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哲学書の難しめの表現はどこまで簡潔に翻訳できる?
- To enjoy it is to lose it; its end is in the body and therefore subject to satiety.(快楽が欲望を消滅させるー肉体が目的であるから、飽きるという感覚を免れられないのだ。)
- 拙訳:それを味わうことは、それを失うことになる。目的は肉体にあるゆえに、飽きやすい。
- この英文を『哲学書らしさを残しつつつも、どこまで簡潔に』訳せますか?
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以下のとおりお答えします。いつも楽しいご質問をありがとうございます。最近(スマホの普及のせいか)楽しい質問が少ないと思います。そんな中にあって、lived in room13さんのご質問に接すると、何だか生き返ったような、生身の人間に出会えたようなワクワクする気持ちにさせていただけるので、嬉しい限りです。ただ、それにしては、相変わらず冴えない回答ですが、どうぞおつきあいをお願いします。 某書籍での訳「快楽が欲望を消滅させるー肉体が目的であるから、飽きるという感覚を免れられないのだ」も、lived in room13さんのお訳「それを味わうことは、それを失うことになる。目的は肉体にあるゆえに、飽きやすい」も、ともに原文の内容をよく汲んで訳されていると思います。ですから、これ以上の訳ができるとは考えにくいですが、私は言葉にちょっと「カッコウをつけて」みます。 (「カッコつけた」だけの私訳ですみませんが) 「肉欲は肉体を目指し、肉体に果つる。ゆえに、満たされるや否や逃れたくなる」。 本能的欲望は、肉体的なるがゆえにそれが満たされたところが終点で、当面それ以上は続かない。例えば、死にそうな空腹でも、ハラがくちくなるともう料理を見るのもイヤになる。つまり、本能的欲望はひとたびそれが満たされればその時点で「飽きる」のである。これに対し、精神的欲望(欲求)は、たとえ1つが満たされても、さらにその上へ類似の欲求が続く。 これすなわち、「かたや、むさぼれば飽きるという限界性がその宿命である」のに対し、「かたや、むさぼれば無限上昇の気運が開ける」ということになる。アブラハム・マズローの「欲求階層説」を思い起こしました。 このご質問は、私にとって、より深遠な問題に思いを馳せる契機となりました。 「19世紀後半の耽美派にとって、美とは何だったか」です。耽美派の心的態度として「美に陶酔しつつも、より深遠な美に憧憬を抱き続ける」という一面があるように思います。彼らにとってとは、現実化した美は、まさにその「現実化したことによって、すでに美ではなくなる」からでしょう。 「これぞ《詩人の魂》。けだし、詩人はすべからく耽美的でなければならない。常に美に陶酔していなければならない。美に陶酔しつつ、より深遠な美に憧憬を抱き続けていなければならない。そして、人間はすべからく詩人でなければならない。」私はそう思う。「なぜなら、美の美を求めるのでなければ、虹の向こうの虹を求めるのでなければ、何をよすがに《憂しき悲しき》この世を生きられようか?」 この機会に改めて百科事典や哲学事典でモンテーニュと『随想録』の項をのぞいてみました。あちこちに下線が引いてあるのに、何一つ頭に残っていない! 彼は、神の裾野から人間理性の自立への基を開いたこと、《人間学の祖》とも言えること、民主主義やヒューマニズムの知見を与えてくれたこと、デカルト、パスカル、ルソーに多大な影響を与え、後世の科学や民主主義思想の礎となったこと、"Que sais-je?" という有名な文言で知られること、某出版社の学術書シリーズ『クセジュ文庫』の名づけのもとになったこと…などなど。改めてモンテーニュの偉大さを知り、啓蒙の刺激を受けました。《自己鍛錬や自己実現は、すべからく己自身の精神や心の問題である》ことを再認識した次第です。
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- -ruin-
