普通の経済学のテキストでは
(1)πをKとNで偏微分して利潤最大化条件を導く(完全競争なのでp,w,rは所与)
(2)二本の利潤最大化条件をKとNについて解く
という方法で利潤を最大化するKとNが求められると説明していると思います.
yukosannさんもそうやっているのだと思います.
意外に思われるかもしれませんが,生産関数がコブダグラス型関数(だけではなく一次同次の関数全般)の場合には利潤最大化するKとNの値を求めることはできません.求められるのは,利潤を最大化するKとNの比率(K/N)だけです.K/Nまではでたが,その先がわからないということですが,もともとK/Nまでしか求められないということです.
なぜこうなるのかを直感的に説明するのは難しいですが,数式を利用すれば簡単にわかります.
まず,生産関数をY=F(K,N)とします.F()は一次同次関数と仮定します.このとき利潤最大化条件は
p*F_K(K,N) = r
p*F_N(K,N) = w
となります.F_K,F_NはそれぞれFをKとNで偏微分したものです.F(K,N)が一次同次なので,それを偏微分したF_KとF_Nはゼロ次同次関数となります.よって上の二式は
p*F_K(K/N,1) = r
p*F_N(K/N,1) = w
と書き換えることができます.利潤最大化条件は二本ありますが,KとNはどちらでも比率の形でしか入っていません.よって,最適なK/Nは決まりますが,KとNの絶対的な水準は決めることはできません.これが比率しか決まらない理由です.KとNの比率しか決まらないので,生産量は当然一意には決まりません.
K/Nしか決まらないということがどういうことかと言うと,仮に(K,N)=(10,20)が利潤を最大化する資本,労働だとすると,(K,N)=(5,10)も(K,N)=(1,2)も(K,N)=(30,60)も(K,N)=(100,200)も全て利潤を最大化するKとNの組み合せとなるということです.つまり,利潤を最大化する組み合わせが一つでもあるのなら,それは無限に存在するということです.
例えば,質問中のコブダグラス型関数の場合,利潤最大化条件は
p*A*a*(K/N)~(1-a)=w
p*A*(1-a)*(N/K)~a=r
となります.ここで仮にA=1,a=1/2,p=4,w=4,r=1とすると
2*(K/N)~(1/2)=4
2*(N/K)~(1/2)=1
となります.(K,N)=(4,1)は上の二式を満たしますが,(K,N)=(8,2),(K,N)=(12,3),(K,N)=(16,4)も満たします.つまり,K/N=4を満たす全ての組み合せは利潤最大化条件を満たすことになります.
コブダグラス型生産関数(一次同次関数)は非常によく利用される関数型ですが,上のような性質を持っているという意味で特殊な関数型と言えると思います.
> 完全競争に直面した企業であったとき、利潤極大となる労働投入量、
> 民間資本ストック、生産高を数式で表しなさい。
これが絶対的な水準を求めなさいという意味なら
上で説明したような理由からこの問題に答えるのは無理ということになります.
お礼
最高にわかりやすい答えをありがとうございます!! 一次同次を使えていなかったようです↓ これ以上の完成度の高い答え方はありませんね☆