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Harold Bloom(編): Metamorphosis- Franz Kafka

ハロルド・ブルームにより編集されたカフカ解釈についての本が、この4月に出るようですが、どんなものなのでしょうか。 英米文学についての批評や解釈に関しては、ブルームの名はかなり有名だと思いますが、カフカのようなドイツ語圏の作家の場合も定評があるのでしょうか? 検索したところ、この文学カテゴリーにおいて、一度もハロルド・ブルームの名前が出ていないようですが、この方面に少しでも知識がある方がいらっしゃったら、ぜひご回答ください。 よろしくお願いいたします。

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回答No.1

konstellationさん、こんにちは。 おひさしぶりです。 > ハロルド・ブルームにより編集されたカフカ解釈についての本が、この4月に出るようですが、どんなものなのでしょうか。 ええと、ごめんなさい。わたしはブルームはあまり詳しくはないので、この本がどんなものかはわかりません。 > この方面に少しでも知識がある方がいらっしゃったら ということなので、その少しだけの知識での回答です(笑)。どうかその点はご了承ください。もしブルームのことをある程度ご存知の上でこの質問を出された テリー・イーグルトンの『文学とは何か』を開くと、ブルームの名前は「ポスト構造主義批評」の項目と「精神分析批評」の項目の二箇所で見つけることができます。そうして、ポスト構造主義批評では、「ある意味で」と但し書きがつけられているのに対し、精神分析批評ではページを割いて紹介されています。 ところが『現代の批評理論』という本では、ポスト構造主義批評の項目、デリダのつぎに置かれている。 つまり、彼はそういう位置にある研究者であるとおおざっぱにとらえることができるでしょう。 まず、イーグルトンは、ブルームのことを明快にこう定義しています(イーグルトンの問題点は、少し明快に過ぎることだという気もちょっとするのですが)。 「ブルームがおこなったことを一言でいえば、文学史をエディプス・コンプレックスの見地から書き直したことである。」 なんとなくどんな人か、わかっちゃいそうです(笑)。きっとカフカもそういう脈絡でとらえているのにちがいない、って思いますよね。 その上でどうエディプス・コンプレックスなのか、もう少し見ていきましょう。 ブルームはその著書『誤読の地図』のなかで「詩は主題にかかわるものでもなく、詩そのものにかかわるものでもない」と言います。 つまり、詩は何らかのテーマに沿って、たとえば愛であるとか人生であるとか、そういう詩のなかから「なにものか」を取り出せるようなものではない、というのが前半。つまり、昔ながらの批評をここで批判している。 そうして後半は、従来の批評のありかたの根本的な革新としてあったニュー・クリティシズムのありようを批判しているのです。 ニュー・クリティシズムは、何より、詩を一個の自律した「対象」としてみなします。ブルームはそういう自律的・客観的な審美的対象として扱うやりかたにも反対するのです。 では詩をどんなものだと言っているのか。 以下は『現代の批評理論』第二巻からの孫引きです。 ----(p.89)---- 詩は必然的に他の詩たちにかかわる。詩人が詩人への反応であり、人が親への反応であるように、詩は詩への反応である。詩を書こうとするとき、詩人は詩が自分にとって最初に何であったかという起源に帰らなければならず、したがって詩人は、快楽原理を越えて、彼を出発させた決定的な最初の出会いと反応へと舞い戻る必要がある。(中略)詩人のみが詩人として詩人に挑戦する。だから詩人のみが詩人になる。詩人の中の詩人( the poet-in-a-poet )にとって、詩はつねに他の人物、先行者である。だから詩はつねに人、つねに〈第二の誕生〉のための父である。生きるために、詩人は決定的な曲解( misprision )によって父を誤=解釈( misinterpret )しなければならず、それが父の書き換え( re-writing )なのである。(『誤読の地図』一八-一九頁) ----- 詩人は、息子が父親の影響をなんとかのがれようとするように、先行する詩を、誤読・誤認して、その価値を転覆しようとするものである。 ここでは文学的創造は、自己形成の葛藤を通じて生み出されたもの、ということになります。 イーグルトンはこのブルームの試みを「現代のリベラルな、もしくはロマン主義的なヒューマニストが抱え込むジレンマである」としていて、この評価もまたなるほど、と、わたしなどは簡単に説得されてしまうのですが(笑)、ともかくこんなところでおおまかなアウトラインはつかめたでしょうか。 もし、もう少し知りたい箇所などがありましたら、知っている限りでお答えします。

konstellation
質問者

お礼

ghostbusterさん ご無沙汰しております。 このたびも、たいへん勉強になる御回答を頂き、ありがとうございました。わたしは、ほんとうにブルームのことはほとんど知らないのですが、英米文学に詳しい方があまりご存じない、ということで、少しほっとしました(笑) ド・マンとイーグルトンの著作はいくつか持っているのですが、ブルーム自身の著作は一つも持っていません。今回のブルームについての御回答は、イーグルトンの著作に記述がある、ということを教えて頂いただけでも大満足です。 ということで、不勉強なわたしも久しぶりに同著作を手に取ってみました(^^; >ポスト構造主義批評では、「ある意味で」と但し書き わたしの所有している版は1995年の岩波書店の翻訳で、「イェール・ディコンストラクション学派と呼ばれる人たち―ド・マン、・・・そしてある点でハロルド・ブルーム―」となっていますが、きっとこの箇所ですね。 >精神分析批評ではページを割いて紹介されています。 ほんとうですね! >「ブルームがおこなったことを一言でいえば、文学史をエディプス・コンプレックスの見地から書き直したことである。」なんとなくどんな人か、わかっちゃいそうです(笑) これは、まさに言い得て妙、と言うべき一言でしょうか(笑) >ブルームはその著書『誤読の地図』 この著作についての説明も大変勉強になりました。「後の世代は前の偉大な世代には及ばないんだ、あー、亜流だな~」という意識は、ドイツ語ではエピゴーネンと呼ぶと思いますが、なにか、それと近いことを、フロイトの理論を用いてやっているようですね。 いずれにせよ、ブルームのカフカの捉えかたは、この方向なんだろうと言う事がわかりました。ブルーム編の『カフカ』は、今回で二度目の新版のようですが、買わないことにしました(笑) ありがとうございました。

その他の回答 (1)

回答No.2

すいません。先の回答で書いたり消したりしていたら、コピぺし忘れている箇所がありました。 「もしブルームのことをある程度ご存知の上でこの質問を出された」 のあとに「のでしたら、この回答では役に立たないかもしれません。その際はどうか補足要求をよろしくお願いします」という文章を補ってお読みください。 失礼しました。

konstellation
質問者

お礼

いえいえ、ご丁寧にありがとうございます。 勝手に補って読んでしまいました(^^; ところで、イーグルトンは、 「ブルームの文学理論にあらわれているのは、スペンサー、ミルトンからブレイク、…プロテスタント・ロマン主義の「伝統」への情熱的かつ挑戦的な回帰である。… ブルームは現代ではまれな、創造的想像力の予言者的代弁者で…」 と述べていますが、この記述の最後にある「創造的想像力の予言者的代弁者」という言葉は、そのままブレイクのことを指しているような言葉にも思われます。で、ブレイクと言えば、フライですが、イーグルトンはフライの"Fearful Symmetry"という本には言及していませんよね? そこで、新たな質問なのですが… ブルームとは関係ない(?)ことなので、また新たに質問を立てたいと思います。 もしまたお答え頂けると、幸いに存じます。 p.s. イーグルトンの『文学とは何か』って素晴らしい本ですね。

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