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蛇足かとも思いましたが気になったので一応捕捉します。 必要なければ私見として聞き流してください。 解説しますとendの目的という用法は最終的な到着地点というような用法から派生したもので 最終的な到着地点が体内にある→体内で完結する という訳は自分としてはすんなりと理解できる訳だったのですが質問者さんにとっては極端な意訳と捕らえられたようです。 このように習熟度や理解度とは関係なく個々の常識によって許容できる意訳の範囲が違いますので、そうなると質問文で書かれている通り無条件にプロの方の訳を採用しておくのが無難かと思われます。 個人的には日本語訳をする際はこの単語はこういう意味、と限定するのではなく大体これくらいの意味としてそこに当てはまる日本語を選ぶのが日本語的に読みやすい文章になると思います。もちろん試験ではそうはいきませんが、個人でやる分には自分が理解しやすいことが最優先で、どう訳したとしてもニュアンスが完全に伝わることがないことに変わりはありませんので。
お礼
ご回答ありがとうございます。 これは失礼いたしました。そのような意図があるとは気づかず、知ったかぶりな解説をしてしまいました。endの意味ぐらいはもちろんご存じでしたね。
- -ruin-
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確かに無駄に難解な気がしますね。 どの程度意訳するか原文のニュアンスを伝えるかとかいろいろあるのでしょうが私もこの訳では読者に理解させるつもりがあるのだろうかと思ってしまいます。 拙訳 楽しむということは失うことに他ならない。それらが肉体内で完結する以上飽きの対象となることは避けられない。
お礼
ご回答ありがとうございます。 そもそも英語ですと、You can't have your cake and eat it too.という慣用句があるから、To enjoy it is to lose itも、抵抗なく理解できるのですが、日本語で似たような言い回しが、私の場合は思いつかないので、初めから、難題の翻訳、、、。 >楽しむということは失うことに他ならない。それらが肉体内で完結する以上飽きの対象となることは避けられない。 文体としては、非常に美しく仕上がっていると思います。 ただ、endは「完結」じゃなくて「目的」ですね。古典哲学系の本では、わりとよく使われています。 例:For instance, the end of medical science is health; that of military science, victory; that of economic science, wealth; etc.(拙訳:例えば、医学の目的は健康であり、軍事学は勝利、経済学は富である。)(アリストテレスのニコマコス倫理学より) 英語の語順にこだわらずに、翻訳して「楽しむことは、飽きることにつながる。肉体だけの快楽がいつまでも続くはずがない。」とでもしたくなりますね。
お礼
ご回答ありがとうございます。 哲学書と詩の読書を趣味とするものの、どちらの才能もなく、せめて翻訳くらいはできるだろうか?というと、そちらの才能もなく、いつもHelpを求めております。 >「肉欲は肉体を目指し、肉体に果つる。ゆえに、満たされるや否や逃れたくなる」。 いつもお上手だとは思いますよ、しかし、今回に限っては、一瞬、、、「えーと、誰かの名文の引用かな? 」とか、思っちゃいましたよ! こりゃ、今までとは別次元の翻訳文を創作されましたね!!! 兎に角、今回の英文は、そのまま訳すと日本語で意味が伝わりにくい文章になってしまい、兎に角、意味は分かるのに、言葉にできない難関ものでした。 いや、よくぞ訳してくださいましたね! >本能的欲望は、 >精神的欲望(欲求)は、 まさにモンテーニュも同じことを言っておりました。アブラハム・マズローの著作はまだ読んだ事がありませんが、ウィキペディアで読む限りでは、非常に興味深い人物でした。 >「19世紀後半の耽美派にとって、美とは何だったか」 芸術や詩は、大好きなのですが、素人の横好きで、特に「~派」というものを意識して鑑賞しているわけでありませんでしたので、耽美派というものを初めて意識しました。 これは、興味深いですね。 私は今読みたい本だけでも、時間がなくてほとんど読めずにいるのに、耽美派まで見つけてしまって、ますます、「読みたいけど読めない本リスト」が増えてしまいました。(笑) 本当に読書というのは素晴らしいですね。 >改めてモンテーニュの偉大さを知り、啓蒙の刺激を受けました。 モンテーニュは、天才すぎてヤバイですね。ルソーもそうですけど。 >後世の科学や民主主義思想の礎となったこと、 私は、理系なんですが、科学的な考え方においてもモンテーニュを読んでいて考えさせられる事がありますね。 論理的な思考が非常に優れていたお人だったのだと思います。 それにしても、Nakay702さんも、相当お詳しいですね! 今回も本当に楽しい、時間を過ごせました。ありがとうございます。 今後ともよろしくお願いいたします。