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ばらつきの掛け算
統計学に関する質問をさせていただきます。 N(μ1,σ1^2)の分布を持っているものと、N(μ2,σ2^2)の分布を持っているものを掛け算したとき、その結果はどのような分布になるのでしょうか? 具体的に申し上げます(カテゴリからちょっと外れてしまいますが)。とある電子回路の出力値が2つの部品の特性値の積で決定されるのですが、2つの部品のそれぞれの製造ばらつきが判明しているときに、出力値の分布が数式的にどのように表わすことがきるのかわからず悩んでいます。 同等の質問が既出でしたらごめんなさい。宜しくお願いいたします。
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確率的に変動する互いに独立な2つの変数x1, x2の積。一般には、かなりややこしい話になります。特にx1が(あるいはx2が)変動のために正になったり負になったりする、ということまで考慮すると。 でも、製造ばらつきの話ですから、そんなに極端なばらつきは(多分)ないでしょう。もし、平均値μに比べて変動の幅σがうんと小さいのならば、ごく簡単な式で近似できます。 p1, p2を、平均0、分散1の正規分布(標準正規分布)に従う、互いに独立な確率変数であるとして、 x1 = μ1 + σ1 p1 x2 = μ2 + σ2 p2 となっているものと考えます。以下は | σ1 / μ1 |<< 1であると仮定できる場合の話です。知りたいのは、x1x2がどうなるかですね。 対数を取って ln(x1) = ln ( (1+(σ1 / μ1)p1) + ln(μ1) ここで、ln(1+x)は|x|が小さい時 ln(1+x) ≒ x であるから、仮定により、 ln ( (1+(σ1 / μ1)p1) ≒ (σ1 / μ1)p1 従って、 ln(x1) ≒ ln(μ1)+(σ1 / μ1)p1 です。なので ln(x1x2)=ln(x1)+ln(x2) ≒ ln(μ1μ2)+q ただしqは確率変数 q = (σ1 / μ1)p1+(σ2 / μ2)p2 です。 従って、対数を外すと x1x2 ≒μ1μ2 exp(q) ということになる。ところで |q|が小さいと仮定したのだから、 exp(q)≒1+q であり、ゆえに x1x2 ≒ μ1μ2 (1+q) さて、p1, p2は互いに独立で、どちらも標準正規分布に従うのだから、 qは平均0、分散 (σ1 / μ1)^2 + (σ2 / μ2)^2 の正規分布に従うことになります。
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- stomachman
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ANo.4のコメントについてです。 > つまりx1,x2のばらつきだけが分かれば、その積x1x2のばらつき(平均値に対する比)も算出できると理解しています。この考え方は正しいでしょうか? 「x1,x2のばらつき」と言うと、σ1、σ2のことになり、そりゃ駄目だとANo.2,3で回答しました。でもここで仰っているのは「(σ1/μ1)と(σ2/μ2)が分かっていればx1x2のばらつき(平均値に対する比)も算出できるんじゃないの?」という意味でしょうかね。それならば、YESです。 (σ1/μ1)と(σ2/μ2)が分かっていれば、ANo.1のqの分散が計算できる。で、qは x1x2 ≒ μ1μ2 (1+q) という関係を満たす。つまり x1x2 ≒ μ1μ2 +μ1μ2q ということだから、x1x2の平均はμ1μ2 、分散は((μ1μ2)^2)((σ1/μ1)^2+(σ2/μ2)^2)である。つまり、x1x2の標準偏差は |μ1μ2| √((σ1/μ1)^2+(σ2/μ2)^2) であると分かります。 なので結局、μ1, μ2 が未知であっても、(σ1/μ1)と(σ2/μ2)が分かっていて、しかも|σ1/μ1|と|σ2/μ2|がどちらも1より充分小さいのであれば、「x1x2の標準偏差が幾らかは分からないが、それはx1x2の平均の絶対値の √((σ1/μ1)^2+(σ2/μ2)^2)倍である」となら答えられる訳ですね。
お礼
