★★★★★★ 印 より下は、むずかしい記述であると思われます。興味があれば、お読みください。
● ANo. 5 の訂正です。まことに申しわけありません。
[ 1 つ目 の訂正 ]
1) ∀ε ∈ R^+, ∃δ ∈ R^+, ∀x ∈ R, 0 < |x - a| < δ ⇒ |f(x) - b| < ε
上記の 1) を「 命題 」と、私はこれまで呼んできました。しかし、1) は「 命題 」ではなく、「 条件 」もしくは「 命題関数 」と呼ばれるものです。
[ 2 つ目 の訂正 ]
最後の ● 項目において、f(x) を「 実数値関数 」と私は呼びました。しかし、これでは説明不足です。f(x) は「 実変数 x の実数値関数 」であるとすべきでした。
[ 3 つ目 の訂正 ]
最後の ● 項目において、集合 B は R の部分集合であると、私は記述しました。しかし、B をあえて限局する必要はなさそうです。B = R でよいと思われます。
以下は、ANo. 5 の補足です。
● 補足 1
1) ∀ε ∈ R^+, ∃δ ∈ R^+, ∀x ∈ R, 0 < |x - a| < δ ⇒ |f(x) - b| < ε
前述のとおり、ご質問の中核となる 1) は、「 条件 」もしくは「 命題関数 」と呼ばれるものです。すなわち、1) という条件は、a, b, f が何であるかが決まれば、真であるか偽であるかが決まる命題となります。
a, b, f が何であるかが決まらなければ、条件 1) の真偽は決まりません。また、a, b, f が仮に決まったとしても、a, b, f の決めかたによっては、1) が真になる場合もあれば偽になる場合もあります。
kazucb400 さん は、ご質問の文章の中で、1) という条件を日本語で次のとおりに表現なさいました。
1) 任意の 正の数 ε に対し、ある適当な 正の数 δ が存在して、0 < |x - a| < δ を満たす全ての 実数 x に対し、|f(x) - b| < ε が成り立つ。
この表現は、数学書などでよく見受けられるものであり、もちろん問題はないと、私は考えます。ですが、これによって示される 条件 1) が真であるか偽であるかは、前述のとおり a, b, f が何であるかによって決まります。すなわち、任意の 正の数 ε に対し、… ( 同上 ) … |f(x) - b| < ε が成り立つかどうかは、a, b, f が何であるかによって左右されます。
ですから、kazucb400 さん がご質問の文章の中で「 (3)『 ∀ε < 0, ∃δ < 0 』を『 ∃ε < 0, ∀δ < 0 』と書くと間違いになるのですか 」「 (4)『 ∃ε < 0, ∃δ < 0 』と書くと間違いになるのですか 」と問われましても、残念ですが、回答のしようがありません。
あえて回答しようとするならば、次のとおりになります。
一般に (= 特殊な場合を除いて )、次の 4 つ の 条件 ( もしくは命題 ) は、「 … 」の部分が 4 つ とも同一であるとしても、異なるものです。
∀p ∈ P, ∃q ∈ Q, …
∃p ∈ P, ∀q ∈ Q, …
∀p ∈ P, ∀q ∈ Q, …
∃p ∈ P, ∃q ∈ Q, …
そして、繰り返しになりますが、 1) という条件は、「 実変数 x の実数値関数 f(x) の極限値 」を定義する際に用いるものです。すなわち、次の 8) という命題が真であると定義するわけです。なお、lim の真下には、x → a が置かれます。
8) ∀a ∈ A, (∀b ∈ R, ((∀ε ∈ R^+, (∃δ ∈ R^+, (∀x ∈ R, 0 < |x - a| < δ ⇒ |f(x) - b| < ε))) ⇔ lim f(x) = b))
● 補足 2
∀ には、「 任意 」「 どの 」「 どんな 」「 各 」「 すべて 」「 全 」などの日本語がよくあてられます。∃ には、「 適当 」「 ある (= 或る ) 」「 存在 」「 少なくとも 1つ 」などの日本語がよくあてられます。
逆に言えば、日本語の数学書で「 任意 」「 どの 」「 どんな 」「 各 」「 すべて 」「 全 」などの言葉を目にした場合、必ずそこには ∀ の影がひそみます。「 適当 」「 ある (= 或る ) 」「 存在 」「 少なくとも 1つ 」などの言葉を目にした場合、必ずそこには ∃ の影がひそみます。
★★★★★★
● 補足 3
上記の 1) という命題における |f(x) - b| < ε は、次の 9) のとおりに書き換えられます。
9) f(x) ∈ ]b - ε, b + ε[
]b - ε, b + ε[ は R の部分集合を表わします。b - ε より大きく、b + ε より小さい実数の集合です。
そして、上記の 1) という命題における 0 < |x - a| < δ は、次の 10) のとおりに書き換えられます。
10) x ∈ ]a - δ, a + δ[ - {a}
]a - δ, a + δ[ - {a} は R の部分集合を表わします。a - δ より大きく、a + δ より小さい実数の集合から、a という要素を取り除いた集合です。
これらの書き換えにともない、1) という命題は、次のとおりに書き換えることができます。x ∈ R と ⇒ が消えていることに注意してください。(※)
1) ∀ε ∈ R^+, ∃δ ∈ R^+, ∀x ∈ ]a - δ, a + δ[ - {a}, f(x) ∈ ]b - ε, b + ε[
この書き換えにともない、ANo. 5 における 8) という命題は、次のとおりに書き換えることができます。
8) ∀a ∈ A, (∀b ∈ R, ((∀ε ∈ R^+, (∃δ ∈ R^+, (∀x ∈ ]a - δ, a + δ[ - {a}, f(x) ∈ ]b - ε, b + ε[))) ⇔ lim f(x) = b))
(※)
x ∈ R と ⇒ を消すことができる理由は、次のとおりです。
P, Q が集合を表わす記号であるとするとき、次の 11) という 条件 ( もしくは命題 ) と 12) という 条件 ( もしくは命題 ) は同値になります。ただし、「 … 」の部分は、2 つ とも同一であるとします。∩ は「 交わり (= 共通部分 ) 」を意味する記号です。
11) ∀p ∈ P, p ∈ Q ⇒ (…)
12) ∀p ∈ P ∩ Q, …
ところで、Q が P の部分集合であるとき、P ∩ Q = Q となります。
● 補足 4
ANo. 5 では、A を単に R の部分集合と記述しただけで、かたづけてしまいました。岩波数学辞典 第 3 版 ( 1985 年 12 月 10 日 ) 437 ページ 166. 収束 F. 関数値の極限 という項目の冒頭部分において、次の記述が見られます。
「 実変数 x の実数値関数 f が a の近傍で、点 a を除いて定義されているとする。… 」
この記述をもとに、A の具体像を私は推測してみました。
集合 X が f の定義域であるとします。もちろん、X は R の部分集合になります。
A = {a| (a ∈ R) ∧ (∀ε' ∈ R^+, ∃x' ∈ X, x' ∈ ]a - ε', a + ε'[)}
お礼
理解できました。 有難う御座いました。 お礼が遅くなり申し訳御座いません。