- ベストアンサー
刑法の因果関係の凡例に関する質問
- 質問内容: 先日の質問でわかりづらかった例題について甲の罪責を理解したい。
- 判例によれば、甲の不用意な移動が結果の溺死を引き起こす危険性があるとされ、その後の乙の過失行為も甲の行為によって誘発されたとされている。
- 相当因果関係説では、判例が一般的な予見可能性の要件を無視しており、説明に矛盾が生じている。そのため、甲の罪責を述べる上で相当因果関係説を適用することは適切ではない。
- みんなの回答 (1)
- 専門家の回答
質問者が選んだベストアンサー
- ベストアンサー
これはわりと書きやすいと思いますよ。 まず条件関係は絶対に必要です。これは必ず認定しないと駄目です。甲の行為がなければX死亡の結果は生じなかったという事は因果関係論の大前提です。これがなければ因果関係論は論じる余地がありません。 条件関係があればそれだけで終わりにしてしまうのが条件説ですが、これはもう今では誰も採用しないと思ってよい説であり、条件説を限定する必要があることを述べて他説を説明するという流れになるわけです。条件説は、いわば自説の導入のための「叩かれるためだけにある説」(某弁護士談)なのです。 さて、夜間潜水指導というのは結構危険(夜の海はかなり危険です)なのは、まあ、スキューバをやるような海を夜に見たことのある人ならまず分かるでしょう。もしそこで指導者とはぐれてしまった場合、経験の浅い補助員はどうするでしょう?何もしない?そんなことはないでしょうね。何かするでしょう普通は。それが受講生に対する何らかの指示であったが、不適切なものだったという可能性は?まああっても不思議じゃないですね。経験が浅いのですから。そうしたら受講生はどうします?指示に従うでしょうね?受講生ということはほぼ素人なわけですから。その不適切な指示に従った結果、事故が起こって最悪、溺死することは?あってもおかしくないでしょう?ということで、この事例は起こっても不思議じゃないくらいには想定できるでしょう?とすれば、説明をどうするかは別にしても相当因果関係説でも因果関係は肯定できるのです。ですから、相当因果関係説でも判例と同じ結論にはできます。 相当因果関係説の危機と言われる判例は、最決平成2年11月20日です。あれは、「第三者の故意行為で死期が早まった」という場合ですが、「早まったその死」と元の暴行との関係を見ると、普通に考えれば、傷害を与えた人間を港に放り出したら第三者が更に暴行を加えて死期を早めるなんてことは一般的に予想できることではありません。すると、行為者は無論、一般人も予測できない事情ですから、相当因果関係説では因果関係を否定するのが素直なはずというところで、相当因果関係説では判例の結論を巧く説明できないとされるわけです(にもかかわらず、結論においては判例は多く妥当と評価されているんです)。刑法判例百選に解説があるので一読をお勧めします。
お礼
ありがとうございます。