ご回答ありがとうございました。 >でもここで仰っているのは「(σ1/μ1)と(σ>2/μ2)が分かっていればx1x2のばらつき(平均値に対する比)も算出できるんじゃないの?」という意味でしょうかね。 その通りです。 私が申し上げたかったのはまさに最後の3行 >μ1, μ2 が未知であっても、(σ1/μ1)と(σ2/μ2)が分かっていて、しかも|σ1/μ1|と|σ2/μ2|がどちらも1より充分小さいのであれば、「x1x2の標準偏差が幾らかは分からないが、それはx1x2の平均の絶対値の √((σ1/μ1)^2+(σ2/μ2)^2)倍である」 のことでした。 最初のANo.1で既に答えは出ていたのに、何故気がつかなかったのだろうと、ふがいない思いです。すみませんでした。 このたびは長らくお付き合い頂きありがとうございました。これまでのご回答で私の悩みは全て解消しました。大変感謝しております。今後とも宜しくお願いします。
- stomachman
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なんだかピンと来ない、という事かと思います。ならば、こういうやりかたの方が(ちょっとおおざっぱだけど)却ってご理解戴けるかも。 p1, p2を、平均0、分散1の正規分布(標準正規分布)に従う、互いに独立な確率変数であるとして、 x1 = μ1 + σ1 p1 x2 = μ2 + σ2 p2 とします。(つまり、x1は平均μ1分散σ1^2の正規分布に従う。x2も同様、ということです)すると、 x1x2 = (μ1 + σ1p1)(μ2 + σ2p2) = μ1μ2 + μ2σ1p1 + μ1σ2p2 + σ1σ2p1p2 ここで、もし右辺の最後の項 σ1σ2p1p2 が無視できたとすれば、 x1x2 ≒ μ1μ2+ (μ2σ1)p1 + (μ1σ2)p2 である。その場合、 r = (μ2σ1)p1 + (μ1σ2)p2 とおくと、rは平均0、分散(μ2σ1)^2 + (μ1σ2)^2の正規分布に従う。だから、x1x2は平均μ1μ2、分散(μ2σ1)^2 + (μ1σ2)^2の正規分布に従う。(なので、μ1、μ2が違えば、x1x2の分散も違うことが分かります。) では、σ1σ2p1p2 は無視できるのかどうか。 ============================= それを検討するために、まず X = x1x2/μ1μ2 -1 を考えると、 X = (x1x2-μ1μ2)/μ1μ2 = (μ2σ1p1 + μ1σ2p2 + σ1σ2p1p2 )/μ1μ2 = (σ1/μ1)p1 + (σ2/μ2)p2 + (σ1σ2/μ1μ2)p1p2 ここで、 |σ1/μ1|<<1、|σ2/μ2|<<1 が成り立つ場合には、第3項の係数の絶対値は |σ1σ2/μ1μ2| = |σ1/μ1||σ2/μ2| 従って、 |σ1σ2/μ1μ2| << |σ1/μ1| |σ1σ2/μ1μ2| << |σ2/μ2| である。つまり、第1項、第2項に比べて第3項はうんと小さいのだから、 X ≒ (σ1/μ1)p1 + (σ2/μ2)p2 である。ゆえに、 x1x2 = (1+X)μ1μ2 ≒ μ1μ2+ (μ2σ1)p1 + (μ1σ2)p2 である。 ============================= だから、|σ1/μ1|<<1、|σ2/μ2|<<1が共に成り立つ場合には、 x1x2 = μ1μ2 + μ2σ1p1 + μ1σ2p2 + σ1σ2p1p2 の右辺の最後の項 σ1σ2p1p2 は無視できる。
お礼
ご回答ありがとうございました。 お察しの通り、こちら(ANo.4)の方が私にとってはすんなり頭に入りました。今回もそうですが、式の導出/証明には脱帽致します。 1つ前のお礼で申し上げた通りなのですが、もしσが平均値μの比率で表わされるのであれば、例えばσ1=0.1xμ1,σ2=0.1xμ2であれば、 x1x2 = μ1μ2 + μ2σ1p1 + μ1σ2p2 + σ1σ2p1p2 = μ1μ2 + 0.1μ1μ2p1+ 0.1μ1μ2p2 + σ1σ2p1p2 となり、とりあえず右辺第4項は無視できるとすれば、x1x2は平均μ1μ2、分散(0.1μ1μ2)^2+ (0.1μ1μ2)^2 = 0.02(μ1μ2)^2の正規分布に従う。つまりx1,x2のばらつきだけが分かれば、その積x1x2のばらつき(平均値に対する比)も算出できると理解しています。この考え方は正しいでしょうか?宜しくお願いします。
- stomachman
