こんにちは。
実際の実験では、発現ベクターの構築や変異探しを精査するときにクローニングした産物をシーケンスします。ダイレクトシーケンスでも変異は探せますが、研究者によっては、例えばクローニングされたプラスミドを20個シーケンスして、aggaAaaaが15個、aggaTaaa(配列は適当なのでBlastとかに投げないでくださいね)が5個なので、鋳型はA型が3に対してT型が1存在するという定量をする方もいます。ダイレクトシーケンスでも不可能ではありませんが、1:1ではなく、2:1とか4:1の定量性を見るのは難しいかと思います。
ダイレクトシーケンスは、増えたPCR産物をそのまま読むために、鋳型のある塩基が----taatGc----と----taatCc----が1:1で含まれているとき(ヒトゲノムでは父方と母方の塩基が違うことがよくあります)、次のようなメリットが考えられます。
・(メリット)そのシーケンスの波形はGとCが一対一で出てくるように定量性がややあること
・(メリット)シーケンシング反応はたまにエラーを起こしますが、それはマイノリティになります。正しい配列の波形の方が大きく出るので、鋳型の配列にほぼ一致した配列が読めます。
クローニング済みのシーケンスは、1クローンだけ読むと、その配列がシーケンシング反応によるエラーの塩基置換を含む危険性が高い一方で、
・一見、単一の産物に見えても1塩基レベル、あるいは全体にわたって複数の産物がPCRで増幅されたときに、複数のクローンをシーケンスすることでなにが増えたか調べられます。ダイレクトシーケンスではこれは難しいです。
・(先の方も書かれていますが)基本的には単一のプラスミドの配列を読むため、シーケンスがきれいに読めるはずですし、その後の応用(発現用のベクターに入れる)にはプラスミドでの塩基配列の正しさの確認が必要です。
クローニングしたプラスミドを読む場合はインサートの長さにもよりますが、最低3個くらい読んだ方が良いと思います。
プラスミドのシーケンスがうまくいかなかったとのことですが、制限酵素で確認されたのことでものは入っているのだと思います。シーケンシング反応はエタ沈がちょっとマズイだけでシーケンスが読めなくなったりするので、もう一回同じ事をやると読めるようになるかもしれません。
シーケンシングプライマーですが、プラスミドにあるシーケンシングプライマーの配列(T7, SP6, M13など)が実は、シーケンシング反応に有利な配列でないことがあります。最近は合成オリゴの値段も安いので、「同じ配列を複数読む」ようなことであれば、自分の入れたインサートにある配列でシーケンスされるのがよいと思います。「中から外に読む」感じです。もし、サイズが500bpとか小さいようならPCRで増やしたときに使ったfowardとreverseプライマーで網羅できるでしょう。
あと、ご存じと思いますが、シーケンス反応に持ち込むプラスミドとPCR産物の至適な量が違うので、そこの確認をされても良いかと。
また、制限酵素処理の代わりに、拾われたプラスミドを一度50uLのLBに移して、そのうちの1uLを鋳型にコロニーPCRなどでインサートの有無を確認して、インサートの入ったものだけを増やすとたくさんのコロニーをカルチャーしなくて済みます。
がんばってくださいね!
補足
プラスミド回収後に制限酵素処理しインサートは確認しました。 プライマーの配列がR側からしか含まれていないサンプルもあったので、入れ間違い考えられますね。 ただ配列を知るための実験です。 その場合クローニングしても手間がかかるだけなんですね。 ダイレクトシーケンスはクローニングしたものに比べ誤読が多いと聞いたことがあるのですが、実際どうなんでしょう?