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行列の積、どうしてそのように定義するの?
簡単のために2X2行列を考えます。 A=( a b ) ( c d ) , B=( p q ) ( r s ) とすると, AB = ( a b )( p q ) ( c d ) ( r s ) = ( ap+br aq+bs ) ( cp+dr cq+ds ) と積が定義されますが、なんの理由、なんの目的があってそのような定義がされるのでしょうか?
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R上のベクトル空間V_1からベクトル空間V_2への写像であって, T(ax+by)=aT(x)+bT(y) (x,y∈T、a,b∈R) となるTが線型写像でした.(便宜上R上としましたが、C上と読み替えても問題ありません) この線型写像Tがどんな写像であるかは、Tを見れば分かる事なので、「行列」というものがなくても数学的には何も困りません。(つまり、行列の言葉で書かれている定理は基本的に線型写像の言葉で書ける) しかし、線型写像を扱うのは人なので、「分かりにくい(イメージしにくい)抽象的なもの」よりは、「分かりやすい(イメージしやすい)具体的なもの」の方がうれしいですよね。 ベクトルという抽象的なものを、(ある基底を選んで)「座標」という具体的なもの(n=dimV個の実数を並べたものなので、具体的)で表現したように、 線型写像という抽象的なものを、(ある基底を選んで)具体的に表現したものが、所謂、「行列」です。 V_1(dimV_1=n)からV_2(dimV_2=m)への線型写像Tを表現する「行列(=nm個の実数の組)」をρ(T)ととおいておきます。(従って,ρは線型写像から「行列」への写像です) 一般に、XからYへの写像全体をFとした時、YがR上のベクトル空間であれば、f,g∈F,c∈Rに対して、 f+g:x∈X→f(x)+g(x)∈Y cf:x∈X→cf(x) と定義する事によって、自然にFをベクトル空間とみなす事ができます。 従って、V_1からV_2への線型写像全体は、ベクトル空間となせます。 であるから、T,SをV_1からV_2への線型写像,cを実数とした時、ρ(T+S)やρ(cT)という「行列」が定義されていることになります。そこで、この線型写像の和とスカラー倍の構造が、そのまま「行列」の和とスカラー倍になるように、「行列」の和とスカラー倍を定義します。つまり、 ρ(T)+ρ(S):=ρ(T+S) cρ(T):=ρ(cT) のように、「行列」の和とスカラー倍を定義します。 また、TをV1からV2への線型写像,SをV2からV3への線型写像とした時に、 S・T:x∈V1→S(T(x))∈V3 というV1からV3への線型写像を考える事ができます(写像の合成). すると、ρ(S・T)という「行列」を考える事ができます。そこで、「行列の積」を ρ(S)ρ(T):=ρ(S・T) と定義する事にします。 という訳で、 >なんの理由、なんの目的があってそのような定義がされるのでしょうか? 上のように定義することによって、 線型写像の和とスカラー倍と合成が、簡単に・具体的に計算できるからです。 つまり、線型写像の和とスカラー倍と合成が、上の定義から、 行列の和:成分ごとの足し算 行列のスカラー倍:各成分のスカラー倍 行列の積:普段使っている「行列の掛け算」 という簡単に・具体的に計算ができるものになるからです。(n×mの長方形上に並べるnm個の実数を並べるのは、行列の積が分かりやすくなるからだと思います) >しかし、行列とベクトルの積(BxやAyなど)も帳尻があうというのが腑に落ちません。 話が逆です。 行列の積が、「行列とベクトルの積」に一致するように「行列の積」を定義したのではなく、 ベクトルの座標を縦ベクトルで表現しておくと、 「行列とベクトルの積」の計算方法と、(縦ベクトルを自然にn行1列の行列とみなした時の)行列の積と計算方法が全く同じものになります。 だから、ベクトルの座標を縦ベクトルで書いているに過ぎません。(そうすれば分かりやすいから、そう書いているに過ぎません)
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- kabaokaba
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No.2です むしろ,はじめは 連立方程式の話から 「行列とベクトルの積」 があって,それをそのまま拡張する, もしくは複数の連立方程式を一気に扱うとか そういう動機で行列の積がでてきたのかもしれませんね ということで >しかし、行列とベクトルの積(BxやAyなど)も帳尻があうというのが腑に落ちません。 これは逆なんですよ. うまく拡張になるように 「積を定義した」だけです >ベクトルの内積には、もともと定義された根拠は違っても、表示式を知ってしまうと「異母兄弟」みたいなものを感じざるをえないのですが、そこらへんの理由をご存知であれば、ご教授いただけると幸いです。 これも話がちょっとちがってて, ここででている 「ベクトルの内積」ってのは 構造があまりにも単純で どこにでもでてくる形なんです 多変数のテイラー展開の一次の項の形でもありますし, 連立方程式のだって内積でかけますし, 線分の内分・外分の公式だって内積の形です. むしろ,「ax+by」のような一次式の方が ベースにあって,それがあちこちに顔を出している という方が自然です. ま,そーいう意味ではみんな「一次式」の 子供みたいなもので,それぞれの演算は 兄弟分なのかもしれません #ちなみに,内積にはいっぱい種類があります #実際のところはある四つの性質をみたす #ベクトル二個から「数」への写像を #内積というだけなんです.
