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源氏物語の翻訳について
- 源氏物語の翻訳についての質問と、翻訳文中の意味や表現についての疑問点をまとめます。
- 質問内容を要約すると、文法の倒置や語形の変化について、また文中の英訳の意味や表現について理解ができていないことが分かります。
- また、作者が使用した詩や短歌の英訳についても疑問があります。
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1)”So again and again have I heard the Emperor speak with tears. But now the night is far spent and I must carry my message to the Palace before day comes.” >私は帝が涙と共に話すのを何度も何度も聞いた・・・・・? ●その通りです。 >have I heard ・・・・・倒置ですか? I have heard・・・・・・? なぜhaveがIの前に出ているのかわかりません。 ●倒置です。「強い副詞(句・節)が文頭に来ると倒置になることが多い」というのが公式です。この場合、So again and again と 強い副詞のso(そのように)が来て、しかも again and again とつけ加えられていますので倒置が自然です。 >the Emperor speak ・・・・・・・speaks(三人称単数)になっていないのはなぜなのでしょうか? ●感覚動詞 + 目的語 + 原形動詞 の語法です。hear + the Emperor + speak 訳し方は、「帝が話すのを聞く」です。 >far spent・・・・・・?わかりません。 ●far は程度が大きいことを示します。「夜はひどく使われてしまった」→「夜がずいぶん更けてきた」 >I must carry my message to the Palace before day comes. >私は明日が来る前に私のメッセージを宮廷に届けなければならない・・・・? ●その通りです。day は「明け方」です。「夜明け」を、daybreak といったりします。Day broke.は「夜が明けた」です。 2)So she, weeping too, spoke as she hurried away. But the sinking moon was shining in a cloudless sky, and in the grass-clumps that shivered in the cold wind, bell-crickets tinkled their compelling cry. >she,weeping too,spoke・・・・・やたら細切れになっているので文の構造がわかりません。なぜこんなに単語を区切ったのでしょうか? >彼女(使いの者?)も泣きながら話した・・・・? she spoke weeping,too? >as she hurried away・・・彼女は急ぐように・・・・?asはように、でしょうか? ●weeping tooが分詞構文で、挿入されている形です。意味は「(彼女)も泣きながら」です。 as は「同時進行」の接続詞。spoke という行為と hurried away という行為が同時に生起しています。これも「~ながら」と訳せばいいです。 そこで彼女は涙に暮れつつ語りながら、急いで辞去した。 >But the sinking moon was shining in a cloudless sky, >しかし沈もうとしている月は雲のない空に輝いているところだった、・・・・・? ●その通りです。「しかし沈もうとしている月が雲のない空に輝いていた」。「しかし」と言ったのは、早く帰らねばならないのに、月や草や虫の音があまりにあわれ深くて、立ち止まらせてしまう、というニュアンスです。 >and in the grass-clumps that shivered in the cold wind,bell-crickets tinkled their compelling cry. >そして冷たい風の中で揺れている草の群生の中で、bell-crickets (鈴虫?)がりんりんと鳴いていた。(their compelling cryが訳せませんでした) >compelling cry・・・・追い立てる鳴き声?? b ●鈴虫ですね。compelling は「人の心をゆさぶるような」です。Their cry compels her to stop to listen to them. という感じの compel です。 3)It was hard to leave these grass-clumps,and the quiver-bearer's daughter,loath to ride away, recited the poem which says ”Ceaseless as the interminable voices of the bell-cricket,all night till dawn my tears flow” >It was hard to leave these grass-clumps・・・・・これらの草の群生から去るのは難しかった・・? ●その通りです。あまりに秋の趣が深いので... >and the quiver-bearer's daughter,loath to ride away・・・・そして使いの娘は~をひどく嫌った?( ride awayがわかりません) ●ride awayは、牛車(?)に乗って去ることです。loath to は「去りかねて」という気持ち。 >recited the poem which says・・・・・(以下の)詩を話した(暗唱した)・・・・? ●吟詠した、朗誦した、です。 >Ceaseless as the interminable voices of the bell-cricket, all night till dawn my tears flow” >鈴虫の終わりのない声のように(asはように、ですか?) >一晩中夜が明けるまで私の涙はあふれます・・・・? ●その通りです。as は「ように」です。 >Ceaselessをどこに入れて訳したらいいのかわかりません。 ●ceaseless は「間断ない」です。鈴虫の止むことのない(interminable)鳴き声のように、とめどなく(ceaseless)、私の涙は、明け方まで一晩中流れます、ということです。文法的には、Ceaseless は分詞構文です。My tears are ceaseless just like the interminable voices of the bell-cricket といった感じです。 源氏原文は 鈴虫の声の限りを尽くしても長き夜あかずふる涙かな です。 4)The mother answered ”Upon the thickets that teem with myriad insect voices falls the dew of a Cloud Dweller's tears”;for the people of the Court are called dwellers above the clouds. >母は答えた、”Upon the thickets that teem with myriad insect voices falls the dew of a Cloud Dweller's tears”; >無数の昆虫の声と共に満ちている雑木林の上に雲の住人?(Cloud Dweller's)の涙の露が落ちます。 >・・・・・日本語にしてみて意味不明です・・・・ >for the people of the Court are called dwellers above the clouds. >宮廷の人たちについては(forはついて・・・でしょうか?)雲の上の住人と呼ばれている。 ●区切って訳します。 The mother answered 母親は答えた(返歌を詠んだ) ”Upon the thickets that teem with myriad insect voices 無数の虫の声で満ちた草むらの上に falls the dew of a Cloud Dweller's tears”雲上人(=命婦)の露(=涙)が落ちることよ ;for the people of the Court are called dwellers above the clouds.(このfor は理由の接続詞です)というのも、宮廷の人たちは雲の上の人と呼ばれていたからである。 >短歌の英文が出てくると難しいです。。。。 ●まったくそうです。平安朝の貴人は、息をするように歌を詠んでおり、(ちょうど現代のわれわれが、ギャグをすぐ言えるように)すぐ歌が作れることが必須の教養でした。 原文の歌は いとどしく虫の音しげき浅茅生に露置き添ふる雲の上人 です。 **************************** 《番外編》 Waley が源氏を翻訳し始めたのは 1920年代の初めでした。1920年代の西洋の大都市には、パリもロンドンもベルリンも、独特の文化が花開きました。ロンドンでは、ブルームズベリー地区(大英博物館の近く)がその中心地の1つで、ブルームズベリー・グループという知識人、文化人の錚々たる集まりがあって、談論風発だったようです。Waley もその一員でした。もっとも彼は物静かで、どちらかと言えば聞き役に回った」ようですが...
お礼
いつも大変丁寧に回答してくださってありがとうございます。 いろんな語法が勉強になりました。 「夜はひどく使われてしまった」の表現は英語独特のものですね。 ride away(=牛車)は気がつきませんでした。loath to も難しかったです。 「早く帰らねばならないのに、月や草や虫の音があまりにあわれ深くて、立ち止まらせてしまう」、というニュアンスをこめたButだったのですね。いつも思うのですが英語の表現がきめ細かいですね。 雲上人=命婦なんですね。 源氏物語の中に出てくる短歌を全部紫式部が詠んだのだと思うとあらためてすごい教養があった人なのだと感じます。 いとどしく虫の音しげき浅茅生に露置き添ふる雲の上人 趣きがあってきれいな歌ですね。 ********************************************* Waleyが翻訳し始めたのは100年近く前なんですね。 ブルームズベリー・グループという集まりがあったのですね。 Waleyは聞き役に回って豊富な知識を蓄えていったのでしょうか。