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「ふるとしもなき」について教えてください
三好達治の「池に向かへる朝餉」を読んだのですが、文語の意味がよくわかりませんでした。 (1)「ふるとしもなきうすしぐれ」の部分なのですが、「ふるとし/もなき」なのか「ふる/と/し/もなき」?なのか、どう取っていいのか悩んでいます。 (2)「ひとり居をわびしといはむ」は「ひとりで居ることを侘しいと(人は)言うだろう」といった意味でよいのでしょうか? (1)のほうは、漢字変換するとどのような形になるのか、またどのような意味なのかも教えていただけると幸いです。 どうぞよろしくお願いいたします。
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(1)は、「降る・と・し・も・無き・薄時雨」でしょうね。 「し・も」は特に文語ではこの組み合わせでよく使われるので、一単語の副助詞として扱っている古語辞典もあります。 http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%97%E3%82%82&dtype=0&stype=0&dname=0na&pagenum=1&index=09816008403500 上記URLの辞書では、2の(2)の用法で、「降る」ということを「部分的に強く打ち消そう」とした表現と考えればよいでしょう。 普通の「時雨」ではなく「薄時雨」ですから、元々、降る程度はわずかなのですが、さらに「特に降るということもない」「降るというほどでもない」といった意味が加えられているわけです。(自信あり) (2)は、おっしゃるように「む」は文法的には(世の人の)推量ともとれますが、作者の心情ととらえることも可能ではないでしょうか。 場面に登場する人物は作者だけですし、「一日のうれひを感ず」「かなしみばかりしたしけれ」というのは作者の心情でしょう。 「楽しきことを考へよ」というのも直後に「かく思ひ」(=「このように思い」=「楽しいことを考へよと思ひ」)とあるので、作者の作者自身への呼びかけです。「かく思ひ 愉しさにとりすが」るのももちろん作者です。 この詩は作者の心情を吐露した詩と考えられます。 したがって、「この独りで過ごす状態を(私が言葉で表現するなら)わびしいと言おう(意志)」あるいは「この独りで過ごす状態を(私が言葉で表現するとすれば)わびしいと言うことになるだろう(推量)」というふうに解釈するほうがよいのではないでしょうか。どちらかというと「意志」かなあ?(こっちは、自信なし) 時雨の降る晩秋の独り住まいという、わびしさを感させる条件が整った中で自分の心を奮い立たせようとするのに、やはり自分の心は悲しみに傾く。いい詩ですね。 「測量船」は、かつて目を通したことはありましたが、この詩は記憶に残っていませんでした。この週末は、いい漢詩(こんな詩も知らなかったのかと言われるかもしれませんが)にも出会うことができました。収穫の多い週末です。
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- kine-ore
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詩の観賞はなにより音読からはじまるものでしょう。 まずどうにか読めるようになる、そして繰り返し読みながら、そこに自ずからリズムも生まれ、やがて心も動き出し、ようやく全体の意味合いも感じられるようになる頃には、もはや暗唱できるようになっているものだ、と。 たとえば、この詩の冒頭の「水澄み」はどう読みますか。 この詩に続く「冬の日」の「冴え冴えと澄み」はごく普通に「スみ」でしょうが、こちらは「水キヨみ」とも読めないでしょうか。 この詩を拍数で数えてみると、基本的に5拍と7・5拍それに5・7拍で読んでいくと楽なのがわかります。 第一聯は「水澄み/ふるとしもなき・うすしぐれ」で4(5)・7・5調となります。 「降るとも無き薄時雨」に「し」を加えて、わざわざ語調を整えているだけに、「水澄み」が気になります。 第二聯は5/7・5/5・7と三行続くと感じられます。 その場合「ひとり居を・わびしといはむ」は日ごとに変わる「鳥の音」であり、したがって三人称なので推量の意味が込められ、独り住まいは侘しいものだと啼く鳥も告げているかのようだ、と。 とまれ、ご自分でまず繰り返し読んでみることこそ第一歩になるでしょう。 #1さんが愉しまれていらっしゃるように、下手に「文語の意味」などに拘泥されず、何よりまずは「楽しきことを考へよ」です。そうして愉しんでいるうちに、そこはかとなく「かなしみばかりしたしけれ」がオーバーラップしてきたら最高です。もうちっぽけな「文語の意味」が何たら、授業や受験がこうたらを離れて、ふと口ずさんでいる自分に出会えたらもう一生ものです。
お礼
ご回答ありがとうございます。 詩の鑑賞は音読から、まさにその通りだと思います。意味を気にするあまり、語感を大切にすることを忘れていました。ご指摘ありがとうございます。 「水キヨみ」と読むと、語調が整ってとても読みやすいですね。何の疑問もなく「水スみ」と読んでしまっていました。 「し」が入っているのも、語調を整えるためだったのですね。 「わびしといはむ」の主語を鳥の音としたご説明も、そのような読み方もできるのだと驚きながら読ませていただきました。鳥が「わびし」と言っている、というのは達治らしい考えですね。 教えていただいたように、「楽しきことを考へよ」を忘れず、愉しんで鑑賞していきたいと思います。どうもありがとうございました。
お礼
ご回答ありがとうございました。 ていねいに説明してくださったので、とてもわかりやすかったです。 (1)では「降るというほどでもない」という訳につかえていたものが取れ、すっきりしました。 (2)は作者の心情という考えは浮かびもしなかったので、なるほどと思いながら読ませていただきました。薄時雨の中、自分に語りかける姿が浮かんでくるようです。 今まではぼんやりとしていて風景が浮かばなかったのですが、これからはうまく詩の世界に入っていけそうです。 どうもありがとうございました。