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体罰とコンラート・ローレンツに関して質問です。
体罰に肯定的な人が(戸塚宏や石原慎太郎、体罰の会など)コンラート・ローレンツの研究を自説に援用することがよくありますが、ローレンツの考えは本当に体罰を肯定しうるようなものだったのでしょうか? また、現在の心理学や脳神経科学の知見ではローレンツの学説はどのように評価されているのでしょうか? お詳しい方がおられましたらお願いします。あと、何か有益な文献等もご存知でしたらお教えください。
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再投稿します。ガーショフの発言は先の参考文献(無藤隆ほか『心理学』有斐閣)からの孫引きになります。出典は、Gershoff,E.T.,2002,"Corporal Punishment by Parents and Associated Child Behaviors and Experiences : A Meta-analytic and Theoretical Review." です。 ちなみに前回の投稿では「ガーシェフ」になっていました…。正しくは「ガーショフ」です。大変失礼しました。 澤口俊之氏のブログ拝見しましたが、一つの見解かなと思いました。そもそも痛みは、体罰やケンカだけで知るものではないと思います。シェルターで育てない限り、誰だって痛みの何たるかは理解できるでしょう。ミラーニューロンの存在が、他人の痛みが分かる証拠だと私は考えます。体罰肯定こそ思想じゃないでしょうか? ブログでは「社会関係における身体の痛み」について進化的な観点から説明していますが、それは群淘汰的な発想なので、私には科学的な根拠とは思えません。群淘汰の考え方では、個体の利益よりも集団の利益の方が優先しますが、現在の科学的に有力な仮説は遺伝子による自然淘汰です。どんな生物も、種の保存を優先したのでなく、(利己的な)遺伝子を優先したがために進化してきているのです。だからと言ってわがまま放題にすればいいというわけではなく、そういう遺伝子を共有しているのだから、体罰をしなくても分かるはずだと私は考えます。体罰は効果よりもリスクの方が多いんだと思います。
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- NiCr
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ローレンツは動物行動学者ですが、動物行動における攻撃性について論じた人です。他の個体を攻撃することは種の保存に役に立っているので、人間もそうだろう、というようなことを言っていたようです。心理学で「互恵的利他行動(自分の利益を犠牲にして他人に利益を与える)」に違反した者に対する態度として、ローレンツの研究を引き合いに出して説明することがあるようです。でもそれを体罰の理論的な根拠とする考え方はもう古いと思います。 なぜならそれは半世紀も前の論理で、ローレンツが前提としていた群淘汰という考え方は現在の生物学では否定されているからです。群淘汰というのは、自然淘汰の単位が遺伝子ではなく集団にあるという考え方です。だから集団主義的な観点から体罰を肯定するのはもはや成り立たないと思います。 現在の心理学でも体罰は否定されているのがおおむねの結論のようです。体罰についての多くの研究を整理したガーシェフの結論は「体罰は直後のしつけには有効だが、長期的には虐待に発展する危険がある」というものでした。問題として顕在化しなくても、子供の道徳性や攻撃性、反社会的行動、親子関係の質、心の健康など様々な悪い影響があるようです。 長谷川寿一ほか『進化と人間行動』東京大学出版会 無藤隆ほか『心理学』有斐閣
補足
ご回答ありがとうございます。 そのガーシェフ氏の発言の出典をお教えいただけませんか? ローレンツとはあまり関係ないかもしれませんが、澤口俊之氏等は体罰にやや肯定的なようです。 http://toshi-sawaguchi.life.coocan.jp/blog/2009/09/090907.html
お礼
大変参考になりました。 ありがとうございます。