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"she let her go"――ヘミングウェイ“Up in Michigan”から(質問その2)
10ページに満たない短編「北国ミシガンにて」。 田舎の食堂の住み込み女中が、常連客の鍛冶屋に片想いを寄せ、彼がこれを“強引に”成就してやるという話です。 あるとき、彼が食堂の主人らと一緒に、数日狩猟に出かけてしまう。この間、彼女は、ひじょうに寂しく切ない気持ちになる。 ひしひしと女の情熱が伝わる、優れものの描写に至ります―― All the time Jim was gone on the deer hunting trip Liz thought about him. It was awful while he was gone. She couldn't sleep well from thinking about him but she discovered it was fun to think about him too. If she let her go it was better. ここで気になるのは、最後のところです。"let her go"とは、どういうことでしょう? 翻訳はマチマチで、 1)「いっそ、ひと思いに身をまかしたほうがましだろうとも思った」(龍口直太郎) 2)「思いきってからだごとぶつけていけたら、どんなにいいだろうと思った」(大久保康雄) 3)「心ゆくまで彼のことを考えているほうが、ずっとよかった」(高見浩) とくに、高見訳は、他とぜんぜん違っており、こんなにあっさりしたモノでよいのだろうか、と随分疑問に思います。 龍口訳は、“体を許す”という意味にしかとれない訳し方で、なんだかはっきりしない大久保訳よりも、キチンと狙いが絞られています、が、果たしてこの絞り方が的外れでないかという危惧もあります。 (あてにならない私の感覚では、「告白できたら」といった訳もありそうかなぁと) どうぞ、みなさんのご意見をお寄せ下さい。 (余談ですが、引用部2つめの文章中、awful について――ココはどういう訳でも構わないですが――個人的には、龍口訳「たまらないことだった」が大のお気に入りです。ちなみに、大久保訳「いたたまれない気持ちだった」、高見訳「とてもみじめだった」。)
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お礼
たいへん熱のこもった回答に感謝を申し上げます。 要するにGさんとして、「自慰」と解釈するのは、躊躇があるということですね? たしかに、let oneself go を、手元の辞書で引いてみると、 give way to one's desire とか、give way to one's feelings といった説明に出くわします。 つまり、“欲望・感情に身を任せる”ということで、仮に、この“欲望”を性欲寄りに解せば「自慰」になるでしょうし、“感情”寄りに理解すれば、高見訳同様、空想にふけるということになるでしょう。 結構、幅がある。 とはいえ、この幅、ambiguity についての、私の考えは、やや異なります。 すなわち、ambiguity を駆使して作家が狙うのは常に過激な標的だと、私はおもうのです。 テキスト中の ambiguity を指摘して、ここは2通りの解釈がある、3通りの解釈がある、などと言って悦に入るのは、滑稽な連中(学者など)の癖ですよ(まあ、私の想像ですが)。 日常経験でもそうでしょう? 誰でも口を濁すときには、毒を腹に秘めている。 それと同様に、ambiguity も暴いてみれば、過激な内容だといって間違いない。 その意味では、ここを最も過激に「自慰」だと解釈して、既存の翻訳をバッサリ切り捨てるのは、悪くない。そういう気がします。 ただ、訳としては「自慰」を前面に出すのは、誤りでしょうね。意訳も甚だしい。 私の要望は、If と better について、論理的な解説を加えてくれる方がいたらなぁ、というものです。実は、そういう投稿をお待ちしているわけです。