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日本における乗数効果
今日の講義で、政府支出を増加させると乗数効果によって国民所得が増加するという話を聞きました。 計算方法や原理はなんとなくわかったのですが、この流れは今の日本でもちゃんと効果を発揮しているんでしょうか? 講義での説明が数式ばかりだったので少し気になりました。 どなたか詳しい方がいらっしゃいましたら教えていただけないでしょうか? お願いします。
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まず、おさらいとして乗数効果の説明。 簡単化のために、貿易はないものとしますと、 Y = C + I + G C = c_0 + c_1 (Y - T) という関係が成り立ちますから、ここから Y = (c_0 - c_1 T + I)/(1-c_1) + 1/(1-c_1) G と変形できるので、政府支出を1単位増やすと国民所得は 1/(1-c_1) だけ増加する、ということになります。 さて。 では、実際はどうかといえば、ここ15年ほど、政府支出は非常に高い水準にあるにもかかわらず、GDPはほぼ横這いです(詳しい数値は参考urlを参照して下さい)。ということで、もし増加していないとしたら、この理論の何処に問題があるのだろうか、と考えてみましょう。 まず、G の増分(ΔG)をうち消すように、例えばΔG=-ΔI やΔG=1/c_1ΔT のような場合は、Yは増加しません。後者のような増税は今のところありませんが、前者のようなものをクラウティングアウトと呼びます。つまり、民間企業が投資するための資金まで政府が国債を発行して吸い上げてしまったために投資が減少しているような状態です。 また、限界消費性向 c_1 が低下すると、乗数効果も低下することは分かるでしょう。実際、現在の日本の限界消費性向は、特に90年代後半から非常に下がっている(つまり貯蓄を多くする)ことが知られています。 この2つを主な原因として、かつては上手く機能していた政府支出の乗数効果は現在、以前ほどはあまり上手く機能していない、といえます。 とはいえ、例えば参考urlの実額・四半期・実質季節調整系列を見てみると、1994年から2007年にかけて政府支出は25兆円ほど増えていますが、GDPは100兆円ほどです。勿論、GDPの増加がすべて政府支出の結果であるとは思いませんが、全く機能していないと主張するのも誤りであると考えられます。
お礼
なるほど、上手く機能していない原因に国債まであるとは思いませんでした。 わざわざ資料まで付けて貰った上に丁寧に説明して頂き本当にありがとうございます。 おかげで理解することができました、