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刑法の暴行概念について
それほど親しくない相手に挨拶のつもりで肩をぽんとたたいたところ、相手が 脱臼した場合、判例のとる暴行概念物理的有形力の行使、及び因果関係における 条件説からすれば傷害罪が成立しますか
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しない。 挨拶として肩を叩く程度は暴行罪の予定する暴行の実行行為に該当しない。暴行罪の暴行概念が人に対する有形力の行使であると言ってもそれは前提として法律的に禁圧すべき程度のものであるのは当然のことである。よって、そもそも暴行罪に問擬する必要のない有形力の行使は、暴行罪の実行行為性自体を欠き、暴行罪の暴行に当たらない。暴行罪の暴行に当たらない以上、結果的加重犯としての傷害罪も成立しない。なお、親しいか親しくないかは関係がない。 過失傷害罪の可能性はあるが、挨拶程度の肩の叩き方で脱臼することは通常考えられず、特段の事情がない限りは過失もないと考えるべきである。 刑法学を勉強し始めの頃というのは、論理優先で演繹的に答えを出そうとしてしまうが、判例に限らず学説においても常識的におかしな結論になることはまずないのであって、常識的におかしい場合は、どこかに勘違いがあるのである。 余談であるが、判例の因果関係理論は条件説ではない。条件説と未だに説明している本もあるようであるが、客観的相当因果関係説に近く、到底条件説とは言えないものもある。なお、判例を元に理論化したのが客観的帰属論と言ってよかろう。