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なぜ突然変異
あらかじめ私は生物学の人間だと断っておきます。 さて、mutation を現場では「変異」、もしくは「ミューテーション」と言っていますが、調べ物をしていると、これを「突然変異」と言っている素人の人が非常に多いことに気づきました。それどころか、高校の教科書にもそういう記述があるらしいです (私は「変異」としか教えられたことしかないので)。mutation という英単語は言うまでもなく「何らかの変化が起きること」、特に狭義には「遺伝子 (の塩基配列) に実質永久的な置き換わりなどが生じること」という意義であって、「突然それらが起きること」ではありません。 質問ですが、なぜどういった経緯で「突然変異」などという日本語があてがわれるようになったのでしょうか。
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- ga111
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非常に分かりにくいのですが以下参照。Mutationはド・フリースの命名であり、Mutationによって新たな種が突如(突然)として出現する説(間違い)から由来するそうです。よって、その当時は突然変異は適切な訳だったのが、時代が変わるにつれて、適切でない訳に変わったらしいです。 http://www.fides.dti.ne.jp/~fuyamak/genetics/chap3.html 突然変異という言葉はド・フリース(de Vries 1901)によるものである。彼はオオマツヨイグサ(Oenothera lamarchiana )に形態的に大きく異なる変異が頻発することを観察し、この現象に対してMutationという名称を与えた。ダーウィンの自然選択説が微小な遺伝的変異に自然選択が働いた結果、新しい種が生ずると主張したのに対抗して、ド・フリースは突然変異によって新たな種が突如として出現するという「突然変異説」を唱えた。その後、ド・フリースのいう「突然変異」は特殊な染色体異常が原因であることが判明し、その主張は誤りであることが明らかになったが、突然変異という言葉だけは現在も使われている。ただし、その意味するところはド・フリースのものとはまったく異なる。 日本語ではmutationに対して「突然変異」という訳語を当てたために、「変異」(variation)であるという誤解がかなりみられる。例えば、「生物の変異には突然変異と環境変異がある」などといった記述は高校の教科書でも目にする。突然変異というのは遺伝的変異を作り出すプロセスを指し、「変異」そのものではないことに注意したい。環境変異に対置される言葉は遺伝的変異である。 突然変異の定義 突然変異をもっとも包括的に定義すれば、「遺伝物質の質的・量的変化による遺伝情報の変化」ということができよう。ただし、分子進化学などの分野では、遺伝情報の変化を伴わないような変化、例えば、DNAの塩基配列の変化がアミノ酸の変化をもたらさない同義置換なども突然変異ということが多い。 >突然変異というのは遺伝的変異を作り出すプロセスを指し、「変異」そのものではないことに注意したい。 私はここは納得がいきません。Mutationが必ずしもプロセスを指さないと思います。メカニズムとしてMutationはDNA polymeraseのエラー やDNA修復機構の不完全な修復によって突然に起き、遺伝的に固定されるものです。 表現型Phenotypeの変化がMutationのつみかさねで突然おこったように見えるとしても、個々のMutationはメカニズムとして突然に起こっているといえると思うのですが。 忠実な訳>まちがいの訳>でもオリジナルとは別に正しい面もある訳、、、ということ???
