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源氏物語の翻訳について
- 源氏物語の翻訳について質問があります。A.Waleyの『TALE OF GENJI』(帚木 The Broom-Tree)から、わからないところと訳の間違っているところを教えていただきたいです。
- 質問1では、「While he was still a Captain of the Guard and was spending most of his time at the Palace, his infrequent visits to the Great Hall were taken as a sign that some secret passion had made its imprint on his heart.」という文の訳について質問しています。『while』や『was spending』の表現に疑問があり、また「some secret passion had made its imprint on his heart」という部分の意味がわかりません。
- 質問2では、「But in reality the frivolous, commonplace, straight-ahead amours of his companions did not in the least interest him, and it was a curious trait in his character that when on rare occasions, despite all resistance, love did gain a hold upon him, it was always in the most improbable and hopeless entanglement that he became involved.」という文の訳について質問しています。『the frivolous, commonplace, straight-ahead amours』や『despite all resistance』の表現について疑問があり、また「it was a curious trait in his character」「love did gain a hold upon him」「he became involved」という部分の意味がわかりません。
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今晩は。寒い日でした。いつも丁寧なお礼をありがとうございます。よく理解してくださるので励みになります。 1) >彼がまだ近衛の長だった間、彼は彼の大部分の時間を宮廷で過ごしているところで、彼の左大臣邸(Great Hall)への時たまの訪問は、何かの秘密の感情がその痕跡を彼の心の上に作った印としてとられた。・・・・・? ●完璧です。 >While・・・・・~する間? ●その通りです。 >was spending・・・・・わざわざ過去進行形にしている理由は何ですか?(前節のWhile~の部分とwas spending~の訳を並べると何かしっくりこない訳になってしまいました) ●進行形は、それがその時期に限られたことという非定常性のニュアンスを添えたい場合に使われます。日本人がよく間違えますが、「私は札幌に住んでいます」を I am living in Sapporo. としますと、定住という感じはなく、臨時に札幌に住んでいる、というニュアンスとなります。While節 の中にあり、一過性が前提ですので、どうしても進行形になりやすいです。 While節 の外に出すと、単純過去形が自然でしょう。現に、Seidensticker 訳では、Still a guard captain, Genji spent most of his time at the palace, going infrequently to the Sanjo mansion of his-father-in-law. となっています。 >some secret passion had made its imprint on his heart・・・・・ここの内容がどういうことを言っているのかよくわかりません。秘密の感情がその痕跡を彼の心の上に作るとは・・・?? ●つまり三条邸では、こんなにまれにしか来ないのは、宮中で誰か別の女性に懸想しているのではないかと思われていた、ということだと思います。secret passion=秘めた恋、make its imprint on his heart=戯れごとではすまず、根の深い恋愛感情になってしまう >made its imprint on his heart・・・・・make ~onで何かのイディオムですか? ●そうですね。 make one’s imprint on~をイディオムとして考えたほうがいいでしょう。make an impression on ~と似ています。 2)『 But in reality the frivolous, commonplace, straight-ahead amours of his companions did not in the least interest him, and it was a curious trait in his character that when on rare occasions, despite all resistance, love did gain a hold upon him, it was always in the most improbable and hopeless entanglement that he became involved. 』 >しかし実際には、彼の友人たちのつまらない、ありふれた、あからさまな、先の情事は少しも彼に興味を持たせなかった。そして偶々の時、いかなる妨害にも関わらず、愛が彼に対する支配力をとりこにしたことは彼の性格の中の奇妙な特徴だった。彼が巻き込まれたことは、いつも最も起こりそうにもない、望みのない恋愛関係の中にあった。・・・・・? ●難しい英文ですがうまく訳されています。straight-aheadは、原文「あだめき目馴れたるうちつけの好き好きしさなどは好ましからぬ御本性にて」の「うちつけの」を訳していると思われます。「うちつけの」は「突然の、露骨な」という意味だそうですので、Tyler の、he had a marked taste for frivolous, trite, or impromptu affairs が近いのだと思います。その場の衝動で、そうなってしまうといった類いの恋愛のことでしょう。