初めに:通常の極限操作(x→1なら,xに1を代入する等)の結果答えが0^∞,∞^0,0^0などになるのを『不定形』といい,この場合は通常の代入するという操作では答えを出せません.このような時の対処法としては,eの定義式を利用する,微分係数の定義式を利用するなどの方法があります.
1問目:(eの定義式を利用する)
x^{1/(1-x)}のまま,
x→1より(1-x)→0
(1/1-x)→∞
∴ x^{1/(1-x)}→1^∞→1
とするのは間違いです.指数が絡んでくるときはこのように安易に計算してはいけません.
次のようにします;
まず,指数の1/(1-x)において、1-xがうざいのでコレをtとおきます.
すなわち,t=1-x
このとき、x→1よりt=1-x→0
このtを使って与式を変形すると,
x^{1/(1-x}=(1-t)^(1/t)…(1)
となります.ここまで変形すると、自然対数の底eの定義式が使えそうということに気付くはずです.
eの定義:e=lim[t→0](1+t)^(1/t)
と見比べて、(1)で-t=t'とおけばいいことがわかります.
t→0よりt'→0
(1)=(1+t)^{1/(-t)}={(1+t)^(1/t)}^(-1)→e^(-1) (t'→0)
したがって,
lim[x→1]x^{1/(1-x)}=e^(-1)
となります.
2問目:(微分係数の定義式を利用する)
とりあえずf(x)=(1/x)^tanxとおきます.tanxが肩に乗ってるとめんどいので,対数をとります.
すなわち,
log{f(x)}=(tanx)log(1/x) (∵ f(x)は明かに正)
とりあえずtanxから処理していきます.x→+0を考え,tan0=0を考慮すると,
log{f(x)}={(tanx-tan0)/(x-0)}×{xlog(1/x)}
{(tanx-tan0)/(x-0)}の部分は微分の定義に戻ると,x→+0で,tanxの微分のx=0における値であることがわかります.
すなわち,
lim[x→+0]{(tanx-tan0)/(x-0)}=(tanx)'[x=0]={1/(cosx)^2}|[x=0]=1…(2)
前半部分は解決したので,後半部分のみ考えればよいことになります.
後半部分xlog(1/x)において,1/xがうざいのでコレをtとおくと→t+∞でxlog(1/x)=(logt)/t
ここで少しばかりの知識が必要になるます.その知識とは
xが十分大きいとき,logx≪x≪e^xである.
という事実です.これによると,(logt)/t→0になるのではないかと予測できます.コレを証明します.
直接証明するのは無理そうなので,はさみうちの原理を利用してみます.
例えば,(0<)(logt)/t<1/√t…(3)となればいい.
(logt)/t<1/√t⇔√t-logt>0(t>0)
右辺をg(t)とおき,微分してみると,
g'=1/(2√t)-1/t
これは
t<4で負,t=0で0,t>4で正となるから
g(t)の増減は
t<4では減少,t=0で極小かつ最小,t>4で増加となります.
極小値かつ最小値,g(4)=2-log4=2(1-log2)=2log(e/2).
e=2.71828…より,e/2>1.
∴ g(4)=2log(e/2)>0
したがって (3),が成立するから,t→+∞とするとはさみうちの原理より,lim[t→+∞](logt)/t=0…(4)
以上(2),(4)より,
lim[x→+0]log{f(x)}=1×0=0
関数logxの単調性と連続性により
lim[x→+0]f(x)=e^0=1
∴ lim[x→+0](1/x)^tanx=1
となります.
お礼
本当に分かりやすい説明、ありがとうございました!