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ANo.2のコメントについてです。 まず[2]について、 「幾つかの例」の作り方は簡単です。 たとえばσ1=σ2=1 だとします。 (a) μ1=10, μ2=1000の場合、ANo.1の近似によって、qの分散は (σ1/μ1)^2 + (σ2/μ2)^2 = (1/10)^2+(1/1000)^2 ≒1/100 ぐらいであり、従ってx1x2の分散は ((μ1μ2)^2)×(1/100) = ((10×1000)^2)×(1/100) = 1000000 ぐらいです。 (b) μ1=μ2=100の場合、ANo.1の近似によって、qの分散は (σ1/μ1)^2 + (σ2/μ2)^2 = (1/100)^2+(1/100)^2 =2/10000 ぐらいであり、従ってx1x2の分散は ((μ1μ2)^2)×(2/10000)= ((100×100)^2)×(2/10000) = 20000 ぐらいです。 つまり、σ1, σ2が同じでも、μ1, μ2によってx1x2の分散はまるっきり違う。(Excelか何かで、実際に乱数を使って試してみては如何でしょうか。) 次に[1]です。ANo.1の近似は「x1, x2のどちらについても、|μ|に比べてσがうんと小さい」という仮定のもとで導きました。このときはx1x2はほぼ正規分布になってくれる。ここで|μ|をだんだん小さくして行くと、「|μ|に比べてσがうんと小さい」とは言えない状況になってきて、x1x2の分布が正規分布から外れてきます。 例えば、x1とx2が標準正規分布に従う場合(μ1=μ2=0, σ1=σ2=1)、掛け算の性質により、 |x1|<1の場合には|x1x2|<|x2| |x1|>1の場合には|x1x2|>|x2| になる。つまり、|x1x2|は|x2|より小さくなるか、あるいは|x2|より大きくなるかのどっちかになって、|x2|とほぼ同じということは滅多に起こらない。 このために、x1x2の分布はx2の分布(標準正規分布)に比べてより広がった裾野と、よりとんがったピークを持つ分布になります。これも、Excel等で試してご覧になればご納得いただけるかと。
お礼
ご回答ありがとうございます。 早速EXCELで試してみました。一目瞭然でした。 当初不思議に思っていたのですが、ここでようやく私自身大きな勘違いをしていることに気がつきました。それは、ばらつき(σ)が絶対値(平均値からの差)を表わしているのであって、相対値(平均値からの比率)ではないということです。これに気がついた瞬間、ANo.3や今までのモヤモヤがなくなりました。ありがとうございました。
- stomachman
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ANo.1のコメントについてです。 話がよく見えませんけど… [1] もし本当にμ1=μ2=0であるということですと、ANo.1は全く使い物になりません。その場合は、x1x2の分布は正規分布とはだいぶ違うものになり、結構面倒な計算になりますよ? [2] もし、μ1とμ2が未知の状態で、σ1とσ2だけ与えてx1x2の分散を知りたい、という話であるなら、それは絶対無理です。(幾つか例を考えればお分かりになるでしょう)
お礼
早急なご回答ありがとうございました。 μ1=μ2=0としてしまうことで変数が減ったら、もう少し簡単に表現できるのかなと思ったのと、ばらつきだけ分かればその積のばらつきも表現できるのかなと思ったので、再度質問させて頂いた次第です。 貴殿のコメントについて教えてください。 [1] 計算が面等になるというのはともかく、μ1=μ2=0になると何故x1x2の分布は正規分布とはだいぶ違うものになってしまうのですか?平均値がシフトしただけで分布の仕方が大きく異なってくることがイメージできません。 [2]上記の通り、σ1とσ2だけ与えられればx1x2の分散が分かるのではないかと漠然と思っていました(もちろんx1x2の平均は絶対求められないのは理解しています)。ですので、貴殿が絶対無理と言われる理由が分かりません(幾つかの例がでてきません...)。 基本が理解できていないから私はこんな質問をしてしまうのでしょう。申し訳ありません。もう少しお付き合い頂けると幸いです。宜しくお願いします。
お礼
ご回答大変ありがとうございました。 丁寧な導出大変感謝します。一旦対数をとって、最後に外すというテクニックはすごいですね。 さて、 x1 = μ1 + σ1 p1 x2 = μ2 + σ2 p2 は、標準化したということですよね? もし、もともとμ1=μ2=0つまり2つの部品の製造ばらつきのみから導出しようと試みた場合、もう少し簡単になりますでしょうか?その場合、最後の式 x1x2 ≒ μ1μ2 (1+q) から求めることができますでしょうか?不勉強で申し訳ありませんが、宜しくお願いします。