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源氏物語の翻訳について
- 源氏物語の翻訳についての質問です。A.Waleyの翻訳でわからない箇所や誤訳があるか知りたいです。
- 質問1では、A.Waleyの翻訳についての文の意味や構文についての疑問があります。質問2では、手書きの中での筆の運びや書法についての疑問があります。
- 源氏物語の翻訳での理解について、具体的な箇所を挙げながら質問しています。
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今晩は。昨日の WBCの試合は、久々に見たいい試合でした。 いつも大変ていねいなお礼をありがとうございます。悠揚迫らずコンスタントに投稿されるのに逆に啓発されます。 1)『 But ordinary hills and rivers, just as they are, houses such as you may see anywhere, with all their real beauty and harmony of form—quietly to draw such scenes as this, or to show what lies behind some intimate hedge that is folded away far from the world, and thick trees upon some unheroic hill, and all this with befitting care for composition, proportion, and the like—such works demand the highest master's utmost skill and must needs draw the common craftsman into a thousand blunders. 』 ●ミニ「サナダムシ文」ですね。今こうした英文を書くと叱られると思いますが、私は嫌いではないです。 >or to show what lies behind some intimate hedge~以下があまりにも長くてよくわかりませんでした。全体を通してどこが主語なのか動詞なのか・・・?? ●最後の such works が主語、demand が動詞です。その such の内容を、前のquietly to draw such scenes as this … and the like までが説明しており、その this の内容を、その前のordinary hills … form までが説明しています。ダッシュがそうした構造を理解するのを助けてくれます。 日本語でも、「名詞——それを~する——そうしたものは…するのだ」というような文章が可能ですね。簡略版を示せば、「どこにでもあるような山や川——それをあるがままに描く、しかもゆるぎのない構成で描く——そうした作品は、巨匠の力量を必要とする」という構造です。 >or to show~・・・・・ここの「to show what lies behind」に対して以下の言葉がかかってくるのかと解釈したのですが。。。。 【 some intimate hedge that is folded away far from the world】 ,【 thick trees upon some unheroic hill】, 【all this with befitting care for composition】, 【 proportion】,【 the like】 show の目的語として、【A:what lies … from the world】【B:thick trees upon some unheroic hill】があり、【C:all this with befitting care for composition, proportion, and the like】も目的語ですが、all this が【A】と【B】を受けていて、それをwith befitting care for composition, proportion, and the likeなやり方でやるというふうに、副詞的な部分に重点があります。and the like は「など」という意味で、compositionやproportionなど、ということです。 >to draw、to show・・・to不定詞の副詞的用法ですか? ●上述したように、名詞的用法です。 >quietly to draw such scenes as this・・・・「this」の示すものは何ですか?どこにでもあるようなもののことですか? ●その通りです。 >some intimate hedge that is folded・・・・・「折りたたまれている人目につかない生垣」というのがよくわかりませんでした。 ●fold away は、ものを畳んで、人目につかないところに収納することです。hedge はイギリス名物で、田園地帯を織物に喩えますと、その襞のように見えますが、折り畳めば見えなくなるわけで、奥まったところにある hedges をそのように表現したものだと思われます。 >unheroic hill・・・・「unheroic」は、「大げさでない」、「雄々しくない」、「非英雄的な」?平凡などこにでもあるような丘、という意味ですか? ●その通りだと思います。 >all this with befitting care for composition・・・・ここの意味がよくとれませんでした。(混成を好むのにふさわしいこのことすべて)?? 「 befitting 」・・・ふさわしい(形容詞)? 「care for」・・・・好む(動詞)? 「composition」・・・混成、構成された状態、それとも「構図」ですか? ●「 befitting 」=ふさわしい(形容詞)、「care for」=~に対する配慮(名詞)、「composition」=「構図」 >the like・・同様の種類? ●and the like=and so on=etc. =など です。 >must needs draw the common craftsman into a thousand blunders・・・本物を描き、示すということは並みの職人ではできないことだということを言っているのでしょうか? ●その通りです。直訳しますと、「~は必ずや、平凡な絵描きを千もの大しくじりに引き込まずにはおかない」ですから、「~すると、平凡な絵描きは、そのアラをさらけ出してしまう」ということですね。 2) ●けっして簡単ではない英文ですが、非常に精密に訳されています。 >this way or that・・・・・・「this way and that」で「あの手この手」という意味がありますが、それと同じ意味ですか? ●同じ意味です。私の単細胞的記憶には、「this way and that」は「あれやこれやの方法で」とインプットされています。 >though at first some letters may seem but half-formed・・・・・「half-formed」未完成な?ぱっと見はそんなに上手には見えないという事ですか? ●まさにその通りです。 >there is nothing at all amiss・・・・不都合なことは何もない?習字手本帳と真実の書法で書かれた文字は同じだ、という意味ですか? ●amiss は「まずい、間違っている」の訳語のほうが近いと思います。 >本物を作り出すことの大切さを感じたのですが、長文で難しかったです。 ●『源氏物語』も「サナダムシ文」でおまけに句読点もなかったわけですから、当時の人々の頭のなかは、今のわれわれの頭のなかと相当に違っていたはずです。今を時めく福岡伸一博士の日本語は、明晰で論理的で、それはそれで名文と言えますが、私は一方では、こうした息の長い文章も大切だと感じています。相馬黒光『黙移』は、歴史を知る上でも重要ですが、日本語としても名文と思いますので、機会があればぜひお読みください。 ********************* 《余談》正宗白鳥を面白く読まれていますね。明治も30年代に入ると、明治維新時に社会の中核で活躍した人たちが老齢化し、新しい青年たちが登場してきますが、明治37年(1904)の日露戦争に具体化しているように、日本はかなり危ない橋を渡り始めるようになります。加えて、それまでの近世的社会的価値観が崩壊し、近代日本の青年たちは精神的に新しい価値観を見出さねばなりませんでしたから、いっそう不安定な中に置かれることになります。明治30年代が「不安の時代」とか「煩悶の時代」とか呼ばれることがあるのはそのためもあると思います。 明治36年の藤村操の投身自殺事件を御存知ですか?あれなどはその象徴的事件ですが、以後ずっと日本文学は、こうした不安や煩悶を中心的な動機の1つとして持つことになります。漱石も芥川もそうですし、上流階級の白樺派の面々にしてもそうです。しかしもっとも朴訥にこの主題と取り組んだのが自然主義文学者たちで、正宗白鳥はその中心人物の1人です。(「何処へ」が明治41年)彼の文学が今でも面白いのは、この近代日本の《不安》が未だに解決されているわけではなく、相変わらずわれわれにrelevanceを持っているからだと考えています。(つづく)
お礼
今晩は。私も見ていました。9回2アウトになったときは高校野球みたいにハラハラしました。 いつも大変丁寧に回答をしてくださってありがとうございます。 いつも四苦八苦しているのです。(笑)コンスタントに回答をくださって本当にありがとうございます。 こういうのを「サナダムシ文」というのですね。 (文の中に文が入り込んでいる、というような意味でしょうか?) 訳す時は早くピリオドが出てきて欲しい気持ちになります。 文の構造を詳しく教えて下さってありがとうございました。 ダッシュがあったり、「as this」や「all this」の「this」を手がかりに 構造を考えるとよかったですね。 「ordinary hills and rivers, just as they are, houses such as you may see anywhere, with all their real beauty and harmony of form—quietly to draw such scenes as this」 「どこにでもあるような山や川——それをあるがままに描く」 or to show 【A:what lies behind some intimate hedge that is folded away far from the world】, and 【B:thick trees upon some unheroic hill】, and 【C: all this with befitting care for composition, proportion, and the like】 「しかもAとBをゆるぎのない構成で描く」 such works demand the highest master's utmost skill and must needs draw the common craftsman into a thousand blunders. 「そうした作品は、巨匠の力量を必要とする」 という大意がわかりました。 また、「to show」は名詞的用法で、A,B,Cを目的語とするのがわかりました。 「with befitting care for composition, proportion, and the like」がよくわからなかったのですが、 「care for」は「~に対する配慮(名詞)」だったのですね。 「and the like」の部分もちゃんと捉えられませんでしたが、 「compositionやproportionなど」という意味なのですね。 「some intimate hedge that is folded」・・・・「hedge」はイギリス名物なんですね? 田園地帯を織物に喩えて襞に見えるのをイメージして「折り畳む」という表現を使っているのですね。 訳した時は想像できませんでした。 「a thousand blunders」・・・「千もの大しくじり」=「アラ」ですね。 「this way and that」は「あれやこれやの方法で」という意味なんですね。 (これからインプットしておきます) amiss は「まずい、間違っている」の訳語のほうが文脈に合っていますね。 辞書を見ながらふさわしい言葉を見つけるのは楽しい時もありますが、選んだ言葉が 違っていると内容が正確に把握できなくなってしまいますね。 福岡伸一博士の日本語についてあまり把握していないのですが、明晰で論理的というのは メディア受けがいいのかもしれませんね。 息の長い文章は読み解く力をつけてくれますね。 相馬黒光の『黙移』、読んでみますね。 ******************************* 正宗白鳥の作品を読む機会を持つことができてよかったです。ありがとうございます。 明治30年代というと今から100年以上も前ですね。 「不安」や「煩悶」というのはいつの時代もありますが、 新しい価値観を見出すというのは容易なことではないですね。 藤村操の投身自殺事件は知りませんでした。(インターネットで調べてみました) 華厳の滝で自殺をしたのですね。 文学者とその時代というのは切り離せないですね。 前回紹介してくださった正宗白鳥の『自然主義文学盛衰史』を読みました。 自然主義文学についてとても詳しく知ることができました。 正宗白鳥は島崎藤村の『家』、上司小剣の『鱧の皮』、長塚節の『土』、徳田秋声の『足迹』 などを自然文学作品の中で評価していますね。 (私はまだ読んだことがないのですが) relevance=関連性? 『読者は彼等の作品をよく読めば、人世に於ける生き方について何か教えられるであろう。 どこまで行ってもこれっきりかと、未解決の物足りなさを感じさされるかも知れないが、 それだけでも感じさされるのは一つの修業である。』 と正宗白鳥は書いていましたが、彼自身の作品にも教えられたり感じさせてくれる何かがありますね。 ***************************** 前回紹介してくださった川口松太郎の『久保田万太郎と私』を読みました。 隅田川の花火大会の描写では「花火」の句や小唄が飛び交っていましたね。 「花火がくしゃみしてるぞ」なんていう会話は粋ですね。 下町人である久保田万太郎の横顔をいろいろ知ることができました。 (火曜日にまた投稿します)
補足
度々の訂正ですみません。 「自然文学作品」は「自然主義文学作品」の誤りです。 失礼致しました。