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チェーホフの良さって何でしょうか?
チェーホフの良さって何でしょうか?
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>チェーホフの良さって何でしょうか? ⇒チェーホフといえば、確かにかなりの変わり種ですから、人によって見解が分かれるかもしれませんが、私は大いに、あるいは百歩譲っても、かなり評価できると思います。以下、その理由をジャンルに沿って順に述べます。 @戯曲・劇作:1887年に書かれた初の本格的な長編戯曲『イワーノフ』は翌1888年の初演の評判こそ良くなかったが、2年後にサンクトペテルブルクの大劇場での再演は好評を博したという。1895年には長編戯曲『かもめ』を執筆した。この作品も初演は大失敗に終わったが、1898年のモスクワ芸術座による再演は大成功を収めた。 チェーホフは最晩年の作品である戯曲『かもめ』、『三人姉妹』、『ワーニャ伯父さん』、『桜の園』の作者として、伝統的な戯曲と対極を成す新たな領域を切り開いた劇作家とされる。これらの作品の与えたインパクトの多くは、例えば『かもめ』の終幕に代表される巧みなアンチクライマックス(漸降法・竜頭蛇尾:期待外れ)による。井上ひさしは、チェーホフは演劇革命を起した人物だとし、「一に主人公という考え方を舞台から追放した、二に主題という偉そうなものと絶縁した、三に筋立ての作り方を変えた」と分析した。 @短編:チェーホフは、40編近くにのぼる短編小説を書いている。初期はおもにユーモア短編を量産したが、ある評論家から「笑い話風の短編はせっかくの才能を浪費するものだ」と警告されたのを機に文学的な作品の創作に取り組むようになった。1892年には、「妻」、「六号室」、「恐怖」などを連作したが、このうちの「妻」にヒントを得て、」トルコ映画『雪の轍』が制作された。 @映画化:上述の『雪の轍』以外にも、長編小説や戯曲なども含め、チェーホフの作品を元に制作された映画では、『狩場の悲劇』、『黒い瞳』、『42丁目のワーニャ』、『8月の誘惑』などがある。このうちの『黒い瞳』(原作題名『小犬を連れた貴婦人』)は、露伊(マルチェロ・マストロヤンニ)合作で、スペインの歌手がその主題歌を歌って世界に広めるなど、その原作・映画・主題歌が世界を席巻した。 @影響:チェーホフの創作には、評論家の鋭い分析に対する挑戦的な文学スタイルがあるが、1920年代からイギリスではそういうチェーホフの戯曲が人気を博し、今日ではイギリス演劇の代表的なものとなっている。またアメリカ演劇界は写実的な演劇を上演する演出技巧の影響を経た後、それに続く形でチェーホフの影響が次第に強くなり、テネシー・ウィリアムズをはじめ数々の後継者を生んだ。チェーホフの散文もまた大きな影響を与えたが、その代表格としてアメリカの作家のレイモンド・カーヴァーや、イギリスのV・S・プリチェットらが挙げられる。日本では明治後期の1903年に瀬沼夏葉によって日本語訳が始まり、チェーホフの生前にすでに6篇が日本語に訳されている。筋らしい筋のないその作品スタイルは、私小説を主体とする近代日本文学でも当初から高く評価され、大きな影響を与えた。具体的な例としては志賀直哉『剃刀』がチェーホフの「ねむい」から、井伏鱒二『山椒魚』が「賭」から、太宰治『斜陽』が「桜の園」からそれぞれ着想を得たとされている。 以上が、チェーホフの評価されるところだと考える次第です。
お礼