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ドイツ語の機能動詞構造につきまして。
1.ドイツ語の機能動詞構造(機能動詞結合)(Funktionsverbgefuege) は、類義の単純な動詞と、意味がどう違うのでしょうか。 例えば、 Hilfe leisten は helfen と、また、 auf etwas Ruecksicht nehmen は etwas beruecksichtigen と、意味がどう違うのでしょうか。 2.ドイツ語の機能動詞構造は、ドイツのお役所言葉で良く使われるのでしょうか。 3.もし、そうであれば、どういう意味上の理由で、お役所言葉で良く使われるのでしょうか。
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機能動詞(Funktionsverb)とは、ある動詞がほかの語と結びついて、その動詞が単独で本動詞(Vollverb)として使われる場合とは違う意味に変わった場合の名称です。特に多いのは前置詞句や4格目的語との結合で、その組み合わせ全体を機能動詞結合(Funktionsverbgefüge)と呼びます。使われる前置詞はauf, aus, außer, bei, hinter, in, um, unter, zuなどで、特に多いのがinとzuです。まれに、1格、2格、3格と結びついた機能動詞結合もあります。 1格 eine Abrechnung erfolgt = es wird abgerechnet 2格 der Meinung sein = meinen 3格 jn. einer Prüfung unterziehen = prüfen ただし、機能動詞結合と、前置詞句や4格目的語と結びつけられた普通の動詞との間に境界線を引くことは困難とされます。機能動詞結合であるかどうかを認定するための基準はいくつかありますが、説明が長くなってしまうので、ここでは割愛します。 本動詞のみでの表現と、機能動詞結合での表現には、意味の違いが出る場合もあれば、出ない場合もあります。また、意味そのものには違いがなくても、より正確な限定を表して、本動詞のみの表現とは違う役割を果たします。 機能動詞結合は、ある意味、成句、慣用句のようなものの総称ですので、機能動詞結合というだけでお役所的ドイツ語ということにはなりません。上に挙げたder Meinung seinという機能動詞結合も、ich bin der Meinung, dass…のように、日常的に使われます。「どうぞお座りください」というごく日常的な表現、「Bitte, nehmen Sie Platz!」という言い方もそうです。nehmenは、単独で本動詞、Vollverbとして使われるときは「取る」という意味ですが、Platzという4格目的語と結びつくことで機能動詞、Funktionsverbとなり、「座る」という意味になります。したがって、Platz nehmenというごく日常的な表現も、文法上の分類としては機能動詞結合、Funktionsverbgefügeに入ります。「Bitte, nehmen Sie Platz!」と、「Bitte, setzen Sie sich!」の意味は全く同じです。「in Ordnung bringen(整理する)」や「eine Antwort geben(返答をする)」も日常語ですが、「zur Aufführung gelangen(上演にこぎつける)」や「eine Entwicklung nehmen(発展する)」は高尚な文体です。 Hilfe leistenの場合は、helfenとは若干違ってきます。leistenという動詞のもともとの意味が「成し遂げる」ですから、Hilfe leistenは、helfenと比べると、やや「重要な援助」という意味合いを帯びます。finanzielle Hilfe leisten(経済的援助をする)やerste Hilfe leisten(最初の援助をする)、einem Kranken Hilfe leisten(病人を助ける)のように使い、公的、形式的表現にもなるので、「子供の算数の宿題を手伝う」程度の場合にはあまり使いません(Ich leiste meinem Sohn bei Mathe-Aufgaben Hilfe.より、Ich helfe meinem Sohn bei Mathe-Aufgaben.が普通)。 機能動詞結合が意味上、または伝達機能上果たす役割がいくつかあります。まず、動詞単独で表現する場合よりも、そこで起きていることが「継続的」であるか、「始まるところ」もしくは「状態の変化」であるか、「作用」であるかを明確にします。 Vollverb: sich bewegen 動く Funktionsverbgefüge: in Bewegung sein 動いている(durativ 継続) in Bewegung kommen 動き始める(inchoativ 起動) in Bewegung setzen 動かす(kausativ 作為) それから、機能動詞結合は、普通に本動詞として使われる動詞や形容詞では表現できない場合、つまり、ドイツ語の動詞・形容詞の体系に発生する「隙間」がある場合、それを埋めて、表現の可能性を増やすことに使われます。以下の機能動詞結合が表現する内容は、単体で同じ意味を表せる動詞や形容詞がありません。 zur Vernunft bringen, auf den Gedanken bringen, in Auftrag gehen, zu Ansehen gelangen, zu der Ansicht gelangen, ins Gerede geraten, in Verzug geraten, in Frage kommen, in Gang kommen あるいは、機能動詞結合において、同じ意味の本動詞では要求される目的語を挙げないことによって、より一般的な意味を表現することができます。beanspruchen(要求する)という動詞を使うときは、何を要求するか、その目的語を書かないと文が成立しないので、「Sie beanspruchen(あなたは要求する)」とだけ言うことはできませんが、機能動詞結合を使えば、「Sie erheben Ansprüche.」