いつもお世話になっております。
今手元に岩波文庫の対訳キーツ詩集 宮崎雄行 編 があるのですが、部分的になぜこの訳になるのかがわからないところがあります。
[15] 『ハイピリオン』より の(2) I. 299-357 の冒頭部分です。
…… the bright Titan, frenzied with new woes,(実際に冒頭から「......」となっています)
……耀(かがや)きわたる巨神(タイタン)は 新たな災厄に悲憤しつつ
Unused to bend, by hard compulsion bent
平生(へいぜい)の習いには似ず 激しくおのが精神を迫(せ)め
His spirit to the sorrow of the time;
時運の悲相に対(むか)い 傾けた。
特にこの真ん中の訳が何やらわかりません。3行めの「傾けた」は2行目のbentを受けているように、行をまたがっているのはわかるのですが。特にUnused to bendで「習いには」という解釈が自分にはどうもできません。
特に冒頭部分とはいえ、詩歌全体としてははしょった後の部分のためかもしれません。
お分かりになる方などいらっしゃいましたら、是非ご教示いただければありがたいです。
1。構造
主語:…… the bright Titan 輝くタイタンは
副詞句1: , frenzied with new woes, 新しい心配事で気が狂って
副詞句2: Unused to bend, 曲がるのに慣れていない
副詞句3: by hard compulsion 固い圧迫で
動詞: bent 曲げた
目的語: His spirit 彼の精神を
副詞句4: to the sorrow of the time; 時の悲しみに
まあこう言う構造で飾りがついた SVO 第3文型です。
2。それをもったいぶって厳かな日本語にすると
……耀(かがや)きわたる巨神(タイタン)は 新たな災厄に悲憤しつつ平生(へいぜい)の習いには似ず 激しくおのが精神を迫(せ)め時運の悲相に対(むか)い 傾けた。
となったらしいです。冒頭から「......」となっていますから......出始めば実にキーツ的です。
3。中の行
unused は、「慣れていない」ですから 習い<習慣+平生の < いつもの+打ち消し =いつもの習慣ではない、で訳してあります。
by hard compulsion は「激しく」と訳されています。
「おのが精神を」という目的語の原語は His spirit と次の行の最初にあります。
「せめ」は、この文の動詞 bent の訳です。「曲げた」です。
不要なところは削り、必要な語を補うと、
The bright Titan, who is unused to bend his spirit, bent his spirit to the sorrow of the time by hard compulsion."
となりますよね?
こうすれば "who is unused to bend his spirit" =「平生の習いには似ず」がよくわかるのではないでしょうか?
「巨神はめったに心が折れない奴だったけどこのときばかりは泣きが入った」ということです。
>Unused to bend, by hard compulsion bent
平生(へいぜい)の習いには似ず 激しくおのが精神を迫(せ)め
>特にこの真ん中の訳が何やらわかりません。3行めの「傾けた」は2行目のbentを受けているように、行をまたがっているのはわかるのですが。特にUnused to bendで「習いには」という解釈が自分にはどうもできません。
⇒以下のとおりお答えします。
ハイペリオンは、王権を握るクロノスの兄なので、世界を支配する神々に一員であった(タイタン神族はこの2神を含め12神いた)。ゆえに、彼は他者を屈服させることはあっても、屈服させられることはなかったはずである。
これが、Unused to bend「屈することに慣れていない」の表わす意味であると推測されます。
ところが、後にタイタン神族はオリュンポス神族に敗れ、タルタロスに落とされる。
そしてこれが、by hard compulsion bent (His spirit to the sorrow of the time)
「彼は、(己の魂を時の悲運に激しく)屈服させられてしまうのであった」
と歌われた部分に相当するのではないかと考えます。
以上、(推測含みの)ご回答まで。
お礼
御回答ありがとうございます。 細かく教えていただきましてありがとうございました。 他の回答も含めて、かなり理解できたと感じています。