お礼
本当にお世話になります。 少し考えました。 >線分の内分・外分の公式だって内積の形です. 平面から平面への1次変換 A=( a b ) ( c d ) , があったとします。 ベクトル(1,0)がAによって、ベクトル(a,c)に移り、 ベクトル(0,1)がAによって、ベクトル(b,d)に移るので、それを図示する(平面に基底をとる)と、一般のベクトル(x,y)がどこにうつるかが、視覚的に分かります。 ここで、定数倍のベクトルは、同じ定数倍のベクトルに移るので、特に、x+y=1と考えます。 すると、(1,0)と(0,1)を端点とする線分を、y:xに内分する点は、(a,c)と(b,d)を端点とする線分をy:xに内分する点に移ることが分かります。 つまり、線分の内分の公式には、「行列とベクトルの積」のイメージがひそんでいます。 ベクトルの内積(射影や角度の概念)と、 行列とベクトルの積(一次変換の概念)と、 行列の積(1次変換の合成の概念)とは表示形式がみな似てますが、概念的にはどのような関わりがあるか、僕には問題です。
補足
いつもお世話になります。 いただいた回答について、半日以上も考え続けています。 >多変数のテイラー展開の一次の項の形でもありますし, 連立方程式のだって内積でかけますし, 線分の内分・外分の公式だって内積の形です. ax+by=cといった形には、内積の意味(射影した長さをかけるといったこと)がひそんでいるではないかと盲信しています。 直線ax+by=cを、a(x-x_0)+b(y-y_0)=0という形に書き直してみると、直線の法線ベクトルが(a,b)であることが内積の意味から読み取れます。 次元をあげて、平面、または超平面でも同じです。 多変数のテイラー展開の一次の項というのは、1次近似(接する超平面)なので、同じく内積の意味がひそんでいます。 ところで、ax+by=cで、a^2+b^2=1であるときには、 法線ベクトルの長さが1になり、図を描くと分かりやすいのですが、「点と直線との距離の公式」にも内積の意味がひそんでいます。 そして、たとえば、ax+by=cで、a+b=1であるときを考えて、線分の内分に内積の意味をひそませたいと半日考えていますが、いいアイデアを思いつきません。 それと、行列の積にも、内積の意味をひそませたいと半日考えていますが、いいアイデアを思いつきません。
- eatern27
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>行列の積とベクトルの内積には、もともと定義された根拠は違っても、表示式を知ってしまうと「異母兄弟」みたいなものを感じざるをえないのですが、 そういう事を考えた事はありませんが、関係あるとしたら、双対空間とかの話でしょうかね。 ただ、ベクトルの内積も、線形写像なので、ベクトルの内積が行列の言葉でかけるのは、当然と言えば当然でしょうか。
お礼
本当にお世話になります。 別の方の回答について考えていました。 その方へのお礼でも似たことを書きましたが、 たとえば、平面上の直線の式を考えます。 いろいろな表示式がありますが、 a(x-x_0)+b(y-y_0)=0 とかくと、それを内積の概念(角度の概念)から眺めると、法線ベクトルが(a,b)というのが見えてきます。 また、直線の式を新しく標準形X/a+Y/b=1 とかくと、それを行列とベクトルの積の概念(線形変換の概念)から眺めることができます。 元の平面に基底(1,0)と(0,1)を取り、それらを端点とする線分を、y:xの比に内分する点(x,y)をとります。このとき、x+y=1です。つぎにそれを、2x2行列 (a 0) (0 b) で移すと、(1,0)は(a,0)に移り、(0,1)は(0,b)に移り、点(x,y)はそれらをy:xの比に内分する点(ax,by)に移ります。それを新しく(X,Y)と書くと、X/a+Y/b=1となります。 とまり、直線の式で用いられたa,bは線形変換を表す行列に関係します。 つまり、ベクトルの内積(射影や角度の概念)と、 行列とベクトルの積(一次変換の概念)とはなんらかの関連があるように思えるのです。 さらに、教えていただいたように、ベクトル同士の内積a・bは、行列としての積(x^†)yでかけるし、行列としての積は、「行列を横ベクトルや縦ベクトルと表示したときの内積」を用いてかけます。 やはり双対空間かキーワードでしょうね。かじった程度なので、再度勉強しなおします。
- kabaokaba
