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堀辰雄の『風たちぬ』
日本語学習者でございます。 ある教科書に堀辰雄の作品、『風立ちぬ』の紹介がありました。 『ヴァレリの詩「海辺の墓地」中の一句「風立ちぬ、いざ生きめやも」から表題をとった中篇小説』 と書いてありますが、 それは日本の古文かな?と思ってて調べたら、全句の翻訳が見つかりました。 でも、古文を勉強したことがありませんので、文法的にはいまいちわからないのです。 『風立ちぬ』ってなぜ「立ちぬ」なのか、みたいなことまで知らないぐらい古文についてまったく知識がない私に、 その詩の意味を説明していただけませんか。 よろしくお願いいたします。
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堀辰雄の 「風立ちぬ、いざ生きめやも」の部分を説明すればよろしいのでしょうか? ・風立つ: 風が出てきた。 「立つ」とは、その時に、風が一回だけ、さあっと通り過ぎたというものではなく、今まで静かだった辺り全体に、風が吹き始めたという感じです。 ・(風立ち)ぬ: 完了・強意の助動詞終止形。 動詞が示す動き(ここは風立つ)が完了したことを示します。 ということで、「風立ちぬ」は「風が立った」とか「風が出てきた」などと考えればいいと思います。 ・いざ: さあ、いよいよだ 「さあ、でかけよう」にくらべて「いざ、出発」と「いざ」を使うと強い意思を感じるようになります。 ・(生き)め: この場合は意思の助動詞「む」の已然形 意思:生きていこうか 「可能」ととれば「生きることができるだろうか」になります。しかし、ここは意思でしょう。 ・(生きめ)やも: 反語の助詞 「~か、いや~ではない」 ということで、「いざ生きめやも」は「さあ、生きていこうか、いや死のう」という意味になります。 しかし、出典である堀辰雄の「菜穂子」の内容からいけば、「生きていこうか、生きていくまいか、いや生きていくぞ」という意味の方が合っています。大学では、「文法と解釈」を考える題材としてよく取り上げられるようです。 ちなみに、もともとのヴァレリーの詩は、 「風が立った、私たちは生きようとしなければならない」といような意味です。この意味であれば、読者が望む形で「菜穂子」の内容ともピタリ合致します。しかし、堀辰雄はそう書かなかったわけです。「なぜでしょう?」というのがポイントになるのでしょうね。 この問いには正論はあっても正解はないと思います。
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- shigure136
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篠原暁子(俳人)の解説です。 堀辰雄の結核発病は、19歳の時であった。特効薬もない時代、彼は病巣を抱えたまま学業をつづけ、文筆活動に入っていく。 『風立ちぬ』は、自ら病みつつ、より病状の重い婚約者に付添って信州のサナトリウムに入った数か月の経験をふまえて、書かれたものである。 『風立ちぬ』全章を貫くものは、あくまでも清澄なロマンである。抒情の世界である。感傷的な通俗の甘さとは異質の、日常生活に根ざした抒情なのである。 『風立ちぬ』は「序曲」から始まる。病気の予兆はあるが、まだすこやかな様子の若い女性が、熱心に絵を描く姿が映し出される。そして、まだ少女らしさの残った無心な美しさに、心ひかれる青年(私)がいた。 何もかも始まったばかりで、「何物かが生まれて来つつあるかのよう」な希望のひとときに、不意にどこからともなく、風が立ったのである。 風たちぬ、いざ生きめやも 不思議な美しさをもった詩句である。どこか不安な風のざわめきに、心をふるい立たせている繊細な魂、「さあ、何とか生きてみよう」と自分に言いきかせるような、また呼びかけるようなフレーズである。 「生きめやも」という文語的な表現は、元来は反語の意味をもつ。しかし、作者がフランス語の副題、ポール・ヴァレリイの原詩をつけているところから、「生きることを試みなければならない」という直訳の通り、意志的にとるのがよいだろう。 生きようとする意志と、その後に襲ってくる不安な状況を予覚した「いざ生きめやも」なのである。 当時の結核患者には、治療薬というものがないため、「大気、安静、栄養」療法が、回復への手引として示されていた。自分のもっている治癒力にすがるだけの、いつも死が間近にある病い―それだけに二人だけでともかくも生きようとする一筋の光の世界を、作者は描きたかったのである。
お礼
とても参考になりました。 図書館から堀辰雄に関する本を何冊も借りてきて、 いま頑張って読んでいます。^^ ご返答ありがとうございました。
- satiro
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参考になりそうなページがありました。
お礼
お礼が遅くなってすみませんでした。 参考になるページを教えていただきありがとうございました。
お礼
詳しく説明していただきありがとうございました。 とても助かりました。 この作品にとても興味があってこないだ読み始めました。 読んでいるうちにその詩の真意を見つけたらいいなと思っていますが、 文章が難しいので少しずつ進んでいます。^^