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源氏物語の翻訳について
- 『 And she, all of a sudden bursting into tears...’ If still in your heart only you look for pains to count, then were our hands best employed in parting.’ After a few more words I left her, not for moment thinking that all was over.』についての要約文:彼女が泣き出し、「もしまだあなたの心の中だけで、あなたが数えるための苦しみを探すなら、別れることに対して最高に用いられるわが手になるでしょう。」もう少し話した後、私は彼女を置いていきました。すべてが終わったことを少しも考えないで。
- 『 ”Days went by, and no news. I began to be restless. One night when I had been at the Palace for the rehearsal of the Festival music, heavy sleet was falling ; and I stood at the spot where those of us who came from the Palace had dispersed, unable to make up my mind which way to go. 』についての要約文:日は過ぎ去りました。それでいながら知らせはありませんでした。私は落ち着かなくなり始めました。ある夜、私が祭の音楽を復唱するために宮殿にいた時、激しい霙が落ちてきました。そして私は宮殿から来た我々が分散した場所に立っていました。どの道を行くか決心できずに。
- 『 For in no direction had I anything which could properly be called a home. I might of course take a room in the Palace precincts ; but I shivered to think of the cheerless grandeur that would surround me. 』についての要約文:というのは、私は正当に我が家と呼ばれることができたであろうものは(私が正当に我が家と呼ぶことができたであろうものは)何も方向において持っていなかったからです。私は言うまでもなく宮殿附近に部屋をとったかもしれません。しかし私は私をとりまくであろうやる瀬ない壮大さについて考えることに震えました。
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今晩は。雨の週末になりそうです。 いつも大変丁寧なお礼をありがとうございます。お蔭様で、『源氏物語』を噛みしめるように読めます。 1)『 And she, all of a sudden bursting into tears...’ If still in your heart only you look for pains to count, then were our hands best employed in parting.’ After a few more words I left her, not for moment thinking that all was over.』 >すると彼女は不意に泣き出し、「もしまだあなたの心の中だけで、あなたが数えるための苦しみを探すなら、別れることに対して最高に用いられるわが手になるでしょう。」もう少し話した後、私は彼女を置いていきました。すべてが終わったことを少しも考えないで。・・・・・? ●原文の歌は、『憂きふしを 心ひとつに数へきて こや君が手を 別るべきをり』(つらい折々を[あなたのように指で数えるのとは違って]たった1つしかない心で数えながら忍んで参りましたが、ひょっとしたら今があなたの手と別れるべき潮時なのでしょうか)で、Waley の訳は大分変えていますが、ひねりを籠めるよう工夫しています。 still は古い英語の用法で「いつも」の意味でしょう。「もしあなたが、(私に言わないで)心の中だけで、いつも痛みを探しては数え立てようとなさるなら、私たちの手は、(痛みを数えることよりも)むしろ、別れのために(手を振るという形で)用いられたほうがよいように思います」 歌以外のところは完璧です。 >【If still in your heart only you look for pains to count, then were our hands best employed in parting】について thenは「それならば」の意味ですか?(if節に続けて用いて、もしそうなら(・・・・)となる)ですか? ●その通りです。「if・then構文」です。then でここから帰結節が始まることを明示するわけです。訳は「それならば」を省略しても構いません。then の後が倒置形になることがあります。この場合も倒置になっていますね。 >ここの後半は「were」が先頭に出ていますが、何か主語が省略されているのでしょうか?倒置ですか?(our hands were~) ●倒置形です。おっしゃるように主語はour hands です。 >この仮定法の仕組みがよくわかりません。 「If節」は現在形を用いて帰結を必然的に導くような条件を表しているのでしょうか?(「If節」に現在形の動詞、帰結節に過去形の動詞という形はあるのでしょうか??