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とりあえず,数学の方から. 線形写像というのがあります. 高校までの教科書にでてくる 相似・拡大・対称・鏡映・回転なんて 変換はすべて線形写像です. これは x'=p x + q y y'=r x + s y という形です.これを「行列の積」で書くと X' = B x B=( p q ) ( r s ) という形で書けます. 説明の都合上,わざとBから書いてます. 次に,X'をもう一回変換したいとします (回転した後に拡大とかそういう操作です) 同じように書くとすると X'' = AX' A=( a b ) ( c d ) , という形になります. そうなると,二回計算するのは面倒なので 一回で済ませたい. X' = BX X''= AX' なんだから X'' = AX' = A(BX) = (AB)X つまり X'' = (AB) X という風にしたいわけです じゃあ,ABはどういうもの?となるわけです. 地道に x'=p x + q y y'=r x + s y を x''=a x' + b y' y''=c x' + d y' に代入してみてください x'' = (ap+br) x + (aq+bs) y y'' = (cp+dr) x + (cq+ds) y となります.つまり AB=( ap+br aq+bs ) ( cp+dr cq+ds ) としておくと, X''=(AB)Xとできてしまうわけです しかも,行列同士だけでなく ベクトルとの積も帳尻があい, 応用が広がります #一番の応用は一次の連立方程式です 更に交換法則以外の計算規則までOKで かなり計算しやすいものになります #上の概略でABの順序やとか #基底変換か成分だけかとか #そういうところは突っ込まないでくださいね(笑) ======================= 工学的にみればこういう感じなんですかね >ベクトルAを原因、ベクトルBを結果として、Mをその間の因果関係行列と考えると、 純粋数学の方からみると 線形代数で定義されている「行列の積」が うまく適用できるように定義したの?という 感じなんですよねぇ・・・ そもそも「因果関係行列」って何?ということになって BとAを結びつける関係は本当に 「線形一次」?それとも「一次近似」しただけ? とかいろいろ考えてしまいます. そこまで考えると・・・ 複数の値から複数の値への関数を考えた際に その関係の一次の部分だけを抽出すると うまく行列の積の定義に収まるというところでしょうか 話を簡単にするために, 二変数で考えます. またあえて,二次元から三次元にしてみます (x,y) -> (f,g,h) という写像で,f, g, hは以下のように 展開できるとします. f, g, hは少なくとも連続微分可能か 何らかの方法で(実験的にでも) 一次以上で近似できれば十分です f(x,y) =a10 x+ a01 y + a20 x^2 + a11 xy + a02 y^2 +・・・ g(x,y) =b10 x+ b01 y + b20 x^2 + b11 xy + b02 y^2 +・・・ h(x,y) =c10 x+ c01 y + c20 x^2 + c11 xy + c02 y^2 +・・・ こんな感じです. それで計算させようとする場合, 精度も関係しますが, 次数の高い項はばっさり無視してしまうことがあります そこで今回も一次の部分だけ見ます. すると f(x,y)=a10 x+ a01 y g(x,y)=b10 x+ b01 y h(x,y)=c10 x+ c01 y となりますが,これはまさに 行列の積ですよね. #(3,2)行列に(3,1)行列(ベクトル)の積
お礼
丁寧にありがとうございます。 線形変換、 y = B x と z= A y があったときに、 その合成z=(AB) x を表す行列ABを定めるために、行列の積が定まるのは理解できます。 しかし、行列とベクトルの積(BxやAyなど)も帳尻があうというのが腑に落ちません。 一般に、yにAという作用を施すとき、 Ay と書くほかに、 y^A と書くこともあると思います。 たとえば、2回微分は、 D(Dy) と書くほかに、 (y')' と書くなど。 行列とベクトルの積もうまく定まることになる原因はなんなのでしょうか?
- ken_dosanko
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純粋数学者はなんというか知りませんが(純粋数学には興味もありませんが)、実用的な理由は簡単です。 最近線形代数が重要視されているのは、コンピュータの発展と大いに関係があります。行列はそのための便利な手段です。 ベクトルAを原因、ベクトルBを結果として、Mをその間の因果関係行列と考えると、 B=MA は、原因と結果を結ぶ式になります。これは便利な式で、原因を10個用意して、結果10個を求める場合は、Mは10x10の正方行列になります。 「なんの理由、なんの目的があって...」は、「原因から結果を予測するため」です。
お礼
ご丁寧な解説に大感謝いたします。 いちおうはスッキリしましたが、 http://www.fbc.keio.ac.jp/~hkomiya/education/lecture/bisekibun-2-2005-1.pdf の1ページ目を見てみると、 行列の積は、「成分を横ベクトルや縦ベクトルと表示したときの内積」であらわされています。 僕の別の投稿事項に、「ベクトルの内積、どうしてそのように定義するの?」がありますが、行列の積とベクトルの内積には、もともと定義された根拠は違っても、表示式を知ってしまうと「異母兄弟」みたいなものを感じざるをえないのですが、そこらへんの理由をご存知であれば、ご教授いただけると幸いです。