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源氏物語の翻訳について
- 『TALE OF GENJI 』(帚木 The Broom-Tree)の翻訳について、わからないところと訳の間違っているところを教えていただければと思います。
- 翻訳の一部である「she began to pour upon me a torrent of bitter reproaches」について、辞書で調べると「言葉の雨を浴びせる」とあるが、pour uponとpour outの違いはあるのか疑問だ。
- 翻訳の一部である「I shall get on worse than ever in polite society」は「いっそう都合が悪くなり続ける」、また「the meanest public office」は「最も劣った役場」と訳すべきか迷っている。
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今晩は。ようやく雨が上がりましたね。 いつも大変丁寧なお礼をありがとうございます。 前回の補足です。 >「the time has come when we had better go each his own way」の の訳は「私たちはそれぞれわが道を行った方がいい時が来ました」でしょうか。 ●それで結構です。私が高校生の時に覚えた例文が The day may come when we will be able to travel to the moon. でした。○○の1つ覚えですが、ずいぶんお世話になった例文です。 1) ●完璧です。 >she began to pour upon me a torrent of bitter reproaches・・・・「pour out a torrent of words」で「言葉の雨を浴びせる」というのが辞書にあったのですが、「pour upon」と「pour out」は左程違いはないのでしょうか? ●pourの目的語がa torrent of bitter reproachesで、upon me(私に)が間にはさまっている形です。目的語が長いので先にupon meを言っています。[動詞][長い目的語][前置詞句]の形は、よく[動詞][前置詞句][長い目的語]の順に置き換えられる場合があります。 2)『 The unexpected pain was difficult to bear, but composing myself I said tragically, ’ Now you have put this mark upon me I shall get on worse than ever in polite society; as for promotion, I shall be considered a disgrace to the meanest public office and unable to cut a genteel figure in any capacity, I shall be obliged to withdraw myself completely from the world.』 ●古風な英語で難しいですが、立派に訳されています。be obliged toはイディオムで、「義務を負わせられる」という直訳よりも、「~せざるを得ない」という訳語を覚えておかれるといいと思います。be forced to も似たイディオムです。 >I shall get on worse than ever in polite society・・・「get on worse」は「いっそう都合が悪くなり続ける」ですか? ●get on はイディオムで、「(人間関係を)やっていく」という意味です。How are you? という挨拶で、How are you getting on? とか、How are you getting along? とかいった表現も使われます。 worse than ever は「これまでのどの時期にくらべても悪く」ですから、最上級の意味となり、「最悪」ということになります。 >the meanest public office ・・・・「meanest」は最も劣った?ふさわしい訳がなかなか見つかりませんでした。 ●mean は「卑しい=身分の低い」だと思います。こうした最上級を「譲歩の最上級」と言い、「どんなに~でも」と訳したりします。「どんなに身分の低い公務所においても」となり、身分の低い役人達の間でも物笑いの種になってしまう、と言っているのだと思います。馬頭は今「下臈」つまり、低い官職についていますので、その職場のことを言っているのかもしれません。 3」『 You and I at any rate shall certainly not meet again,’ and bending my injured finger as I turned to go, I recited the verse ’As on bent hand I count the times that we have met, it is not one finger only that bears witness to my pain.’ 』 ●非常に難しいですが、よく意をつかまれています。 >You and I at any rate shall certainly not meet again・・・・随分念を押していますが、絶対に会わないでしょう、と訳せばいいのでしょうか。 ●それでいいと思います。 >ここは「You and I 」が主語になると思いますが、「I shall~」で(強い意志・熟慮の上での判断)で「どうしても・・・する(つもりである)」の意味も入っているのでしょうか?(馬頭は彼女とはどんなことがあっても彼女とは会わないつもりだ、というニュアンス) ●You and I=We ですから、主語は1人称と考えていいと思います。古いイギリス英語では、1人称主語の単純未来にも shall が使われますのでそれで一応説明がつきます。 マッカーサーが(日本軍に追われて)フィリピンから逃げ出す際に “I shall return.” という言葉を発したのは有名ですが、shall には「予言のshall」という用法があって、神の意志の反映のニュアンスがこめられることがあります。ですので、ここも、私たちがもう会わないというのはこれで(運命的に)決まりだ、という感じで解釈してもいいかと思います。 >as I turned to go・・・・ここの「as」は同時進行の接続詞ですか? ●その通りです。指を曲げるのと踵を返すのが同時に起こっているわけです。as のニュアンスはつかみにくいものですが、見事に訳の処理をされています。 >I turned to go・・・・行く向きを変え?正確な意味を取るのが難しいところでした。 ●turn は振り向く、to go は「行くために、たち去るために」ですので、「たち去るために振り向く」→「振り向いて(その場を)たち去ろうとする」→「踵を返してたち去ろうとする」くらいの感じです。 >As on bent hand・・・・ここの「As」はwhen、whileよりも同時性が強い「・・・のとき」ですか? ●その通りです。「~してみると」くらいの訳になるかと思います。 >it is not one finger only that bears witness to my pain・・・ここの意味をとるのが難しいです。強調構文ですか? ●おっしゃる通り強調構文です。bear witness to は、「~を証言する」というイディオムです。 >噛まれた指以外にも苦しみの数々を数える事ができる、ということですか? ●その通りです。歌の部分の原文は『手を折りて あひ見しことを数ふれば これひとつやは 君が憂きふし』(指を折って、これまでのつきあいの数々を(思い出して)数えてみれば、今回のこの1つの出来事だけが、あなたの嫌なところだということがありましょうか(いいえそうではありません、ほかにもいろいろありました))です。「手を折りて(指折り数える)」に「指が痛くて曲げる」が、「憂きふし(つらかった折り)」に「痛む(指の)節」が掛けられています。(このユーモアが愚痴っぽさを救っていますね。) >一つの事が引き金になって男女の関係が終るということは多々あることですね。不満を溜め過ぎていた結果でしょうか? ●同感です。馬頭は関係を長続きさせようとして事を図ったわけですが、(女性の嫉妬に対する)読みが浅く、途端に破局を迎えています。ここにも男女の(愚かしさに端を発する)よくあるドラマがありますね。 ********************* 《余談》よく知られた例では、映画の「マイ・フェア・レディ」が「ピグマリオン」伝説に依拠しています。 シェイクスピアの作品の中で私が1番好きなのが『冬物語』で、よく神韻縹渺などと言いますが、そうした表現が大げさに聞こえないほど生きた英語表現を実現していると思います。それはともかくとして、『冬物語』にも「ピグマリオン」伝説が影を落としているように感じます。 ********* イプセンの演劇の面白いところは、各登場人物がそれぞれの内面を隠し持っているところで、それが現実の社会を映しているからです。現実世界の人間関係では、表面に現われるのはほんの一部で、大部分は水面下に隠れています。それをあたかも全部分かるかのように平板な人物造形をしたりする19世紀的な文学のありようは、やはり「作り物」になってしまいますね。 ジョイスはまだ20代の青年でしたが、そうしたイプセン演劇の革新的なところをいちはやくつかんでいたのです。「深淵は深淵を呼ぶ」という俚言がありますが、イプセンとジョイスについては、何かそんな感じがありますね。(つづく)
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- mbx
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> 噛まれた指以外にも苦しみの数々を数える事ができる、ということですか? 指一本じゃすまない ということです。 逢瀬の回数を指を折って数えるにつけ、私の痛みの目撃者となるものは(噛まれたこの)指一本で収まるものではありませぬ 源氏物語は完全文現代語訳がいろいろなところから出されているので、このくだりもすぐに見つかるのではないでしょうか。 もちろん指をかまれたことを原因として別れようというのではなく、別の(一個もしくは複数の原因で)別れ話を切り出して それで噛まれたにすぎないということはこれだけでもわかりますが、きっと現代語訳を読めばそのあたりも詳しくわかると思います。さらには、この英訳が色々なニュアンスをうまく訳出しているか否かということも。
お礼
