- ベストアンサー
源氏物語の翻訳について
- 源氏物語英訳(桐壺)を読んでいて、訳の理解に困っています。
- 特に、意味がわからない表現や翻訳の選択について質問があります。
- また、源氏物語の翻訳を通じて英語の勉強をする予定です。
- みんなの回答 (1)
- 専門家の回答
質問者が選んだベストアンサー
1)But when he thought of the lost lady's voice and form, he could find neither in the beauty of flowers nor in the song of birds any fit comparison. >しかし帝が失った桐壺更衣の声と姿を思ったとき、彼は花の美しさの中ばかりでなく鳥の歌の中にも見出すことができなかった。・・・? ● その通りです。 >any fit comparison.・・・・訳し方がわかりませんでした。 何か、合う、比較・・・?? ● any fit comparison が find の目的語になります。「いかなる適切な比較も見出すことができなかった」 楊貴妃の場合は、芙蓉の花に喩えていましたね。桐壷の更衣は何ものにも喩えられないということで、楊貴妃どころではない美しさ、といったところです。 2)Continually he pined that fate should not have allowed them to fulfill the vow which morning and evening was ever talked of between them--the vow that their lives should be as the twin birds that share a wing,the twin trees that share a bough. >Continually he pined that fate should not have allowed them to fulfill the vow >絶えず、彼は運命は誓いを果たすことを彼らに許すべきではないということを絶対的に置いていた・・・・? ● continually は continuously(絶えず)と違って、断続的に続くことを意味します。 pine は、「悲しむ」です。 should は、前にも出てきたと思いますが、「感情の should」で、この場合は「遺憾」の気持ちでしょう。 「帝は何度も繰り返して、運命が私たちに 誓いを成就させることを許してくれなかったとおっしゃって、悲嘆に暮れられました。」 > which morning and evening was ever talked of between them >朝と夕方は彼らの間では永遠に話されるという(誓い)・・・・・? ● 2人(=帝と更衣)の間で、朝となく夜となく、たえず(ever)語り合われていた(誓い) >morning and evening wasとなっていますが、朝と夕方で複数扱いにはならないのですか?morning and evening were~ >それともwasの主語はwhichの前のthe vowでしょうか? ● 後者です。 >the vow that their lives should be as the twin birds that share a wing,the twin trees that share a bough. >彼らの生活がまるで羽を共有する二羽の鳥のような、枝を共有する二本の木のようなものであるべきだという誓い・・・? ● その通りです。「長恨歌」に言う「比翼の鳥、連理の枝」ですね。 >最初のfate should not have allowed~の部分を「許すべきではない」、と訳しましたが帝はどうしてこのように思っていたのでしょうか? (それとも「べきではない」の訳が違っているのでしょうか?) ● 上に述べましたように「感情の should」です。くやしく、あきらめきれない気持ちが should に籠っていると考えてみて下さい。 3)The rustling of the wind, the chirping of an insect would cast him into the deepest melancholy; and now Kokiden, who for long while had not been admitted to his chamber,must needs sit in the moonlight making music far on into the night! >The rustling of the wind, the chirping of an insect would cast him into the deepest melancholy >風のカサカサという音、虫のチュンチュンと鳴く声は彼をもっとも深い憂鬱の中に投げ入れただろう・・・・?(虫がチュンチュン??) ● 鈴虫ですから、リンリン? ここは、ちょっと誤訳の部分です。原文は、「風の音、虫の音につけて、もののみ悲しう思さるるに」で、実際に帝は、風の音や虫の音を聞いて悲しみを深めていらっしゃるわけですが、Waley は、「風の音や虫の音を聞いてさえ深い憂鬱に沈むであろうような帝の耳に、大きな管弦の音が聞えてきました」としています。 >and now Kokiden, who for long while had not been admitted to his chamber >そして今弘徽殿女御は長い間帝の部屋に入ることを許容されなかった・・・・? ● その通りです。 >must needs sit in the moonlight making music far on into the night! >彼女はどうしても夜遅く音楽を奏でながら月夜の中に座らねばならなかった!・・・・・? >needs・・・どうしても? >それとも、must needs・・・・愚かにも~しようとする?彼女は愚かにも~座らねばならなかった・・・? ● must に「~せずには気が済まない」の意味があります。needsは副詞で「どうしても」でしたね。 >on intoと前置詞が二つ続いているのがわかりません。 ● far into the night がイディオムで、「夜遅くまで」です。on は副詞で「継続感」を添えます。「ずうっと夜遅くまで」といった感じです。 4)This evidently distressed him in the highest degree and those ladies and courtiers who were with him were equally shocked and distressed on his behalf. >これは明らかに彼を高い段階に苦しめ、そして彼と一緒にいるそれらの女性たちと延臣たちは等しくショックを受け、彼の味方をして苦しんだ・・・・? ● 大体あっています。in the highest degree は程度が甚だしいことを意味します。(degree=程度) equally は、帝と同じくらい、です。 distressed on his behalf のところの原文は、「このごろの御気色を見たてまつる上人、女房などは、かたはらいたしと聞きけり」ですから「かたはらいたし」を訳しています。「帝の身になってお気の毒だと思う」ということでしょう。 >3)からの流れだと弘徽殿女御がそもそも帝の部屋に入ることを「許容されなかった」ことが彼女のそんな態度を誘発したようにも思うのですが。。。 ● まさにその通りです。嫉妬とあてつけが裏にありそうですね。 5)But the offending lady was one who stood much upon her dignity and she was determined to behave as though nothing of any consequence had taken place in the Palace. >しかし不快を与える女性はお高くとまる人であり、彼女はまるで宮廷では何も重大なことが起きていないかのように振舞うことを決めていた状態だった。・・・・・? ● とてもいいと思います。まるで更衣が死んだことなど眼中にないように、ということですね。 **************************** 《余談》日本文学とその英訳を一部だけ対照して読むことは何度かありましたが、こうして英訳だけを読んでいくのも勉強になりますね。 日本文学の古典は軒並み英訳されています。びっくりするほどです。私たちは古典は読みにくいですが、こうして英訳で読むと、かえって読みやすいという、皮肉なことになっていますね。
お礼
いつも大変丁寧に回答してくださってありがとうございます。 pineのところですが、pinで調べていました。(pinの過去形はpinnedでした) 感情のshouldですが、fateを主語にして訳したのでfateに感情がつくことを考えていませんでした。ここは帝の気持ちをfateにこめるところだったのですね。 「長恨歌」に言う「比翼の鳥、連理の枝」は有名な個所なのですね。 mustもたくさん意味がありますね。辞書は引いてみるものの一番合う訳を選び出すことが難しいです。 ****************************** 物語を通して文法やイディオムを勉強するのは楽しいことだと思います。 英語はずっと変化しないでしょうか?日本語は千年もたてば今私たちが読み書きしている文字も未来の人には解読が難しくなるのでしょうか?日本の古典も英訳が頼りになるかもしれませんね。 風の音、虫の音につけて、もののみ悲しう思さるるに でもこんな情緒ある表現はやはり古典ならではの美しさだと感じます。