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「有しない」ですか?「有さない」ですか?
法律関係の事務をしているものですが、たびたび「有しない」という言葉を目にします。 調べてみても、正しい日本語であることには間違いないんですが、私的にはどうしても「有さない」の方が自然であるように思えてしまいます。 また、「~を有せず、」(例えば、“新規性を有せず、”等)も「~を有さず」の方が良いように思えます。 時々、外国人の方の日本語添削をすることがあるんですが、自分でも確信が持てないので、これまでは直すことができなかったんですが、どなたか詳しくご説明願います。
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サ変未然形「さ」の用例を、ということですが、受け身(可能、自発、尊敬)の助動詞「れる」が附くとき「目隠しをされる」、使役の助動詞「せる」が附くとき「後片づけをさせる」などがそれに当たります。 これに対して、打ち消しの助動詞「ない」「ぬ」は「何もしなかった」「宿題をせずに」となり、「何もさなかった」「宿題をさずに」とは言いませんね。 (なお、漢字2字以上の熟語に「する」が附く場合は、間に「を」を挟まない「指導される」「自己批判させる」などでも、単独の「する」とほぼ同じと考えてよいでしょう。) 漢字1字に「する」が附くものについて、最初の回答を補足して纏めてみます。あくまでも現在の私の感覚に過ぎず、異論があって当然ですが、一つの参考にはなるかも知れません。 (1)「―イ・する」「―ク・する」は五段活用化が進行しているものが多いのですが、「託すことにしよう」「臆することなく」など、語により、また活用形によっても、揺れが見られます。 (2)「―ッ・する」「―ン・する」の五段活用化には抵抗があると思います。(×一語も発さないで、×一方に偏さず) (3)「―ウ・する」(有する、抗する)や「―キ・する」(適する)および「―・する」(利する、付する)は、(1)(2)両者の中間でしょうか。私などは「多言を要しない」「使用に供せず」派ですが、若い方は五段活用「生育に適さない」の方が自然なのでしょうね。 これが、「20年、30年後には……」と言った理由です。 (今回、国語辞典はいっさい見ていないのですが、ひょっとすると、サ変・五段両方OKとされているものがあるかも知れません。調べて御覧になってはいかがでしょう。) (4)「―ン・ずる」(案ずる)「―ウ・ずる」(通ずる)は上一段化が完了しつつあります。 (5)番外篇 「―ッ・する」の中には、やや方言的に聞こえますが、「用が達しられる」「気持ちが察しられる」という上一段型が、早くから一部に存在しました。 (もちろん、終止形を「達しる」「察しる」と言ったわけではありません。) 講釈が長くなってすみません。
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#2の追加です。 一般論を長々と書いて、肝腎の結論がはっきりしませんでしたね。 御質問の項目について言えば、「有しない」「有せず」が正しいし、そうあってほしいと思います。 ただ、20年、30年後には、これらは古風な言い方ということなる可能性もあり、「有さない」「有さず」を誤りと断定するわけにもいかないでしょう――というつもりだったのです。 「田植えをする」などの単独の「する」が「……をさない」となることはあり得ないでしょうが、漢字1字に「する」が附いたものは、五段活用との混合が進みつつあるという現状を説明するうちに、話の重点がずれてしまいました。 繰り返しになりますが、現在の法律関係の文書に「有しない」「有せず」とあるのは、まったく正しいのです。 混乱させたとしたらお詫びします。
お礼
とてもわかりやすいご説明をありがとうございました。 サ行変格活用の未然形には、昔の辞書では“せ”と“し”だけであったのに、最近(とはいっても、いつ頃からかは存じませんが)は“さ”も入っていますね。もしもご存知であれば、この“さ”がどのような言葉に用いられているかをご教示頂きたいです。(お忙しいようでしたら、結構です) しかしながら、「有しない」に限ってはとても納得いたしました。 法律関係の表現には、私にとってとても違和感のある用語が多いのですが、おそらく古く昔からのいわゆる「正確な日本語」が多く残されているからだと考えています。 ありがとうございました。