「were」が使われている意味がわかりません。) ●古い英語で、帰結節に過去形を使って仮定法にすることがあります。(仮定法過去の be動詞は主語にかかわらず were が使われます。eg. If I were a bird, I would fly to you!)現代英語だと、I wish our hands were best employed in parting. というところだと思います。 >our hands・・・「our」は「わが」?それとも「例の」「話題になっている」の意味ですか? >複数形(hands)になっているのは馬頭が苦しみを数えるために折った指の数の事を指しているのでしょうか? ●「わたしたちの」です。バイバイをするには、自分と相手の2つの手がいります。 >After a few more words・・・うまく訳せず、「もう少し話した後」と訳してしまいました。 ●いい訳ではないでしょうか。「2言,3言、言葉を交わしたのち」でもいいかもしれません。 2)『 ”Days went by, and no news. I began to be restless. One night when I had been at the Palace for the rehearsal of the Festival music, heavy sleet was falling ; and I stood at the spot where those of us who came from the Palace had dispersed, unable to make up my mind which way to go. 』 >日は過ぎ去りました。それでいながら知らせはありませんでした。私は落ち着かなくなり始めました。ある夜、私が祭の音楽を復唱するために宮殿にいた時、 激しい霙が落ちてきました。そして私は宮殿から来た我々が分散した場所に立っていました。どの道を行くか決心できずに。・・・・? ●完璧です。 >Days went by, and no news・・・「and」は「それでいながら」?ここの「and」にふさわしいニュアンスの訳は何になるでしょうか? ●「対立の and」は出現頻度が低いですが、ここはそう解釈できるところですね。シブい正解です。 3)『 For in no direction had I anything which could properly be called a home. I might of course take a room in the Palace precincts ; but I shivered to think of the cheerless grandeur that would surround me. 』 >というのは、私は正当に我が家と呼ばれることができたであろうものは(私が正当に我が家と呼ぶことができたであろうものは)何も方向において持っていな かったからです。私は言うまでもなく宮殿附近に部屋をとったかもしれません。しかし私は私をとりまくであろうやる瀬ない壮大さについて考えることに震えました。・・・・・? ●in no directionは「どの方角にも」です。たぶん四つ辻で同僚と別れたのですが、どの道を行っても、落ち着ける場所(女性のいる場所)がないことを言っているのだと思います。 >For in no direction had I anything which could properly be called a home・・・ここの意味は I did not have anything about direction which could properly be called a home.ですか? ●I did not have anything which could properly be called a home in any direction. です。Whichever way I might go, I didn’t have a place that could properly be called a home. が自然です。 >別れた後やっぱり彼女の事が気になっているようですね。他の女性にすぐ気を移さないで未練を残しているところが丁寧に書かれていると思いました。 ●同感です。(I couldn’t agree with you more.)ここの原文は、2つの「牛のヨダレ文」で書かれていますが、心の襞を表現していて見事です。「『憂きふしを 心ひとつに数へきて こや君が手を 別るべきをり』など、言ひしろひはべりしかど、まことには変るべきこととも思ひたまへずながら、日ごろ経るまで消息も遣はさず、あくがれまかり歩くに、臨時の祭の調楽に、夜更けていみじう霙降る夜、これかれまかりあかるる所にて、思ひめぐらせば、なほ家路と思はむ方はまたなかりけり。 内裏わたりの旅寝すさまじかるべく、気色ばめるあたりはそぞろ寒くや、と思ひたまへられしかば、いかが思へると、気色も見がてら、雪をうち払ひつつ、な ま人悪ろく爪喰はるれど、さりとも今宵日ごろの恨みは解けなむ、と思うたまへしに、火ほのかに壁に背け、萎えたる衣どもの厚肥えたる、大いなる籠にうち掛 けて、引き上ぐべきものの帷子などうち上げて、今宵ばかりやと、待ちけるさまなり。」 ********************* 《余談》「深淵は深淵を呼ぶ」というのは、「天才は天才を呼ぶ」と考えていましたが「何かに惹かれるとき、それは自分の中にあるスイッチを押してくれる」と読むのは、とてもいい解釈ですね。凡人でも、「深淵」に触れると、確かに自分の中にあってそれまで気がつかなかったものに気づかされるようなところがありますね。 そういえばこの雨と風は『cruellest』と言ってもいいですね。(ただ注意なさらないと、「荒地」のこのフレーズには、性的能力を喪失した老人にとって、春は再生を想起させるがゆえに残酷だという気持ちが重ねられていますので、女性が言うと...) ********** ジョイスの最初に出版した文学が『ダブリンの人々』でした。これも第一級の文学と言って間違いありません。イプセンも顔負けなほど、様々な含みに満ちています。これが20代の青年の書いた文学かとあきれます。城山三郎も晩年、娘さんにこれを強く勧めていたそうです。城山もこの短編集の凄さが分かっていたのしょう。