straight-aheadは「直線的な」ということですので、そういうニュアンスもあるのでしょうが、Waley は、「綾のない」ということを言いたいのだと思います。源氏の恋は込み入った複雑骨折のような恋ですので、それと対比しているのでしょう。 >the frivolous, commonplace, straight-ahead amours・・・ここは(the frivolous, commonplace, straight)-ahead amours と、かっこの中がahead amours にかかるのでしょうか? ● frivolous と commonplace と straight-ahead が3つの独立した形容詞で、amours にかかっています。 >ここのaheadがよくわからないのですが、ahead of で「~より先に」とありますが、副詞でとると訳にどう入れたらいいかわからなかったので「先の」にしてしまいました。「~にまさって」という意味もありますが・・・・ ● Go straight ahead.だと「まっすぐ行け」で、ahead は副詞です。でも「まっすぐな飛行」だと、straight-ahead flight となり、straight-ahead全体を1つの形容詞と捉えるべきでしょう。 >despite all resistance・・・・allは意味がいろいろありましたが、ここは「いかなる」「なんらの」の意味ですか? ●その通りです。for all ~(~にもかかわらず)というよく知られた受験イディオムがありますが、それと同じ感じですね。 >a curious trait・・・・・奇妙な特徴?「curious」はここでは「strange」の意味ですか? 「愛が~奇妙な特徴だった」、という意味がよくわからないのですが。 ●「奇妙な特徴」でいいと思います。it was a curious trait in his character that when on rare occasions, despite all resistance, love did gain a hold upon him, it was always in the most improbable and hopeless entanglement that he became involved.の最初の it は仮主語で、that 以下を受けます。後半の it は強調構文の it で、always in the most improbable and hopeless entanglementを強調しています。 直訳しますと、「まれなおりに、いかなる抵抗にもかかわらず、恋愛感情が源氏を捉えるとき、彼が巻き込まれるのは決まって、もっともありそうもない、成就が望めないしがらみの恋なのであった」となります。 >love did gain a hold upon him・・・・gain on[upon]・・・で「~をとりこにする」というのがあったのですが、ここに「a hold」が入ってきているのでその部分(a hold)がうまく訳せませんでした。(a hold=支配力?影響力?) ● gain (get) a hold on (upon)~がイディオムです。「捉える」です。hold は「掴み」ですという名詞です。 hold him と簡単に言えることなのですが、イディオマティックな英語が好まれますので、こういう言い方をよくします。妙味は、hold を名詞に落とすと、gain a permanent hold upon him のように、形容詞で修飾がしやすくなるということもあります。 >love did gain・・・・didは強調ですか? ●その通りです。 >「it was a curious trait in his character that~」と「it was always in the most improbable and hopeless entanglement that~」の「it~that」は最初が仮主語構文で、後が強調構文ですか?(最初の文はthat以下が「完全文」で、後の文はit以下が「副詞」に なっていると考えたのですが) ●その通りです。なかなか判別しにくいものですが、よく判別なされたと思います。 >he became involved・・・・・become involvedで「巻き込まれる」、「関与する」というイディオムでしょうか?(「複雑になる」、ではないですね?) ●「複雑になる」ではないです。become involvedで「巻き込まれる」、「関与する」という解釈で正解です。 >カンマがたくさん入っていてどこで文が切れているのか悩みました。 ●源氏の恋のように込み入った文体ですね。 (字数制限がここらあたりなので、《余談》は次回にします。)
お礼
今晩は。明日は雨になりそうです。こちらこそいつも大変丁寧な回答とそれから《余談》までいただいて次の投稿の励みになっています。 今回も、すごく長い質問になってしまったのにも関わらず、大変丁寧に回答をしてくださってありがとうございます。(帚木に入ったら一気に難しくなってしまいました) 1)一過性のニュアンスを出したかったのですね。Seidensticker 訳は単純過去形なのですね。訳としてはSeidensticker 訳の方が文が作りやすいですが、進行形を使った方が非定常性のニュアンスが出せるというわけですね。(あまり意味のないことなのかと思いましたが質問してよかったです) make an impression on ~で「~に印象を与える」ですね。make its imprint on his heartで「戯れごとではすまず、根の深い恋愛感情になってしまう」と訳を読みとるのは難しいですね。でも1)の内容は理解できました。 2)は最初「straight-ahead 」として単語を見ていたのですが、どうしても訳せなかったので、もしかしたらこういう単語は存在しないのかもしれないと思って質問のところに書いたように理解してしまったのですが、「直線的な」から「綾のない」ととるのがいいのですね。 (「あだめき目馴れたるうちつけの好き好きしさなどは好ましからぬ御本性にて」・・・これこそ全くわかりませんが。。。。) Tylerは「うちつけの」をimpromptu としているのですね。 gain (get) a hold on (upon)~が「捉える」というイディオムなんですね。holdにaがついているので名詞かな、と思いましたが、イディオマティックな(慣用的な)表現ということがわかりました。 強調構文のところはすごく考えてしまい、何度も書き直していろいろ調べたのですが合っていてよかったです。 源氏の恋は『込み入った複雑骨折のような恋』ですね?(笑) 本当にご回答ありがとうございました。 《余談》は次回のお楽しみにさせていただきます。 (明日から外に出ます。来週の火曜日に戻るので次の投稿は水曜日を予定しています)