- 締切済み
売主の瑕疵担保責任について
売買契約における売主の瑕疵担保責任についての質問です。 缶ジュースの中に虫が入っていた場合、売主に責任はあるかという問いです。 法定責任説に立つとします。 ・缶ジュースは不特定物なので570条の瑕疵担保責任は問えない。 ・どんなに注意しても売主は缶の中の虫に気づく事はできない。 従って売主は無過失なので415条の債務不履行責任は問えない。 ・結論として、買主は返品・返金はできない。 という理解で正しいでしょうか? 実務上では代替品に換えてもらえると思いますが、あくまでも理論上の話しとしてお願いします。
- みんなの回答 (6)
- 専門家の回答
みんなの回答
- kgei
- ベストアンサー率61% (230/376)
さらに補足すると、種類債権が「特定」すると、以後は「特定物債権」となる、という命題は正しい部分と間違っている部分があります。 種類債権の債務者は重い責任を負う(種類物がある限り、履行責任を負う)ため、この重い責任を限定する必要があります。 具体的には、目的物の保管管理の善管注意義務と危険負担です。 種類債権では、目的物の保管管理の善管注意義務と危険負担を論ずることができません。 しかし、特定物債権に転化すれば、目的物の保管管理の善管注意義務と危険負担を論ずることができるようになります。 このような意味で、種類債権について「特定」によって以後は「特定物債権」となると言っているわけです。 このような意味を超えて、「特定」すれば、瑕疵ある物であっても、それが債権の目的となるという意味を持っているわけではありません。 このことを簡潔に説明するならば、「特定」するためには、目的物が瑕疵あるものであってはならない=種類物として一定の属性をきちんと有していることが必要である、ということになります。
- kgei
- ベストアンサー率61% (230/376)
質問者さんは、債権の本来の効力としての「本来の履行請求権」を無視した立論になっています。 「本来の履行請求権」の根拠条文としては、先の回答で民法415条を指摘しましたが、より正確にいえば、債権の本来的効力として当然のことであり、民法415条は、この当然の法理に基づいた規定ということになります。 債務者が(本来の給付について)履行をしない場合、無過失であっても本来の履行を求めて強制執行できることと同じことです。 潮見教授の債権総論では、表現がやや難しいですが、この記述があります。 近江幸治 民法抗議 債権総論(成文堂) 第3版補訂 85Pに本来の履行請求権について債務者の過失は不要と明記されています。 質問者さんが大学生や資格学校の生徒ならば、先生に確認してください。試験では良く問われる論点です。 質問者さんが挙げている判例は「 不特定物の売買において給付されたものに瑕疵のあることが受領後に発見された場合、買主がいわゆる瑕疵担保責任を問うなど、瑕疵の存在を認識した上で右給付を履行として容認したと認められる事情が存しない限り、買主は、取替ないし追完の方法による完全履行の請求権を有し」とありますから、この判例に基づく限り、虫の入っていない缶ジュースの引渡しを買主は請求できることになります。 買主が虫の入った缶ジュースを履行として容認することは、通常考えられませんから。 判例が法定責任説か債務不履行責任説かは議論があります。しかし、不特定物売買における売主の責任はかなり重いですから、売主の責任を限定するために瑕疵担保責任を不特定物売買にも適用するという考え方は、1つの考え方として合理性はあります。ただし、その場合、買主の利益とどう調整するかの難しい問題があり、判例は「買主がいわゆる瑕疵担保責任を問うなど、瑕疵の存在を認識した上で右給付を履行として容認したと認められる事情」がある場合には、完全履行請求権ではなく瑕疵担保責任の問題としたということです。
- kgei
- ベストアンサー率61% (230/376)
No.1さんの指摘が本質を突いています。 質問者さんの疑問は、民法の学習者が良く間違う点です。 不特定物売買においては、売買契約本来の効果(請求権)として、買主は瑕疵のない目的物の履行請求権を有します。 民法415条では、債務不履行とは「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき」と規定していますから、債務の履行とは「債務の本旨に従った履行」を意味します。 不特定物売買では、一定の種類に属する物を目的物(当然、瑕疵がない物)としますから、「債務の本旨に従った履行」とは瑕疵のない一定の属性を備えた物の給付を意味します。 ここまでは大丈夫でしょうか? そうすると、虫の入った缶ジュースは、債務の本旨に従った履行ではありませんから、買主は瑕疵のない目的物=ここでは虫の入っていない缶ジュースの履行請求権を有します。 特定物売買であっても、売主が目的物を引き渡さない場合を考えて下さい。債務不履行責任の有無にかかわらず(売主が無過失であっても)、買主は売主に対し目的物引渡請求権があります。 したがって、結論として、缶ジュースの買主は虫の入っていない缶ジュースの引渡を請求できる。虫の入った缶ジュースは不当利得になるので、売主に返品する義務がある、ということになります。 返金は、売買契約の解除になりますので、債務不履行に基づく契約解除の問題になります。債務不履行に基づく契約解除の場合には帰責事由を不要とする見解もあります。