- subaru361
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もう少し古い文献も調べるつもりでしたが、辞典としてはかなり古い、岩波生物学辞典第二版においても「突然変異」の訳語が与えられております。その他分子遺伝学を中心とした複数の書籍等確認いたしましたが、「突然変異」を用語として使わない例は見当たりませんでした。少なくとも素人で用語の誤解がある、ということではないと思います。どういった経緯でといいますが、恐らくはmutationという言葉の訳語が当初から「突然変異」であったと思われます。「The Mutation Theory」は普通「突然変異説」の訳語を与えられてますし、知りうる限り、最初からその訳語であったように思います。 想像するに、「生物学の人間」といっても、畑によって「変異」がしっくりくる現場とそうでもない現場があろうかと思います。分子屋さんでDNAを直接扱う分野の人は、mutationを「変異」とするように思います。時間の概念が仕事に直結しないためではないかと思います。発生屋さんも「変異」を使う場合があるように思います。一方遺伝学分野の人は「突然変異」という言葉を普通に使います。
- TTOS
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あらためてmutationを調べるきっかけを下さったことを感謝します。 学術用語集遺伝学編(増訂版) 文部省 1993 には mutationの訳語は「突然変異」 「変異」の訳語はvariationとなっています 遺伝学辞典 田中信徳監修 共立出版 1977年 には「変異:(前略)ほうこう変異のような非遺伝的変異と突然変異のような遺伝的変異とがあり,(中略)狭義には非遺伝的な変異だけを単に変異という。」と記述されています。 基礎動物學 佐藤磐根共著 裳華房 昭和25年 には 変異(variant),彷徨変異(fluctuation),突然変異(mutation)とされています。なお、この書の「術語は学術用語分科審議会編動物用語審議草案(昭和24年8月)によって統一してある。」そうです 今回調べた範囲では全て「突然変異:mutation」「変異:variant」が第一義に使われています。質問者さんは『「変異」としか教えられたことしかない』そうですが、mutationを突然変異と呼ぶのは不正確であるといった文献などがあれば、逆に教えていただきたいと思います。
- wacky2
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学術用語としてのmutationの定義は,狭義での「染色体や遺伝子の変化」ではないですか。なお,染色体の乗換え(遺伝子の組換え)は,mutationには含めません。 単に変異と言ったら,環境変異(environmental variation)や突然変異(mutation)や相変異(phase variation)などを含んでしまいます。 variationとmutationを区別するような訳語を当てはめていれば,このような混乱は起こらなかったと思いますが,定着した言い方であり,それほどの不都合は感じません。 専門家が,突然変異を省略して変異と呼ぶのは,全く問題ないと思います。 高校の教科書を一度ご覧になったらいかがですか。納得できるような記述になっているはずです。 訳語が当てはめられた経緯については,よく分かりませんので的外れな回答になってしまったかもしれません。
- TTOS
- ベストアンサー率40% (209/510)
生物教育用語集 日本動物学会/日本植物学会編 東京大学出版会 によると 「自然個体群中あるいは個体群間の個体の間に見られる差異のこと。遺伝的変異と非遺伝的変異に大別できる。・・・(後略)」 岩波生物学辞典 第4版 によると 「[1]variation ふつうには起原を同一にする細胞あるいは個体あるいは集団間に見られる形質の相違をいう。遺伝的変異のほかに,外部環境の力で生じた非遺伝的変異(環境変異)もあり,一次変異・季節変異などがこれに含まれる。・・・(後略) [2]mutation 突然変異と同じ意味で用いることが多い(変異原など)。」 「いつから」かは分かりませんが,手元にある古そうな本数冊を見ても「突然変異」が記述されています。 基礎遺伝学改訂版 田中義麿著 裳華房(昭和60年訂正38版) 1・3 変異(variation) の項では 「遺伝性変異(hereditary or genetic v.),不遺伝的(non-hereditary v.),環境変異(environmental v.),彷徨変異(fluctuation),個体変異(individual v.),突然変異(mutation)」等の解説があります。 遺伝子の分子生物学(上)第3版 J.D.WATSON著 三浦謹一郎ほか訳 化学同人(1982年第3版第8刷) 1章 メンデリズムから見た世界 突然変異による遺伝的変異の起原 の項に 突然変異(mutation)の記述があります 突然変異の分子生物学 J.W.DRAKE著 鈴木ケン之(ケンの字が出ません 竪の上半分と下半分に子)監訳 丸善(昭和48年発行) 突然変異の分子生物学の原著は”The Morecular Basis of Mutation”1970年に出版されたものです。 高校生物では変異について遺伝するものと遺伝しないものがあることを学習しますので,変異=variantとして認識するはずです。これを区別するために環境変異・突然変異の語を使うのは意味のあることです。ただ,mutationしか扱わない方々の間では変異=mutationで差し支えないと思います。
