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社則と民法の優先順位
こんばんわ。 友人が就職した件で疑問に思っていたことが、 少々問題になりそうですので質問します。 友人は、中途入社で地方の小さな製造業の会社に転職しました。 もともとやりたかった職種でもあり、意気揚々と入社したのですが、 面接時の話と違う点や、法令を軽んじているようで、 試用期間中のうちに退職を考えています。 入社前に話は遡り、友人との転職祝いをしているときに話したのですが、どうも入社時には雇用契約書のようなものを取り交わしていないようなのです。 給与の説明(概算で年間○○円です程度だそうです)は受けたそうですが、それ以外に契約書のようなものにサインをしていないし、社則も提示されなかったと言っていました。 このような場合、社則で「退職の意思は1月前までに提示せよ」とあった場合、 民法に書かれている「期間の定めのない雇用の解約の申し入れ」に書かれている2週間前までの提示による退職はできないのでしょうか?
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本件で社則と称されるものが、労働基準法で言うところの「就業規則」であることを前提にして以下、話を進めます。 (1)まず、就業規則の適用については、個々の労働者の個別の同意は要件とされていません。 このことは、秋北バス事件において判示されています。 (2)次に、就業規則の効力発生時期についてですが、その適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続きが採られていることを要するものとされています。 このことは、フジ興産事件において判示されています。 以上のことから、今回の件がどうかということですが、(1)については、質問者さんの友人が就業規則の内容につき同意していたかどうかに関係なく、就業規則は適用されうることになります。 しかし、質問者さんの友人その他の労働者に対して就業規則が周知されていなければ、(2)により、当該就業規則の効力は発生していないことになります(ただし、質問者さんの友人が単に知らないだけといった場合は除きます)。 この場合には、就業規則の効力が発生していない(労使における取り決めがない)ため、民法、就業規則のどちらが優位するのかという問題にはならず、民法の規定が適用されることになります。 そして、質問者さんの友人の賃金体系が月給制であれば、民法627条1項ではなく、2項が適用となり、 「期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。」 ということになります。 今までの質問に対し、一方的意思表示の場合、2週間で退職できるというような回答が目立ちましたが、不正確ではないでしょうか? なお、民法627条と就業規則が競合する場合についての解釈は、No.3の方が書かれているとおりですので省略します。
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念のために申し上げますと、私は、就業規則が法規範だという見解を全否定するつもりはありません。会社内の施設管理事項など、会社が一方的に決めることができる性質のものは、法規範として説明するのがむしろ妥当でしょう。また、契約で定めることが難しい細目的・流動的事項についても同様かもしれません。 しかし、労働条件は労基法2条1項の見地から、一方の意思で形成されてはなりません。本件は労働契約の終了という、契約の根幹をなす事項であり、労働契約で定めることに特に障害も見当たりませんので、就業規則の定めが、少なくとも労働者同意が全くない状況下では、民法に優先する効力を有しないと考えます。
就業規則が法規範だという見解はもとより承知していますよ。しかし就業規則が仮に法規範だとして、法律に定めのある事項について、とりわけ使用者に有利な方向に優先するとすると、就業規則が民法より上位に位置する規範になってしまいますよ?これはおかしいですよね。法規範だとするのであれば、むしろ法律より下位に位置することが明らかですから、法律に定めのある事項については法律が優先しなければおかしいですよ。 ちなみに、こういう問題は就業規則の性質論から一義的に答えが出るものではないでしょう。ただ、契約の基本原則は言うに及ばず、労働基準法2条1項がある以上、一方の意思表示が当然に労働条件を形成してはまずいということです。一方が内容を勝手に決めることができては、もはや契約でも何でもありません。
- daidaros20
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就業規則より民法が優先すると考えられます。もし民法627条が任意規定で特約で排除できると解釈すると 第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。 の条文の「いつでも解約の申入れをすることができる」の部分も特約で排除できることになり、「退職には会社の承認を受けなければならない」というような規定まで有効になってしまいます。退職予告期間のみが特約で排除できるとすれば「いつでも解約の申入れをすることができる」の部分が強行規定、「2週間で退職が成立」の部分が任意規定ということになり、1つの条文に任意規定と強行規定が混在することになってしまい矛盾します。そうだとしたら民法627条1項は任意・強行混在規定といことになってしまいますが1つの条文に任意規定の部分と強行規定の部分が混在する例など見たことがありません。また、茨城労働局のリンクにもあるように判例では民法優先となっています。(高野メリヤス事件)茨城労働局の解釈は就業規則優先ですがそもそも民法は法務省所管の法令であり、労働局にとっては所管外の法令です。確かに労働問題を扱う機関は労働局ですが民法は雇用の条項も含めて所管外であることには違いありません。労働局の解釈だから権威があるように感じる人もいるかもしれませんが所管外の法令を解釈しているにすぎす、労働局の民法627条に対する解釈には何ら権威はありません。 ただ、次の転職先の入社日に間に合わないとかの事情がない限り、法的リスクをなるべく負わないためにも就業規則に従ったほうが無難ですからそれを勧めます。また、3ヶ月が合法という判例があるという意見もありますが辞職予告期間において就業規則が優先するという判例は見たことがありません。具体的事件名を挙げてくれれば調べられますが。
- tim0428
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No.5の方は、そもそも就業規則の法的性質についてどういう理解をされているのでしょうかね? 就業規則を法規範と考えるのが多くの判例や学説です。 そして、その判例の中の一つに秋北バス判決があり、最高裁は、「就業規則は、当該事業場内での社会的規範たるにとどまらず、法的規範としての性質を認められるに至っているものと解すべきであるから、当該事業場の労働者は、就業規則の存在および内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然に、その適用を受けるものというべきである」と判示しています。 これに基づいての実務であり、別段の意思表示云々は、説としてはありえるかもしれませんが、それをこの場で持ち出しても問題の解決にはつながらないのではないでしょうか?