- ashitahatennki
- ベストアンサー率15% (10/66)
缶ジュースの中に虫が入っていた場合 販売者が中身の事実を知らない場合 瑕疵責任は製造元 製造元責任 > 小売店など販売責任ではない。
お礼
現時点で関心外の論点ですのでコメントは控えさせて頂きますが、 ご回答下さりありがとうございました。
- fujic-1990
- ベストアンサー率55% (4505/8062)
今、手元に六法がないので570条や415条になにが書いてあるか分からないのですが、 > 缶ジュースは不特定物なので570条の瑕疵担保責任は問えない という立論が間違っていると思われます。 学生時代、火災など危険負担の問題などで、さんざん「ビールなどの不特定物は何時特定物になるか」議論させられましたが、思考遊戯の「理屈」としては、酒屋が買主のところへ持って行こうとして、店頭に移動するなど他のビールと区別したとき、という話で落ち着いたと記憶しています。 店頭に缶ジュースを並べる行為は、「これを1個○○円で買いませんか」という「特定物の売買」の申し込みに該当し、それを取り上げてレジに持って行く行為は、特定物売買の承諾に該当します。 黙示の契約に従って買主は特定の缶ジュースの代金を払い、特定の缶ジュースの所有権を取得します。 したがって、質問者さんが缶ジュース売買について瑕疵担保責任が成立しないと考える根拠が、「缶ジュースは不特定物から」というだけなら、「すでに特定物売買になっているので瑕疵担保責任は成立している」と言えます。
お礼
なるほどと思いました。 ただそれだと「では不特定物の売買ってどういうケースがあるだろうか」という疑問を持ちました。 中古車を買うのは特定物売買ですが新車でもやはり特定物売買になりますね。 販売店で「鈴木様 ご成約済み」と貼られた時点で。 あるいは契約成立の時点を基準として特定物・不特定物を分けるなら 缶ジュースを店頭で買うか、通販で買うかで結論が変わると言う事になりしっくり来ませんね。 色々考えてると自分が何を知りたかったのかすらよく分からなくなってしまいました(笑)。 ご回答ありがとうございました。
補足
缶ジュースを店頭で買うか、通販で買うかどちらにせよ結論は変わらないようです。 通販の場合、売主の持参債務ですので 「債権者の住所において目的物を提供した時」に不特定物から特定物に変わります。 引渡し後には特定か不特定かを論じる余地は無いのですね。 ご指摘の通りでした。 私もまだまだ未熟です。 ありがとうございました。
- buttonhole
- ベストアンサー率71% (1601/2230)
>従って売主は無過失なので415条の債務不履行責任は問えない。 415条は、債務不履行による損害賠償請求権に関する規定ですよね。なのになぜ >結論として、買主は返品・返金はできない。 返品や返金の話になるのでしょうか。損害賠償請求の話ではないですよね。すなわち、完全履行請求権としての代替品の請求や債務不履行を理由とする契約の解除に関する話ですよね。これらは、債務者に過失がないと、債権者は完全履行の請求権や契約の解除権を有しないのでしょうか?
補足
[解除権について] ・法定解除は債務不履行(415条)の用件を満たしたときに発生する。 ・不完全履行は債務不履行の一態様である。 ・債務者に帰すべき事由による不完全履行でなければ解除権は発生しない。 [完全履行請求権について] 570条が適用されない以上、民法は過失責任が原則なので 無過失の売主に対して完全履行の請求はできないのではないでしょうか。
お礼
判例を見つけました。 http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52879 判例は不特定物であっても570条を適用していますので、 法定責任説には立っていません。 今回の缶ジュースのケースでは ・「債務の本旨に従った履行」ではないが履行はしている。 ・隠れた瑕疵があった、不完全な履行(債務不履行)だった。 ・債務者の責めに帰する事由はない。従って追完可能なケースであるが追完の請求はできない。 kgeiさんの 「債務不履行責任の有無にかかわらず(売主が無過失であっても)、買主は売主に対し目的物引渡請求権があります。」 といえる根拠が分かりませんでした(570条が適用されるなら分かりますが法定責任説です)。 徹底して法定責任説に立つとするなら、やはり返品・返金はできないかなと思いました。 だからこそそれでは買主に酷なので判例は570条を適用する立場を採ったのだろうと。 ご回答ありがとうございました。
補足
その後、債権のテキストを読み進めた所この缶ジュースの件において 法定責任説に立ったとしても570条が適用されると分かりました。 引き渡し後の缶ジュースは特定物として扱われるからです。