もし私が悪い経営者だったら賃上げ税制でどう動くか?
もし私が悪い経営者だったら、「賃上げ税制」でどう動くか?
鈴木貴博:百年コンサルティング代表
https://diamond.jp/articles/-/290128
この税制を目にしたら企業はこのような戦略をとるのではないか?
というのをシュミレーションしていました。実際に賃上げがされることはないですかね?(´・ω・`)
<1>成長企業の経営者ならば「格差を広げる」ことで節税する
大手コンサルティング会社のような業態だったらどうするか?
コンサルティング会社には年俸1000万円を超える高給取りのコンサルタントから、
業務をサポートする非正規の従業員まで結構幅広い給与レンジのスタッフが働いています。
優秀で他社から引き抜かれると困る有能なコンサルを中心に、
年俸を500万円ほど上乗せしていくでしょう。
事業が成長しているときは、この方法が鉄板です。
なにしろ、政府が見ているのは「継続して雇用する人の給与総額」なのですから。
以前、ファーストリテイリングの柳井CEOが、これからの日本人は給与1億円の社員と
給与100万円の社員に二分化されていくと予言されたことがあります。
これが世界で問題になっている格差問題の本質なのですが、
成長企業の経営者の立場に立てば優秀な社員の給与はいくら上げても損はない。
一方で、普通の従業員や非正規従業員の賃上げはコスト増だと考えます。
一般従業員の給与水準を一度上げてしまうと下げるのは難しい。
ですから、この税制を目にしたら成長企業の経営者はまず格差を広げる方向に動くでしょう。
<2>業績が停滞している大企業の経営者だったら
継続雇用者の人員整理やM&A、退職金の前払いで節税する
たとえば、外注を切ってパートに置き換える方法はありでしょう。
今回の税制では「継続する雇用者の給与総額」ということで、
新規採用を増やしてもその年の税額控除にはプラスにはなりません。
しかし、継続的に外注をパート従業員に置き換えていけば毎年、
継続従業員の給与総額はすこしずつ増えていきます。具体的には清掃業務や警備員、
大口の配送など外注でなくてもできそうな業務を、非正規従業員に切り替えていくことで
達成できそうです。
同じ仕組みをより大がかりにやるならば、毎年4%程度、健全な零細企業をM&Aする
手があります。本体でやらなくても、グループ会社に節税専門の安い人件費の会社を作って
経理操作で利益をそこに集めるようにすることもできます。これも、
次年度以降は「継続する雇用者」の数が増えることになるので、節税効果がありそうです。
給与総額の定義では、前払い退職金も給与総額に含まれることになっています。
前払い退職金制度とは退職金相当額を給与に加算して支払う制度で、
大企業でも導入例が存在します。これまでは企業のメリットとしては退職給与引当金が減る、
つまり負債が減るため財務が健全に見えるということが重要でしたが、
この制度は賃上げ税制対策に使えるかもしれません。
要するに、社員から見れば毎年の給与が増えて、退職時の支払いが減るわけです。
退職金は制度上、給与総額には本来含まれないのですが、
前払い退職金に制度変更すれば給与総額が増える。この制度を悪用すれば、
賃上げ税制メリットを得られるわけです。
補足
回答ありがとうございます。とても参考になりました!ちなみに、その「似たような制度」はどの制度でしょうか?今年の税制改正ということは、来年度から施行なんですか??