お礼
今晩は。春の嵐のようですね。 いつも大変丁寧に回答をしてくださってありがとうございます。 源氏物語が英文でどのように表現されているか正しく教えてくださってありがとうございます。 いろんな解説もつけていただいて楽しく学ばせていただいています。 1)の歌の部分はどうしてもうまく訳せませんでした。 主語が省略されているのか「our hands」なのか、「our hands」にしても「私たちの手」が なぜ主語になるのか、どうやって意味を成すのか随分考えました。 partingという単語があるので「私たちの手」を分けるのに~という訳にならないだろうか。。。とか (果てはwereが前に出ているので疑問文??などなど) 現代語訳も参考にしてみたのですが、「この一件があなたと別れる時期なのでしょう」とあって やっぱり「私たちの手」を主語にして訳すのはどうも無理がある感じがして、 「our」は「例の」?それとも印刷ミスで「your」なのだろうか?とも考えましたが 私たちの手は別れに用いられたほうがよい→手を振るという形で(用いられたほうがよい)という 解釈なのですね。(ちょっと感動です。そういう意味だったのですね。) 「still」はここの場合は「いつも」の意味なのですね。( 以前she still fell behind my desiresを訳したとき辞書を見て「still」の古い英語の用法で「絶えず」「常に」というのがあることを知ったのですが、ここの訳は「それでもなお」でした) 「これから先もなお」という訳にしようか迷いましたが、無難な感じで「まだ」を選択してしまいました。 倒置が起きるのは強い副詞がある場合、というイメージがあったので、なぜここが倒置になるのかがわかりませんでした。「if・then構文」でthen の後が倒置形になることがあるのですね。 仮定法については辞書や文法書などを見てみたのですが、条件節が現在形、帰結節が過去形の動詞、というのがなかなか見当たらなくて、大抵はwould、couldなどの過去形の助動詞が使われているので、ここの形はどういうことになっているのかわかりませんでした。 古い英語では帰結節に過去形を使って仮定法にすることがあるのですね。 詳しく説明してくださって理解できました。 (I wishを使うとそのように書き換えられるのですね) After a few more words・・・「a few」を「少し」、とするか「2、3」とするか考えたのですが、どちらでも大差ない感じでしょうか。 Days went by, and no news. は最初「and」は「そして」にしていましたが、 しっくりくる訳ではなかったので辞書を見てみたところ 「Midnight passed;and the priest did not appear.」(:PROGRESSIVE) (真夜中が過ぎた。けれども和尚は帰ってこなかった)というのがあったので、これに近いニュアンスなのかなと思いました。 in no directionは「どの方角にも」ですね。 四つ辻で立ちつくしている感じでしょうか。 in no direction had I anything which could ~のところの書き換えを正しく教えて下さってありがとうございます。 「anything 」が先行詞ですね。「I didn’t have 【a place 】~」とするのが自然だということがわかりました。 原文を紹介してくださってありがとうございます。 本当に長い文ですね。霙や雪などそれがどのような時だったか目に浮かぶように描いているところも惹き込まれます。 心の襞が描かれているからこそ源氏物語は現代にまで読み継がれていると思います。 ******************************** 「深淵は深淵を呼ぶ」というのは「天才は天才を呼ぶ」という意味なのですね。 小林秀雄がランボーに惹かれたことにも言えますね。 人生はそういうスイッチを点灯させていくことで有意義になっていくような気がします。 ところで、「荒地」の冒頭のフレーズにそういう意味があったのは知りませんでした。驚きです。 「April is the tenderest month with its sweet showers」と言えばよかったでしょうか。 (でもこの雨と風では・・・) ********************************* 城山三郎という方は名前を聞いた事がある、ぐらいなのですが、たくさんの賞を受賞された小説家ですね。ジョイスの『ダブリンの人々』も読んでみますね。 ********************************* 前回紹介してくださったシェイクスピアの『冬物語』(松岡和子訳)を読みました。 シェイクスピアの「戯曲」を読んだのは初めてでしたが、読みやすくてびっくりしました。 (もっと理解不能の訳になっている難しいイメージがありました) 原文の英語をすらすらと読めたら楽しいでしょうね。 また一つの単語からいろんな意味をとることも大変でありながら、ぴったりくる解釈ができたときは充実感があると思いました。 ラストのハーマイオニ王妃の彫像が動いて語り出すところが「ピグマリオン」伝説を彷彿させますね。 (火曜日にまた投稿します)