’As on bent hand I count the times that we have met, it is not one finger only that bears witness to my pain.’について 訳をありがとうございます。 私が読んだ現代語訳だとこの部分は 「あなたの欠点はこの指を噛んだ嫉妬一つだけだったのかもしれませんね」といった感じになっていて、英訳とは反対の意味になっていました。 それで私の訳し方がどこか間違っているのかなと思ったのですが。 現代語訳も訳者によってまちまちのようで、ちょっと混乱するときがあります。 回答をありがとうございました。
- mbx
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> 行く向きを変え 去るために体の向きを変え → 向きを変え去る > as 私は向きを変えその場を去り「際に[つつ]
お礼
as I turned to go・・・ 向きを変えて去って行く様(さま)ですね。 「as」は「つつ」ですね。
- mbx
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3. > どうしても・・・する(つもりである)」の意味も入っているのでしょうか 入ってというより、そのものでしょう。 「あなたと私はもう金輪際会わないでおきましょう」
お礼
「You and I at any rate shall certainly not meet again」は ずばり「あなたと私はもう金輪際会わないでおきましょう」ですね。 ちょっとあれこれと考えすぎました。
- mbx
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> 今、あなたはこの印(噛んだ跡)を私につけて、私はこれまでよりも上流社会でいっそう都合が悪くなり続けるでしょう。 前半の節は「指をかまれて跡形をつけられてしまった今となっては」くらいの意味で。 > 私は世間から完全に自分自身を引っ込める義務を負わせられるでしょう 義務を負わされるというか、~せざるをえない。 もう俗世から身を退かないとしょうがおまへん
お礼
直していただいた訳がすっきり通りますね。 I shall be obliged to ~で「~せざるをえないでしょう」ですね。 「I shall be obliged to withdraw myself completely from the world.」は 俗世から身を退かざるをえないでしょう、 もう俗世から身を退かないとしょうがないでしょう、ということですね。
- mbx
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2. ですが、よいです。 まあ明らかにへんてこりんな日本語ではありますが、いわゆる誤訳はありません。 「この場合」の get on の get は他動詞ではありませんし、on は前置詞でもありません; 自動詞 + 副詞で worse は補語です。get on は「すごす、やっていく」程度の意味で、「より悪くやっていく」→「ますます立場が悪くなる」 the meanest 「もっとも卑しい」。役所の中でも、公家方から見て最も卑しいとされたような部署でしょう。
お礼
よくよく読み返してみると変な日本語でした。 「get」と「on」の品詞について考えていませんでした。 「ますます立場が悪くなる」となるのですね。 「the meanest」は「卑しい」で訳していましたが、どうも訳に入れるとしっくりこなかったので「劣った」にしました。 ほめられた職場ではなかったということですね。
- mbx
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とりあえず 1 から > 「pour upon」と「pour out」は左程違いはないのでしょうか? upon は前置詞であり、その目的語は me、 out は動詞 pour に対する副詞です。pour (out) の目的語は pour out 直後の部分です。
お礼
一つ一つ分けて丁寧に回答してくださってありがとうございます。 「pour upon」と「pour out」を同じように捉えてしまっていましたが、 「upon me」ということですね。 pour の目的語は「a torrent of bitter reproaches」ですね。
お礼
今晩は。風が強くて傘もなかなか差せませんでしたが、天気が回復してよかったです。 いつも大変丁寧に回答をしてくださってありがとうございます。 前回の「the time has come when we had better go each his own way」は 正しくは「私たちはそれぞれわが道を行った方がいい【ような】時が来ました」ですね。 (the day(time) has come when SVは「~のような時が来ました」で、「ような」を落としてしまっていました) The day may come when we will be able to travel to the moon.は 「私たちが月に旅行できるような日が来るかもしれません」になるでしょうか。 (私も暗記しておきたいと思います) 「pour upon」というつながりではなく、「upon me(私に)」という捉え方だということがわかりました。