ノルウェイの森

質問

ワタナベはハツミさんの死を知って、永沢さんと連絡を絶ちますね。
あれはなんででしょか？？

回答No.2

rkd4050 · ベストアンサー

あれは特に永沢に対して怒っているわけではないですね。
　手紙を破った一番の理由は、「ハツミの死によって『何か』が消えてしまった」の「何か」のひとつが、永沢と主人公を結ぶ関係だからです。なぜそうなるかは前回書きました。つまり、永沢との関係が失われた以上、手紙なんか持っていてもしょうがないから破るわけですが、そのことは主人公にとっても「辛く哀しいこと」なのです。

　怒っているように見えるのは、手紙を破ることで主人公が積極的に永沢との関係を断絶しようとしているように見えるからだと思います。しかし、主人公の意志とは関係なく、ハツミの死によって永沢との関係は失われているのです。手紙を破ろうが破るまいが、それは変わりません。自ら永沢との関係を絶てるくらいの積極性があるなら、そもそも主人公はハツミを永沢から奪っており、彼女は自殺せずに済んだでしょう。

　持っていてもしょうがないからといって何も破ることはないだろう、と思うかもしれませんが、この主人公は合理主義を気取っているので、表面上は不要な手紙を破棄しただけなのです。その行為に何の感情も意図もありません（少なくとも彼の信条による建前では）。実際は、手紙を破棄することで、ハツミの死や永沢との断絶が決定的になったように思えて「哀しい」わけですけどね。
　逆に言うと、ハツミの死や永沢との関係消滅という事実に対して、主人公が積極的にできることが手紙を破って「二度と手紙を書かなかった」ことだけで、しかもそうした、この主人公にしては珍しく積極的に見える行為が、単なる事実の追認でしかないからこそ、このシーンは印象的であり、喪失感や無力感に溢れて「哀しい」わけです。

　怒りの感情があるとすれば「永沢さんにも僕にも彼女を救うことができなかった」ことに対してであって、仮に永沢に対して怒っているのだとすれば、自分自身に対する怒りも同程度以上持っているはずです。
　ただし、ハツミが死んだのは永沢と別れて別の男と結婚して2年後ですから、自殺と彼らには直接関係がありません。怒りの感情があったとしても、ぶつけどころがないんですよね。自分のせいにもできないし、永沢のせいにもできない。怒りの行き所がないので手紙に八つ当たりしたと考えることは可能だろうと思います。電柱を蹴るのと同じことです。
　しかし、全体の構成から考えれば「怒り」よりは「喪失感」の演出として手紙を破ったと考える方が実情に近いと思いますけどね。

お礼

おはようございます
朝早いですね！

確かに、合理主義きどりのワタナベっぽさあふれる記述かもしれません

>この主人公にしては珍しく積極的に見える行為が、単なる事実の追認でしかないからこそ、このシーンは印象的であり、喪失感や無力感に溢れて「哀しい」わけです。

特にこの部分、ほんとにそうだなと感心しました

ありがとうございます
では、またどこかで

回答No.1

rkd4050

文中に理由は書かれていませんので、いちおう、どう考えるかは読者の自由となっております。頭で考えないで、感覚的に共感するのが村上春樹ファン的には正しい読み方となります。

『ノルウェイの森』は登場人物の扱いがかなりシステマチックになっていて、役割がきっちり決まっており、それが済んだらすぐさま退場するようになっています。
　そうした構造の観点からすれば答えははっきりしていて、つまり、永沢はハツミと主人公との関係を作り出すための装置に過ぎない、ということです。一見、男同士の交流があるように見えますけど、あれは結局のところ、ハツミを間に挟んで初めて成立する関係なのです。
　露骨に言えば、キスギと直子と主人公の関係を再現するために永沢とハツミは存在していて、永沢と主人公の関係は「ハツミを主人公に託そうとする」という展開を作り出すためだけに存在しています。実際、ハツミの死後に彼らが会ったところで、話すことなど何も無いような気がしませんか？

お礼

ありがとうございます
お礼が遅れましてすみません

なるほど、その観かたは全然気づかなかったです

その切り口だと、キズキも直子と主人公の関係を成立させる、
いわゆる　装置　として存在するってことですね

あと、手紙の件で、最後、ワタナベ君は怒っているように僕は感じたんですが、
rkd4050さんはそんなふうに感じませんでしたか？

僕はそこが気になってるんですね

永沢もハツミさんのことを悔やんでるのになあ
なんて思ってて…