めて感じました。楽しくというと語弊があるかも知れませんが、興味深いご質問でした。
お礼
ご意見、ありがとうございます。 回答をお寄せくださったお2人から、いろんなヒントを頂きました。 この一節について、現時点での私の理解は、次のようなものになります。 no one person's fault→「どちらか一方が悪いわけではない」→「夫婦の共同責任」→「自分(妻)だけが責任をまっとうしてきた」→「夫だけが努力を怠り、悪かった」→「夫1人が非難されるべきである」→「現実に、マーゴットは『夫の努力が遅い』と非難した」 要するに、“彼女が夫を責めたのは、夫1人だけが責任を全うしてこなかったからである”、というふうに、Because節を理解しておきます。
- shiremono
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No.2 の補足について 日本語の 「苦々しげに」 を 「口にするのがツライ」 と解釈するのは、不自然です。このことばは、 「いきどおり」 や 「不愉快さ」 などの感情がこめられていることをあらわす副詞 (形容動詞) です。むしろ、発話の調子などによって発話者がそうした感情を相手に伝えようとしている、というニュアンスをともなうのです。 そういう意味で、「苦々しげに」 は "bitterly" のよい訳だし、この文脈では 「皮肉っぽく」 と訳すことも可能だとかんがえます。有頂天になっている Francis には Margot の複雑な心情などまったく伝わらなくて、彼女をさらに追いつめるのですから。 数十行前の "‘I hated it,’ she said bitterly.‘I loathed it.’" の "bitterly" であれば、 「苦々しげに」 でもよいが、 「吐き捨てるように」 がぴったりするようにおもいます。 ただし "bitterly" には、日本語の 「苦々しげに」 などの訳ではカバーしきれないニュアンスがあります。ご質問の文脈での "bitterly" をたとえば 「つらそうに」 と訳してしまうのはまずいとおもいますが、 Margot の心情の主調が 「つらさ」 や 「みじめさ」 であるのは、No.1 さんがおっしゃるとおりだとおもいます。 "bitterly" からは、そのことが間接的に伝わってきます。 Francis は、いまや Margot にとって理想的な男性になった。しかし、同時に Margot の支配からも自由になったので、自分は捨てられてしまうだろう。 Margot が射撃の名手で意図的に Francis を撃ち殺すことができたのかどうかはともかくとして、泣きつづけた Margot の心にいつわりはありません。 日本語訳でこうした原文のニュアンスが切り捨てられてしまうのは、しかたのないことです。誤訳は論外ですが、どちらの訳が正しいのかという読み方をするよりも、さまざまな訳例と原文を参照することによってふくらませたイメージのなかから自分なりの読み方をつくっていくほうが楽しく、質問者さんはそのための手段や能力をお持ちだとおもいます。 「 『誰のせいでもない』 という訳は、あまり良くないな 」 というご考察の論拠には、なっとくさせられました。
お礼
ご意見をありがたく拝読しました。 ちょっとした私の思いつきであった“bitterly=言うのがツライ”という方向は、たしかに、うがちすぎていて、おっしゃるとおりに無理があるので、“bitterly=聞き手に対してツラい仕方で”という解釈が正しいように思いました。 ただ、ある種“中間的”な読み方、つまり“bitterly=激しく”という読み方、話し手の口調それ自体を修飾する語として理解するやり方も可能かな、と思い始めています。 というのも、たとえば、bitterly cold であれば、「とても寒い」と訳してあったりするわけで、この「とても」にあたるような、いわば中立的な、「強度」に関する語として配されているという理解です。マーゴットの言い方が「はげしい」言い方だった。夫を責める内容のセリフを「強く」言った(=吐き出した)、ということです。 そうすると、あえて「苦い」という日本語を持ち出す必要がなくなります。
- shiremono
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(1) "no one person's fault" について 訳しかたは、 (a)、 (b) どちらでもよい。要は、夫婦どちらかひとりだけの責任ではなかった、ということです。 この文脈での "one person" は、 Margot 自身をさしていっているのだとおもいます。 (2) "bitterly" と "Because" の関係について "bitterly" は 「皮肉っぽく」 でよいのではないでしょうか。Margot は、ある不安のかげにおびえながらも、いままでどおりの態度で、虚勢をはろうとつとめているのです。 ご質問の箇所を意訳しながら回答すると ; 「ちょっと遅くない?」 とあてこする理由が彼女にはあった。というのは、長年のあいだ彼女なりの努力はしてきたのだし、彼女だけのせいでふたりの関係がこうなってしまったというわけでもないのだから。 これは Margot の主観です。自分にとって都合のわるいことは忘れてしまったか、都合のいいように解釈しているのでしょう。 Francis に幻滅を感じた当初は励ましたりしてみたことがあったとしても、不思議ではありません。 ハードボイルドの訳で文脈の解説をしてしまっては、読者にしてみればそれこそ幻滅もいいところなので、この箇所の翻訳にしろ、もうひとつのご質問の "She's worried about it already" の翻訳にしろ、訳の問題ではないとおもわれます。この作品のいろいろな部分 (おそらくこの箇所についても) の解釈をめぐって、ヘミングウェー研究者や愛読者が議論をたたかわせているはずです。
お礼
ご意見ありがとうございます。 回答者(1)のかたへのお礼に書きこんだとおりなのですが、私的には、「誰のせいでもない」という訳は、あまり良くないな、と感じています。 その場合、自然の作用や、不可抗力をイメージしてしまうので……つまり、夫婦ともに免責されてしまうような、好ましからざるニュアンスが出てしまうので。 とはいえ、“どちらか一方の落ち度だというわけではない”、という文意がここでは問題になっていると分かり、スッキリした気分です。
補足
>"bitterly" は 「皮肉っぽく」 とのこと。 すると、bitterly は、聞き手のマコンバーにとって「苦い」(=耳が痛い)ということですね? この部分、翻訳では、大半が「苦々しげに」となっており、むしろ、発話者にとって「苦い」(=口にするのがツライ)という解釈のようです。 この点は、どうお感じになりますか? たぶん、これがBecause節との関連でも重要になるポイントだと思うのですが…
お礼
ご意見ありがとうございます。 私としては、「誰のせいでもない」という文であれば、まず「どちらも悪くない」と推論したくなります。たとえば、リストラを機に夫婦関係が悪化するというようなケース。いわば、天から降ってくるような形で、何かが作用するわけですよね。 この小説でも、そういう理解をしていいのかな、と思いながら、私は読んでいました。 しかし、 >誰の(他人)せいでもない=夫婦2人の責任だろう という等式を提示されておられるのを読んで、なるほどそういう理解もあるのか、という気分です。
補足
>bitterly はそのような意味ではなく、何となくみじめなような忍びない気持ちで言った言葉だと という読みをされていますが、bitterly は、聞き手のマコンバーにとって「苦い」(=耳が痛い)のか、発話者マーゴットにとって「苦い」(=言い出しにくい)のか、どちらでしょうか? 後者とのお考えですか? ちなみに、翻訳では大半が「苦々しげに」で、高見浩が「興醒めな口調で」、谷口陸男が「はき出すように」としています。