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藤村の詩、解釈お願いします。
島崎藤村 落梅集 「胸より胸に」の其の六から一節。 君ゆゑにわれは休まず 君ゆゑにわれは仆(たふ)れず 嗚呼われは君に引かれて 暗き世をはずかに捜る ◆質問: 1.第四句「暗き世をはずかに捜る」の解釈をお願いします。 2.”はずかに”の語の意味と、できれば用例もお願いします。 以上
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1.第四句「暗き世をはずかに捜る」の解釈 この暗い夜においても仄(ほの)かながら手探りを続ける。 2.”はずかに”の語の意味 確かに春陽堂版(1901年刊)には「はずかに」とありますが、 1917年刊の研究社版「藤村詩集:羅馬字」では「Kuraki Yo wo wadukani saguru.」であり、戦後の1946年刊の春陽堂版では「わづかに」となっています。 ここで、歴史的仮名遣いにおいて「はずか」では意味が不明ですが、「はつか」であれば中古の形容動詞ナリ活用で「はっきりしないかすかなさま、ほのかだ」という意味になります。後世では「わづか」に転用された経緯から、出版社は「わづか」に<校正>してしまったのではないでしょうか。 「名義抄」では「緬 ハツカニ ホノカニ」とあります。 そもそも「古語大辞典」(小学館)の「語誌」では「源氏物語によれば「はつか」は「かすか」「ほのか」に近く、「わづか」は「やっとのこと」に近い。」との指摘もあります。 およそ漢語・古語に造詣の深い藤村のここでの詩興からすれば「緬 ハツカニ ホノカニ」と表したかったように思えてなりません。
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- Nakay702
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以下のとおりお答えします。 >1.第四句「暗き世をはずかに捜る」の解釈をお願いします。 ⇒「暗い世の中を(例えば、素晴らしいもの・美しいものがないか)ちょっと/何とかして探してみる・調べてみる」といったニュアンスではないでしょうか。 >2.”はずかに”の語の意味と、できれば用例もお願いします。 ⇒古語辞典を見ますと、「はつか」の項で、 「①あるかないか、わからないさま。わずか。②やっと、かろうじて」 と説明されています。そして、例として、 「むかし男はつかなりける女のもとに」、「この殿は、はつかに宰相ばかりにておわせしかば」というのが挙げられています。 なお、私も『落梅集』初版(奥付に明治35年刊、実価35銭とあります!)の復刻版を持っておりますが、その中で2か所ほど同じ(とおぼしき)語句を発見しました。 (1)3ページ「小諸なる古城のほとり」:「麦の色はづかに青し」。 (2)953ページ「アマ*のなげき」:「行くは僅か〔はづか〕に舟一葉〔ひとは〕」。 *「海女」の意味ですが、原文では漢字1文字(「延」の下に「虫」)で表されています。
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早速にご丁寧なご回答をありがとうございました。 明治34年刊では「はずか」でしたが、 明治35年刊では「僅か〔はづか〕」でしたか、 新発見です。 重ねてありがとうございました。
麦の色はつかに青し
お礼
早速のご回答をありがとうございました。
わずかに手探りする。末尾の盲目に繋がると思います。 http://www2.odn.ne.jp/kotowaza/KOUGYOKU/21-5-16-tikumagawa-660.jpg
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早速のご回答をありがとうございました。
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早速のご回答をありがとうございました。 出典に遡っての解説をありがとうございます。 春陽堂版(1901年刊)「はずかに」 ⇒1917年刊の研究社版「Kuraki Yo wo wadukani saguru.」 ⇒1946年刊の春陽堂版では「わづかに」 ⇒後世では出版社は「わづか」に<校正> 知りたかった図星のご回答をいただき嬉しく存じます。 藤村が、はつかorはづか でなく はずか としたのはなぜでしょう。 「古語大辞典」の解説は初見ですが興味深く拝読いたしました。 蛇足ながら: 「緬 ハツカニ ホノカニ」にも触れておられますが、 「裁 ハツカニ」と充てている例もあったりします…出所失念。 因みに中国古典辞書類には(日本語部分は筆者注記) 緬 《康熙字典》…【說文】微絲也:毛のように/とても-細い 裁 《康熙字典》…【玉篇】裂也。:切れ端 裁《漢典》…【國語辞典】[副] 僅:わずか *少なくともこの詩における藤村の詩興は”緬”が適切のようですね。