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伊藤積分過程

金融工学の授業で、伊藤積分過程の条件付期待値について勉強していたのですが、 "確立変数Xと情報Fが独立ならば E[X|F] = E[X]" というくだりがあったのですが、 どのようにしてこのような等式が導き出されたのか分かりません。 宜しければどなたかご教授頂けないでしょうか。 お願いいたします。

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  • adinat
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回答No.1

おそらく経済の方で、数学がご専門でないと想像して書いてみます。 Xが情報(σ加法族)Fと独立な確率変数のとき、 E[X|F] = E[X] が成り立つとありますが、この式は厳密には等式ではありません。その話を完全に理解しようと思うと、ルベーグ積分論という大仰な道具を持ち出さないとどうしようもないのです。条件付期待値の定義にさえ、ラドン・ニコディムの定理というかなり面倒な定理が前提になっていますので、ここではあまり深くこだわらない方がよいのでは、と個人的には思います。 ここでは直感的な意味を簡単に述べるにとどめることにします。右辺のE[X]はもちろんXの期待値(平均)ですが、左辺のE[X|F]はFという情報を得たときのXの条件付期待値という意味です。ここではXとFは独立であるから、いかな情報を得ようとXの値を予測することは不可能です。したがって情報Fを得ようが、得なかろうが、Xの期待値にはなんら変わりはないのです。それがE[X|F] = E[X]の意味です。 確率過程論においてよく出てきそうな例ですが、毎秒コイントスを繰り返して、表が出たら右に一歩、裏が出たら左に一歩移動するような確率過程(これはシンプルランダムウォークと呼ばれています)を考えてみます。n秒後にはnから-nのどこかに到達しています。そしてn秒後までの全情報を集めたものをFとしましょう。情報というと意味があいまいなのですが、この場合のFは要するにn秒までのすべての経路が含まれているということです。この情報を持ってして、果たしてn+1秒後のこのランダムウォークの位置X(これはn+1~-n-1のどれかになる確率変数です)を予測できるか、ということを考えます。当然今までどういう風にやってこようが、次にコインが表が出るか、裏が出るかまったく分かりません。これは要するに情報系Fと確率変数Xが独立だ、ということです。したがってE[X|F] = E[X]が成立します。 もう一つ独立じゃない例をあげておきます。ちょっと無茶な例なんですが、情報系として、「すべての」情報を集めてみることにしましょう。これは要するに神様を考えるようなものです。先のランダムウォークの例でいえば、コインが表が出るか、裏が出るか、その順番まで込めて神様はすべて知っている、と考えるわけです。したがってE[X|F]は条件付期待値とはいいますが、何の条件も課されていない確率変数Xそのものと一致します。少しこのことは理解しにくいと思うのですが、期待値というのは要するに「起こりうるすべての場合の結果を平均したようなもの」なわけです。ところが今Fは全情報であることを考えているわけですか、確率変数XはもちろんXしか起こらないということになるのです。正直このあたりになってくると、直感的な理解を得るのがかなり困難になりますので、公理論的な測度論に基づく確率論を構築する方が賢明ですし、間違いもありません。 なお準備をはしょって先の結果の証明を簡単に延べておくと、Aを情報Fに含まれる任意の事象とするとき、 ∫_A E[X|F]dω=∫_A Xdω=E[1_A X]=E[1_A]E[X]=P(A)E[X]=∫_A E[X]dω が成立します。ここで第一の等号は定義、第三の等号は事象Aと確率変数Xが独立であることから従います。また最後の等号はE[X]が定数であることから従います。Aは任意の事象なので条件付期待値の定義からE[X]=E[X|F]となるわけです。厳密には定数(確率変数)E[X]が情報系Fに関して可測になることも使っています。

part2000
質問者

お礼

すばやいご回答、ありがとうございます。 非常に分かりやすい説明で、とても助かりました。 ところで、概念的には納得できたのですが・・・ これを数式で簡単に証明することはできないのでしょうか? 理系の知り合いに聞いてみたところ、 aがFに含まれる時、E(X・Ia) = E(E[X|F]・Ia) XとFが独立ならば E(X・Ia) = E(X)・E(Ia)      = E[E(X)・Ia] というような数式から証明できるんじゃないか・・・ というアドバイスを貰えたのですが、いまいち分かりません。 度々お手数かとは思いますが、宜しければ再度ご教授頂けないでしょうか。 質問ばかりで申し訳ありませんが、どうかよろしくお願いいたします。

その他の回答 (1)

  • adinat
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回答No.2

part2000様がおっしゃった数式による証明はすでに私が書いております。なお準備をはしょって先の結果の証明を簡単に延べておくと、というくだりのところです。簡単な数式で証明できた気になられるかも知れませんが、この意味を理解するのは相当やっかいです。 ご友人様のおっしゃるようにE(X・Ia) = E(E[X|F]・Ia)が成立します。これは条件付期待値の定義です。この回答の下の方もご参照ください。また、 E(X・Ia) = E(X)・E(Ia) = E(E(X)・Ia) というのも正しいです。後の式は定数を期待値の中にいれただけなので容易ですが、前者は独立性の仮定を使っています。情報系と確率変数の独立の定義は、任意の情報系に属す事象の定義関数、要するにIa、あるいは私の書き方ですと1_Aですが、と確率変数の積の期待値が分解できる、ということが出来ます。これらをあわせれば E(E[X|F]・Ia)=E(E(X)・Ia) となるわけですから、aがFの任意の事象であることにより、中身が等しい、つまりE[X|F]=E(X)が得られます。この根拠は一番下に書いておきますが、かなり高度な測度論のテクニックが必要です。証明を追わなくても使いこなせるようになるとは思いますが... 念のため条件付期待値の定義を書いておきますが、この定義がしっくり来ないようでしたら証明は気にしない方がよいというのが私の意見です。専門的に数学を使うわけでないのなら、それほど困らないのでは、というのが私の持論だから。 条件付期待値E[X|F]とは以下の条件を満たす確率変数のことである。 (1) 任意のFに属す事象aの定義関数Iaに関して、 E(E[X|F]・Ia)=E(X・Ia) (2) E[X|F]はF可測である。すなわちaを適当な実数とするとき{E[X|F]≦a}なる集合はFに属する。 そして条件付期待値はルベーグ0集合をのぞけば一意的に存在する、ということを保証するのがラドン・ニコディムの定理です。このことがあるからこそ、E[X|F] = E(X)の証明をするのに先の方法が通用するのです。 また条件付期待値E[X|F]があるF可測な確率変数Yに等しいことを証明するのに、任意のFの事象aに対して E(E[X|F]・Ia)=E(Y・Ia) を示せばよい、という定理(定理というほどでもないですが、やはりラドン・ニコディムの定理が必要です)があります。これが先の回答の根拠になっています。

part2000
質問者

お礼

お礼が遅くなり申し訳ありません。 先のご回答で既に書かれていたのですね。 無知さをさらけ出してしまいました。。 重ね重ねご丁寧な説明、ありがとうございます。 やはり完全には理解しきれない部分があるので、とりあえずは結果のみを利用し、 少しずつadinatさんの解説を理解して行こうと思います。 本当にありがとうございました。

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