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源氏物語の翻訳について
- A.Waleyの『TALE OF GENJI 』(帚木 The Broom-Tree)からわからないところと訳の間違っているところを教えていただければと思います。
- 1) 廷臣がうっとりしていましたが、彼は自分の足跡だけが残っていたことを語り、菊を摘んで歌いました。自己満足の様子で言った「in a self-satisfied way」の意味や「no other footstep had left its mark」の意味について教えてください。
- 2) リュートの音楽と美しい夜の景色に誰も彼女の家の前に留まらなかったということが不思議だと表現されています。一行目と二行目の関係や「Strange」の意味、また「Have lured no other feet to linger at your door」の文の構造について教えてください。
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今晩は。汗ばむ陽気の日もちらほら出てきましたね。 いつも大変丁寧なお礼をありがとうございます。今日のところには和歌(詩)があって難しいですが、しばらくすると慣れてきますのでご心配なく。 1)『 The courtier was ravished, and as he stepped forward to place himself right under her window he turned to me and remarked in a self-satisfied way that among the fallen leaves no other footstep had left its mark. Then plucking a chrysanthemum, he sang: 』 >その廷臣はうっとりしていました。そして彼はちょうど彼女の窓の下に身を置くために進み出ながら、彼は私(馬頭)に向かって、そして自己満足の様子で、 (それまでに)落ち葉の中でその跡を残した足跡は他には何もなかったと述べました。それから菊を摘みながら彼は歌いました。・・・・? ●完璧です。 >in a self-satisfied 【way】・・・・「way」は「様子」ですか? ●その通りです。いい訳です。 >no other footstep had left its mark・・・彼(廷臣)の足跡以外には足跡はないということですか? ●その通りです。 2) 『 Strange that the music of your lute, These matchless flowers and all the beauty of the night, Have lured no other feet to linger at your door! 』 >あなたのリュート(弦楽器)の快い響き、 これらの並びなき花と美しさに満ちた夜は不思議です。 あなたの戸にいつまでもとどまる他のいかなる足(男性)も誘わないでください!・・・・・? ●詩で、構造が複雑になっていますので、慣れが必要だと思います。私も最初に英詩に触れた時の当惑をよく覚えています。 >一行目と二行目はつながっているのでしょうか?the music of your lute, these matchless flowers and all the beauty of the night are strange.という英文ですか? ●散文で書くと【It is】strange that the music of your lute, these matchless flowers and all the beauty of the night, have lured no other feet to linger at your door! です。 >「Strange」にこめられてる意味はどんな感じなのでしょうか?辞書を引くと「見慣れないため異様に見えるものについて言う」という説明になっているのですが・・・・ ●「不思議だ、奇妙だ」という普通の意味でいいと思います。 >Have lured no other feet to linger at your door・・・・ここの文の構造がよくわかりません。 ●to 不定詞は「目的」で、「あなたの家の戸口のところで足を止めるために」となります。linger は「ぶらぶらする」ですが、要するに去っていかないということです。 >Haveは使役動詞ですか?luredが過去分詞になってて?なのですが(Have 【be】 lured?)、 他の足を誘われなくしてください→他の足を誘わないでください、ですか? >それとも You have lured no other feet to linger at your door!ですか? (あなたはあなたの戸にいつまでもとどまる他のいかなる足(男性)も誘惑していなかった!(私以外には??)) ● have lured で現在完了です。