就業規則が使用者の一方的な意思表示である以上、雇用契約書などによる包括的な同意も含めて、労働者の同意が全くないにもかかわらず、当然に効力を認めてしまうことは労基法2条1項の趣旨に反するのみならず、お互いに同意したがゆえにお互いが拘束されるという契約の大原則に反するものです。 ましてや本件の場合民法672条に定めがあるわけで、別段の意思表示をしない限りは、民法が適用されます。会社の一方的な意思表示である就業規則をその別段の意思表示と見ることは妥当ではありません。法律の定めがないことと、法律の定めがあることでは、就業規則の効力は同様に考えるべきではないのです。なぜなら、法律の定めがないことについては、就業規則の効力を認めないと紛争の解決基準がなくなってしまいますが、法律に規定のあることであれば法律によればよい(そして、多くは法律の基準が公平で妥当)からです。 完全月給制の場合に627条2項が適用される点についてはANo.4のとおりです。
- slotter-santa
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微妙ですが、このケースの場合は民法の原則が優先するような印象を持ちますね。 確かに民法は任意規定で、当事者で別の定めをした場合はそれが優先されます。判例もいくつかあります(最大3ヶ月前を合法とした判決もあり)。民法627条を強行法規としている判例もありますが、多数説は任意規定です。 このケースいう「社則で決めて」というのは労働条件通知書のときに詳細を委任させることでやっているケースが多いです。したがって、形式的に「雇用通知書」がなかったからといって、直ちに社則の効力が発しない、とまでは解釈できません。が、今回はまだ試用期間中で社則について知る余地が少ないことと、説明を受けていない、というところが決め手になるでしょう。よって、2週間前で可ということになるのかな、と思います。 まあ、双方合意すれば即日でも辞められますので、合わないなら交渉してみましょう。通知書を書面で渡さないのは労働基準法第15条違反(法定事項は書面明示義務あり)なので、そのあたりから揺さぶるのも一法かもしれません。
実はなかなか難しい問題です。 まず、社則というのは使用者の一方的な意思表示ですので、当然に文字通りの効力を認めるわけにはいきません。賃金は雇用契約に基づいて労働した以上、契約に基づいて当然に発生するものですから、賃金を受け取ったからといって社則を全面的に認めたことにはなりません。 民法に定めがあっても、それが任意規定である限り、別段の意思表示をすればそちらが優先するのが原則です。しかし社則は使用者の一方的な意思表示ですから、少なくとも、労働者がそれを認めるという別段の意思表示をしない限り、労働者には民法の任意規定がなお適用されるものと考えます。本件では労働契約書が交わされておらず、社則を承認する旨の別段の意思表示がありませんので、民法の規定どおり2週間前の解約告知で雇用契約は終了するものと考えます。 ちなみに、その2週間という規定が任意規定かどうか自体、問題があります。私としては、任意規定と解しない方がよいのかな、と思っています。
- zorro
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給料はもらってきますか?雇用契約がないならば、「期間の定めのない雇用の解約の申し入れ」に相当しますが、給料をもらっていれば会社の規則を認めている事になります。会社は規定に基づき給与を支給しているからです。都合の良い部分だけ規定を知らなかったと言うことはできません。
お礼
zorroさん、回答ありがとうございます。 給与については、締め日は過ぎていますが、振込みが翌月ですので、 まだもらっていないと思います。 >会社は規定に基づき給与を支給しているからです。 わからなくは無いのですが、それこそ会社側が決めた社則を都合の良いように使っているだけのように感じて、違和感を覚えます。 給与というのは、勤務の対価であり、企業側が支払う義務があるものではないかと考えています。 それが社則で決まっていなくとも、支払う義務のあるものを当然支払うべきであると。 しかし、zorroさんの回答を見て、「雇用契約とはなんなのか」ということを、再度意識する機会を頂いたと思います。 ありがとうございます。
補足
tokyo_walkerさん、回答ありがとうございます。 そして、こちらで失礼なのですが、回答を付けてくださったみなさん、まずはありがとうございます。 tokyo_walkerさんの補足に、このようなことを書いたのは、もう少し時間を頂きたいと思ったからです。 みなさんから、いろいろな情報(判例)を提示していただきましたが、 連休明けということも重なり、まとまった時間が取れずに、調べきれません。 もともと法律に疎いということもありますが・・・(^^;) みなさんの回答を咀嚼するまで、もう少しお時間を頂ければと思います。