まず、文法的に言えば、「有しない」が正統的です。 本来はサ行変格活用に属する(これも、最近は「属す」と言う人が多くなりました)からです。 しかし、言葉、とりわけ話し言葉は時代とともに変わっていくもので、新しい言い方をすべて誤りとすることはできないでしょう。 音読みの漢字1字に「する」が附いたサ変動詞のうち、「罰する」「反する」の類は「―っ・する」「―ん・する」で、いかにも漢字音という印象が強いので、現在でもなお、「罰さない」「反さない」には抵抗があるでしょうが、「(日本語に)訳する」「訳しない」は今では古風ですね。「隠す」などの訓読みのサ行五段活用の類推などから、「訳す」「訳さない」が普通になりました。さきに触れた「属す」も、やがてこの仲間に入るでしょう。 一方、「信ずる」「感ずる」の類は、「信じる」「感じる」のザ行上一段活用が多数派になったようです。 (なお、口語文法では文語文法のサ行変格活用という名称をそのまま用いていますが、実質はサ行混合活用と呼ぶべきものと思います。つまり、「せ・らる」が「さ・れる」となったのは五段活用との混合であり、「せ・ず」が「し・ない」となったのは上一段活用との混合です。) さて、話を戻しますが、「―する」「―しない」と言うか、「―す」「―さない」と言うかは、個々の言葉により、あるいは話す人の感じ方により、さらには同じ人でも格調高く記述したい場合と親しみやすく語りかけたいときとでは、違いがあって、一概に断定はできないのではないでしょうか。私は、「愛する人」「愛せずにはいられない」と言いますが、後者が古風なのは承知しています。「愛さずにはいられない」は許容できますが、「愛すことの喜び」は許容できません(「誰よりも君を愛す」は文語の終止形〔言い切りの形〕なので、本来の正しい形です)。でも、さすがに「愛しない」は今では無理かなとも思います。戦前の作家なら普通にそう書いたでしょうが。 「意に介( )ない」「恩恵に浴( )ない」 国文法の試験問題なら「し」が正解でしょうが、日常の言語生活では「さ」が誤りだとも言い切れないでしょう。 ついでに、「法的手段も辞( )ず」も、「せ」ではなく「さ」を選ばれる方が多いかも知れませんね。今はそれが一般的なのかなと思います。ただ、「期せずして」「我関せず」などは文語から来た慣用表現ですから、「期さずして」「我関さず」とは言ってほしくありませんね。
- s_yoshi_6
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「有する」を辞書で引くと、その活用形はサ行変格活用となっています。 http://dic.yahoo.co.jp/bin/dsearch?p=%CD%AD%A4%B9%A4%EB&stype=1&dtype=0 サ行変格活用ということは「する」と同じように さ・せ・し/し/する/する/すれ/せよ と活用します。 「する」に「ない」を付けた場合に「しない」となるように、「有する」の場合も「有しない」となります。また同じく、「ず」を付けた場合は「する」+「ず」が「せず」ですから、「有する」+「ず」は「有せず」となります。 こちらのページで「語幹が造語要素と認められるもの」、 http://mypage.naver.co.jp/tenji/kawaraban/kawara27.htm こちらのページでは「自立性の弱い1語漢語」として挙げられている「関する」「反する」「比する」「抗する」「供する」などの語も同様の活用になります。 http://shigapref-sb.ed.jp/braille/MANUAL2.HTML
お礼
早速のご返答をありがとうございました。 教えていただいたHPの方も参考にさせて頂きます。
お礼
ご返答ありがとうございました。 今日は手元に辞書がないので、明日“サ変・五段両方OK”と明言されているものがあるかどうか調べてみます。 「する」の前の語によって活用が変化するとは驚きでした。このような説明は説得力があり、外国人の方にもわかりやすいと思います。