【It is】strange that the music of your lute, these matchless flowers and all the beauty of the night, have lured no other feet to linger at your door!で説明しますと、it は仮主語で、that 以下が真主語です。直訳しますと「あなたの琴の音楽と、この比類ない花々と、この夜の素晴らしい美しさが、私以外の脚を、あなたの戸口のところで立ち止まらせるために、引き寄せなかったというのは不思議なことです」となります。 目的は結果のようにも訳せますので、「あなたの琴の音楽と、この比類ない花々と、この夜の素晴らしい美しさが、私以外の脚を引き寄せて、あなたの戸口のところで立ち止まらせなかったというのは不思議なことです」とすれば、少し自然になります。 原文は「琴の音も 月もえならぬ宿ながら つれなき人を ひきやとめける」で、「琴の音も月も、言い様もなく美しいお住まいですが、薄情なお方(恋人)を引き止めることはできなかったのでしょうか(不思議なことです)」という意味かと思います。 >昔の人はあからさまに気持ちを伝えずに歌で伝えているところが奥ゆかしいです。 ●奥ゆかしさは日本文化のよいところで、贈答歌の伝統には、確かにそれが感じられますね。ただここは、気障な恋人同士ですので、気障な歌のやりとりになっているのだと思われます。菊を手折り、それを添えて歌を送っているわけですが、真情があまり籠っていないような気もしますね。 ********************* 《余談》さて、この余談の出発点は、たしかヴァージニア・ウルフでした。ウルフが『源氏物語』を Waley 訳で読んだことは確かで、彼女は強い印象を受けました。 http://home.cilas.net/yunami/genjimonogatari/aidokusya.html 「世の常のものこそ感嘆に値します。誇張や強調に押し流され、また珍奇なものや一時の強い印象に誘われたならば、 ほんとうに深い歓を知ること出来ません」という言葉を記しているところなど、『源氏物語』の本質的な魅力をつかんでいるようにも聞こえますね。 たぶん、女性と女性の直覚的なコミュニケーションが成立したのだと思います。(つづく)
お礼
今晩は。日中は日差しが強く感じられますね。まだ5月ですが。 いつも大変丁寧に回答をしてくださってありがとうございます。 和歌を訳した英文の詩は文の構造が難しいです。 前回少し紹介してくださったキーツの"Ode to a Nightingale"を読んでみました。 "Where Beauty cannot keep her lustrous eyes, Or new Love pine at them beyond tomorrow." この訳などを 「美しい女の輝く明眸も長くは続かず、 その明眸に憧れる若い恋人にも、明日という日はない」 とするのを理解するのがとても難しかったです。 (二行目はcannotを省略しているのですね) でも英詩を読むと倒置などの勉強にもなる気がしました。 2)はすべてつながっているのですね。(改めてなるほど、と思いました) 文頭【It is】が省略されているのが「that」があることで想像できたところですね。 「Strange」が「不思議な」以外の言葉があるのかなと思ったのですが、 「不思議だ、奇妙だ」でいいのですね。 「Have lured no other feet to linger at your door! 」は あれこれ考えてしまいましたが、 現在完了形の文で全体的には仮主語構文なのですね。 to不定詞のところの訳し方も難しいですね。 「立ち止まらせるために」→「立ち止まらせなかった」(結果)ですね。 歌の原文を紹介してくださってありがとうございます。 「ひきやとめける」のところは現代の言葉に訳すのがまた難しいです。 「引き止めることはできなかったのでしょうか」ですね。 歌にもいろんな歌がありますね。 ここは言っている内容が皮肉になっている感じですね。 気障な歌には気障な歌で返すというちょっとした腕の見せどころ(?)もあって それなりに興味深いやりとりになりそうな感じですね。 *********************** ヴァージニア・ウルフはブルームズベリー・グループの一員でしたね。 ヴァージニア・ウルフが紫式部や『源氏物語』について語ったことばが紹介されているサイトを 紹介して下さってありがとうございます。 「世の常のものこそ~」のところはちょうど以前に訳した個所につながっていますね。 (二種類の匠人があり・・・・ここは後半部分サナダムシ文が出てきて訳すのが難しかったところです。) Waley 訳の『源氏物語』もさることながら、ウルフがこれだけ深いものを読みとったのはすごいですね。 「彼は拒まれたものをいかに熱情的に追い求めるか、 あわれ深い親愛の生活への願望がいかに裏切られつづけるか」 まさに源氏の姿ですね。 「直覚的」というのは本当にそうですね。 「意識の流れ」を大事にした二人ですね。 (金曜日にまた投稿します)