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源氏物語の翻訳について
- 『 Duly crowned, Genji went to his chamber and changing into man's dress went down into the courtyard and performed the Dance of Homage, which he did with such grace that tears stood in every eye. And now the Emperor, whose grief had of late grown somewhat less insistent, was again overwhelmed by memories of the past. 』
- 『 It had been feared that his delicate features would show to less advantage when he had put aside his childish dress; but on the contrary he looked handsomer than ever. 』
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1) ・「Duly crowned,」は、「After being duly crowned,」の略だと思います。 ・withは(様態)のwithで → 御賢察のとおりです。 ・whichの前のカンマで区切られているので、ここは「~を演じた。」「彼は・・・・優雅さをもって行なった。」と切る方がいいのでしょうか? → 御賢察のとおり、カンマで区切るのが正解です。ただし、カンマの後は、such~that~構文に着目して、「その優雅さに皆は涙した」と訳します。 ・And・・・・・そして? → 御賢察のとおり、「そして」で結構です。 ・Dance of Homage(尊敬の踊り?) → オリジナルでは「拝し奉り給ふ」とだけ書いてあります。「帝に答禮の拝舞をした」とする解釈と、「参集した貴族に対して所作正しく敬意と感謝を示した」とする二通りの解釈が存在します。この英訳の「Dance of Homage」は、前者の解釈をとっています。 2) ・ここの訳が変な感じです。より少ない利点=より大きな欠点の意味でしょうか? → 「less」は、元服後(髪上げ後)の今を元服前(髪上げ前)と比べているのです。帝は、繊細な顔立ちが髪上げすると前より見劣りするのではと心配されたのです。 ・It had been feared that his delicate features~・・・仮主語構文ですか? → 御賢察のとおりです。本当の主語は、「帝」です。 ・ここでは顔立ちの話をしていますので、「dress」は「衣服」と訳すのではなく「姿」、又はもっと踏み込んで「髪型」と訳すべきです。 【参考】 該当箇所のオリジナルと、その口語訳3バージョンです。 源氏の君が元服の儀を終えて祝宴へと向かう様子が描かれています。 オリジナル かうぶりしたまひて、御休所にまかで給ひて、御衣奉り替へて、下りて拝し奉り給ふさまに、皆人涙落とし給ふ。帝はた、ましてえ忍びあへ給はず、思し紛るる折もありつる昔のこと、とりかへし悲しく思さる。いとかうきびはなるほどは、あげ劣りやと疑はしく思されつるを、あさましううつくしげさ添ひ給へり。 訳バージョン1:出所は、http://tamanowogusi.seesaa.net/article/107961739.html 御子は加冠のあと 御休所(おほみやすみどころ)に退出され 御衣(おほみぞ)をお替へになる 東庭へ下り ミカドに答禮の拝舞をなさる姿に 見る人は皆 涙を落としたまふ ましてミカド はた 堪へること叶ひ給はず 亡き御息所を忘れることがあったのを 思ひも新たにして悲しまれる かう幼い内に髮を結ひ上げるのは 却って見劣りはすまいか とも御心配されたが 途んでもない 驚く程のかはいらしさが加はった 訳バージョン2:出所は、http://www3.ocn.ne.jp/~mh23/gennzi01.htm 儀式が滞りなく済んで、冠を着けた源氏の君が、帝から新たに頂かれた御休み所にお入りになって、御衣(ぎょい・衣服)を着替えられました。新しき御衣にて東庭に下り立ち、宴に集う方々に、儀式の礼を述べられますと、その艶やかなかな御姿に、皆涙を落とすのでした。帝にとっては、もっと忍び難たく思われたことでしょう。桐壷との悲しい思い出を、今ではお忘れになられる事もありますが、そんな昔を改めて思い出された御様子です。 帝は、源氏の君が幼な顔であることから、「元服して髪型を変えれば、その御顔が見劣りするのではないか」、と疑わしく思われおりましたが、元服されますと、意外にも美しさが増したのです。 訳バージョン3:出所は、http://www5f.biglobe.ne.jp/~mind/knowledge/japan2/genji007.html 元服の加冠が終わって、御休息所にお下がりになり、ご装束をお召し替えされて、東庭に下りて拝謁なさるご様子に、一同は涙を落としている。帝は帝で、誰にもまして感動に堪えることができない様子で、悲しみが紛れることがあった源氏の君の子ども時代の一時の思い出を、思い出して悲しみに襲われておられるようだ。このように幼い年代では、髪上げをすると見劣りしてしまうのではないかと御心配なさっていたが、驚くほどの可愛らしさと新たな品格が加わって見えた。
お礼
深夜に大変丁寧な回答をありがとうございます。 1)の出だしは略されていた文だったのですね。 オリジナルでは「拝し奉り給ふ」ということですが「帝に答禮の拝舞をした」とする解釈をとっているのですね。詳しく調べて下さってありがとうございました。 2)の仮主語構文の主語が帝だということは気がついていませんでした。 「dress」が「髪型」にまで訳せるのは新しい発見でした。 オリジナルと訳の3バージョンを御紹介していただいてありがとうございました。一つの原文からいろんな訳が生まれるのですね。(サイトもご紹介いただいてありがとうございました)