- phobos
- ベストアンサー率49% (515/1032)
私も素人ですが、 > これを「突然変異」と言っている素人の人が非常に多いことに気づきました。 > それどころか、高校の教科書にもそういう記述があるらしいです と拝見して、このご質問に非常に興味を覚えました。 私は「突然変異」と教わってきたし教科書や一般の解説書でもそう書いてあったと記憶しています。 ですので逆に教えていただきたいのですが、「突然変異」というコトバは、一応は正式な学術用語であると理解してよろしいのでしょうか?それとも違うのでしょうか? 岩波・広辞苑第五版にも下記のように記されていますが…… ----------------------------- とつぜん‐へんい【突然変異】(mutation) 親と明らかに異なった形質が、突然、子孫や枝葉に出現、または親の形質が消失し、それが遺伝する現象。遺伝子の変化に起因する。広義には染色体の変化によるものも含める。放射線の照射などで人工的に起したものを人為突然変異という。 ----------------------------- それはさておきご質問の主旨に戻ると、普通の英和辞典ではmutationには「突然変異」の訳語も載っていますが、確かに語の本来の意味は「変化」ですよね。言われてみればどうしてそういう訳に定まったのか不思議ですね。 > 質問ですが、なぜどういった経緯で「突然変異」などという日本語があてがわれるようになったのでしょうか。 以下は全くの素人考えでありまして、「釈迦に説法」みたいで恥ずかしいのですが、 生物の進化を考える上で、1858年ダーウィン「自然選択(淘汰)説」以降考えられてきた「微少な変異が自然選択によって蓄積されて連続的に変化していく」という考え方に対して、 1901年(明治33年)、ド・フリース「突然変異説」などのように「自然選択よりも不連続的・突発的な変異が重要な役割を果たしているのだ」という考え方が起きてきたわけですよね。 で、以下は推論なのですが、当時新説であった後者の考え方の「突発的変化」のニュアンスを強調するためにその頃「『突然』変異」と訳語をつけて、それが定着してしまったのではないだろうかと思うのです。 間違ってたらご容赦を。詳しい方のフォローを待ちたいと思います。
- Pantalaimon
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私は素人なので推測ですが…。 【突然】という言葉には 「物事が急に思いもかけず行われるさま。だしぬけに。いきなり。突如。」(三省堂提供「大辞林 第二版」) という意味合いがありますね。 子に親と異なった形質が現れても、それがメンデルの法則にもとづいていれば、「想定の範囲内」の変化であって「突然」ではないわけです。 ところがそうした法則による想定を越えて、偶然的に変異が生じた場合、主観的には「だしぬけに」「突如」だと感じるのではないでしょうか。 子に親と異なった形質が現れるにしても既知の法則から予測可能な変化なら「だしぬけに」とは感じないのに対して、”mutation ”の場合は「だしぬけに」と感じるから「突然」変異と言われるようになったのではないでしょうか。 以上、思いつきですので間違っているかもしれませんが、ご参考まで。
補足
「突然」についてそういう解釈であるという点については問題を感じていないのですが、下記補足のとおり、突然か否かという問題よりも、「突然」という意味をまったく含意しないところの mutation にあてる日本語がなぜ「突然変異」なのかというところが主眼なのです。まだまだ眠れぬ夜が続きそうです。
- penpen0608
- ベストアンサー率23% (120/510)
私は全くの素人です。 黒い猫から突然一匹だけ違う色の猫が生まれたりした場合、まあ、遺伝的には当然在り得る事なんでしょうが、素人は「突然」「違うもの」が生まれた!と思ってしまいます。この言葉で一番最初に思い浮かべるのは「アルビノ」です。 思うにこの言葉を最初に使った人は「変化が起きる」という言葉を出来るだけわかり易く私たち素人に伝えようとしてくれたのではないでしょうか。そうしてその言葉が市民権を得て、本来の意味と違うまま一人歩きを始めてしまう。良くあるパターンですね。 ところで逆に私はミューテーションという言葉が本来そんな意味だという事を初めて知りました。「永久的な置き換わりが生じる」なら「突然変異」というのは確かにおかしな言い方ですね。
補足
「突然であるか否か」の問題は別として、高等学校教科書などは「mutation =突然変異」という訳語になっているのです (学習指導要領や技術用語集がそうなっているからという議論ではありません)。 なぜ、「突然変わること」では*なく*「変わること」である mutation の訳語が「変異」ではなく「突然変異」であるのかということなのです。 不思議であると思いませんか。年明けから再びこの問題が頭をもたげてきて、明日から仕事だというのにロクに眠っておりません。
補足
遺伝的変異が「突発的に起こっているように見える」という事実は否定するわけではないのですが、mutation に「突発的に変化すること」という意義はないので、英語を母語とする人が mutation を見聞したときに、その言葉自体のみから「突発的変化」を頭に描く可能性はないのです (英語インフォーマントに確認済み)。 であるのに、日本人は「突然変異」という言葉を見聞すると、少なくとも情報として「突発的」、もしくは突然というモノが自身の頭に伝達されるのです。 きわめて奇異な感覚を抱かざるを得ません。