A.Waleyの源氏物語の翻訳を読んでいて思うのは、今まで自分が思い込んでいた英文の構造ではない、ということです。とても勉強になります。 「 I shall be obliged to withdraw myself completely from the world」で「自分自身を引っ込める義務を負わせられるでしょう」と訳しましたが、よく読むと変な感じですね。「自分自身を引っ込めざるを得ないでしょう」がいい訳ですね。 「be obliged to 」で「~せざるを得ない」というイディオムですね。 「be forced to 」も辞書で見てみました。 『I was forced to conclude that he was insincere.』 (彼は不誠実だという結論に達せざるを得なかった)(:PROGRESSIVE)という例文がありました。 「get on 」はイディオムですね。 辞書をみるとたくさん意味がありますが、ここでは「(人間関係を)やっていく」という意味なのですね。最悪な人間関係をやっていく、ということですね。 How are you? という挨拶にも使われるのですね。 「the meanest」は「譲歩の最上級」の訳し方になるのですね。 これまで何度も出てきていましたね。再度教えていただくと、そうだった・・・!と思い出します。 最初、「mean」 は「卑しい」と訳したのですが、卑しい役所、という訳があまりいい感じではなかったので、「劣った」にしたのですが、「卑しい=身分の低い」ということですね。(馬頭の職場を考慮すると意味が捉えられる部分ですね) You and I=We =一人称と考えていけばよかったのですね。 マッカーサーの “I shall return.” は初めてお聞きしました。有名な言葉なのですね。 (必ずや私は戻って来るだろう)ですね。シンプルな言葉ですが、「神の意志の反映のニュアンス」が こめられているのですね。(私はここに戻って来る運命にある) 同時進行の「as」については、以前教えていただいた「So she weeping too,spoke as she hurried away.」(そこで彼女は涙に暮れつつ語りながら、急いで辞去した)を思い出しました。 I turned to goは不定詞の意味を捉えて考えるとよかったですね。(振り向く、という動作にとらわれてよくわからなくなってしまっていました。「踵を返して~」というのがぴったりですね。 bear witness to は、「~を証言する」というイディオムなのですね。 (直訳すると言葉が自然な感じが出ないですが、イディオムがわかっていると訳がきれいに整いますね) it is not one finger only that bears witness to my pain. (私の苦しみを証言するのは一つの指だけではありません)でしょうか。 『手を折りて あひ見しことを数ふれば これひとつやは 君が憂きふし』がここの原文ですね。 (紹介してくださってありがとうございます) 「・・・でありましょうか」「いいえそうではありません、ほかにもいろいろありました」という反語になっているのですね。 ここの掛け言葉はすごいですね。説明をいただいてなるほど、思ってしまいました。 別れ際にこんな歌がさらっと言える馬頭もただ者ではないですね。(といっても紫式部の才能を感じるのですが。ユーモアのセンスがあったのですね。) この女性とのやり取りは最初、馬頭側が女性を圧倒しているように思えましたが、見事形勢を逆転されてしまい、女性に見切りをつけられてしまいましたね。馬頭は女性の自分への愛を過信していたようですね。 ******************************** 「マイ・フェア・レディ」は「ピグマリオン」伝説に依拠しているのですね。 「マイ・フェア・レディ」をちゃんと観たことがないのですが、観る機会があれば意識してみたいと思います。 『愛と残酷のギリシア物語』という本の中の『ピグマリオン』を読んだのですが、現代版にアレンジしてる感じでした。(たぶん大筋は原作に沿っていると思います) (自分が彫った)石像に恋をしてしまう、というのは確かに「グリーブ家のバーバラの話」に通じていますね。石像が命を持つようになるというのは神話ならではですが、何かを強烈に愛する、ということは、それ(これ)ほどまでにして愛することをいうのだ、ということを表現している気がしました。 シェイクスピアに『冬物語』という作品があるのは今まで知りませんでした。 読んでみますね。(差し当たり日本語で・・) *************************** イプセンの「各登場人物がそれぞれの内面を隠し持っている」面白さというのは以降の演劇に大きな影響を与えたでしょうね。 表面ではこう見せてるけれど、実際は、というのはまさに「現実世界の人間関係」ですね。イプセンの演劇を見ている観客は自分たちの姿を投影できるわけですね。 『幽霊』におけるアルヴィング夫人は心の大部分を水面下に隠していましたね。 何においても、(全部さらけ出さず)想像力を掻き立てるというのは人の心を捉える大事な要素ではないでしょうか。 「深淵は深淵を呼ぶ」というのは難しい言葉ですね。 何かに惹かれるとき、それは自分の中にあるスイッチを押してくれるような気がします。 そういう出会いが(対人間とは限りませんが)あるか、ないかで人生が大きく変わるような気がします。 そういえば『April is the cruellest month 』ですね。 (金曜日にまた投稿します)