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DGGEのシーケンス解析について
卒業研究で細菌群のDenaturing Gradient Gel Electrophoresis (DGGE)を行っています。 先日、主要なバンドの切り出しを行いシーケンス解析したところ、 複数のバンドから同一の細菌株の近縁種であるという結果が得られました。 1種類の細菌から主要なバンドが2本以上検出されることはあるのでしょうか? この技術に詳しい方で理由をご存じの方、もしくはそれに関する考察の載った論文をご存じの方、教えていただければ幸いです。 ちなみに、前段階のPCRでは、プライマーセット:357f-GC、518rを使用しました。
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細菌学が専門の研究者です。 私もDGGEを用いた菌相構造解析をした経験があるので、書き込みます。 そもそもDGGEで異なる移動度として検出された各バンドは、「配列が異なる」ということです。 厳密に実験を行うとその精度は1塩基でも異なれば、移動度の差が検出される手法です。 「厳密に」というところが問題ですが、質問者様の実験は十分に検討された条件で行われたものといえるのでしょうか? 1.ゲルの変性剤濃度勾配 2.DGGEに用いたPCRのQuarity 3.切り出したバンドの精製およびシークエンス作業時の所作(クロスコンタミネーション防止をおこなっているかなど) また、もうひとつ指摘する点として、DGGEに使用しているPCR産物は細菌の16S rRNA遺伝子配列のたった160bp程度の短い遺伝子部位です。ご存じかとは思いますが、16S rRNA遺伝子配列は全長で約1.5kbpですが、このほぼ全長を解読したとしても、菌株の種までを相同性検索では特定できない場合もあります。 今回お使いのプライマーセットは、16S rRNA遺伝子配列の可変領域のうち「V3」と呼ばれる領域をターゲットにしているようですが、この部分がDGGEで良く利用されるのは、細菌種ごとにユニークな配列であることが多いからです。 しかしながら、実際にはたったの160bp前後の配列です。近縁種ともなれば、Blast検索では同じものにヒットしてもおかしくありません。 ですので、1種類の細菌から主要なバンドが2本以上検出されているのではなく、ごく近縁な2種類の配列を見分けることができていないと考えた方が妥当です。 ちなみに、1つのDGGEバンドから複数の遺伝子がクローン化されたこともありました。この場合は、本来、複数本にわかれるべきバンドが重なってしまって、1本のバンドとして観察されている現象にあたります。 これは、ゲルの条件を変えないと区別することができません(アクリルアミドの濃度や変性剤の濃度勾配など)。 質問者様が今回実験結果として得た現象や上述の例は、DGGEの条件検討時に高頻度でみられることです。ですので、これに関して考察している論文などはないと思います。 つまり、原理を良く理解し、目の前の検体に最適な条件を見つければ良いことですので、質問者様の実験結果は、条件検討の途中であると捉える事ができますし、またDGGEで解析できることの限界であるとも考えられます。 どうしても、それら近縁種の配列を区別したいなら、16S rRNA遺伝子配列を母集団よりクローン化して、全長領域を解読すればよいですし、そのクローンを再度DGGEで泳動すれば、各クローンの移動度(バンド位置)を確認することができ、質問者様の得られた結果が正しいものであるかを再確認することが可能です。
お礼
ありがとうございました。 検討実験をしてから再度見直してみようと思います。