ということができます。 また、複数の行為、できごとを列挙する場合、本動詞を使うと、それぞれが違う前置詞や格を必要としますが、機能動詞結合で統合することができます。 Vollverbだけを使うと: Wir klagen ihn an, werfen ihm etwas vor und beschweren uns über ihn. Funktionsverbgefügeを使うと: Wir erheben Anklage, Vorwürfe und Beschwerde gegen ihn. 機能動詞結合の中には、付加語を加えることによって、内容をより詳しく性格づけることができるものがあります。 arbeitenをVollverbとして使った場合: Der Assistent hat fleißig gearbeitet. leistenというFunktionsverb使い、付加語によってより詳しく: Der Assistent hat eine fleißige, nützliche und für das gesamte Team unabdingbare Arbeit geleistet. さらに、機能動詞結合を使った場合、伝達の視点を変化させ、陰影をつけることができます。本動詞を使った場合、現在形なら文中の2番目の位置にきますが、同じ意味の名詞をほかの機能動詞と使えば、その名詞を文末に置くことができるので、伝達内容上重要な語がそれに即した位置に来ることが可能です。 Das behinderte Kind entwickelt sich gut.(その障害児はよく発達している。) この文の、「発達している」という、新たに報告すべき内容を文末に置くことができます。 Das behinderte Kind nimmt eine gute Entwicklung. あるいは逆に、文頭に出して強調することもできます。 Eine gute Entwicklung nimmt das behinderte Kind. 上に挙げた機能動詞結合の様々な役割を見ると、日常語でも重要な役割を果たすことはわかりますが、類義の本動詞と比べて、より厳密な意味に絞れることや、伝達内容の重要さに即した語順、陰影を可能にすることから、正確な表現が必要となる専門的、学術的文章やジャーナリズム語、役所言葉で多用される傾向にあることも確かです。こういう文章においては、論理的関係を明示するために、前置詞が重要になります。たとえば、etwas berücksichtigenとauf etwas Rücksicht nehmenの間には、冒頭に触れたhelfenとHilfe leistenの場合のような意味の差はありませんが、etwas berücksichtigenと目的語を4格で示すより、aufという前置詞で示した方が、論理的により正確、明確になるということがあります。機能動詞結合には、前置詞句と結びついたものがたくさんあるので、当然多用されます。こういう文章は、動詞表現よりも名詞表現を多用することから、名詞的文体(Nominalstil)とも呼ばれますが、この機能動詞結合の濫用は、文の理解をかえって難しくし、固い表現になるため、日常的な文においてはなるべく避けるようにと注意が喚起されることがよくあります。ドイツの政党が作成した文章表現の指針や、週刊誌がジャーナリストに示す方針でも、なるべく避けるようにと書かれていることがあります。しかし、機能動詞結合の表現の可能性はそれなりに重要だということで、一方的な排除には反対する立場もあります。
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- Tastenkasten_
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Wildgenの"Kognitive Grammatik"という書物を検索してみました。図のページは見られたのですが、その前のページのプレビューができないようになっていたので、内容は把握できませんでした。認知言語学というのでしょうか、私は言語研究者ではないので、この書物のこの図で、wandernとeine Wanderung machenの意味の違いをどのように特徴づけようとしているのかはわかりませんが、どちらも複数だけを主語にするわけではないので、カプセルの中の人型が三つになっていることはあまり関係がないような気がします。ドイツ語を使うようになって30年ほどになりますが、あくまでもドイツ語のニュアンスという点だけから言うと、私の感覚では、eine Wanderung machenの場合は、「ハイキングをする」という事実を客観的に伝えるのに対し、wandernは、「ハイキング」という行為そのものに直接注意が向くように思います。たとえば、「来週私たちはハイキングをします」という場合、「Nächste Woche machen wir eine Wanderung.」と言えます。そのあとに、場所等の情報を付け加えることもできますが、ここで切ってもおかしくありません。しかし、同じ内容をwandernを使って「Nächste Woche wandern wir.」と言ってここで切ってしまうと違和感があります。このあとに、場所等の具体的な情報がつながる方が自然です。逆のケースで考えてみても同じことが言えるように思います。たとえば、「A地からB地へハイキングする」と具体的な内容を言う場合、「Wir wandern von A bis B.」は普通に使う言い方ですが、「Wir Machen eine Wanderung von A bis B.」という言い方はまず見られません。一つの文章の中にwandernとeine Wanderung machenの両方が使われている場合は、最初にeine Wanderung machenを使って話を切り出し、具体的な内容になるとwandernを使っているように見えます。そういう印象とともに"Kognitive Grammatik"の図を見てみると、イメージとしてはわかる気がします。 このような回答が参考になるかどうかわかりません。ドイツ語のネイティヴスピーカーにお尋ねになる方が確実かもしれません。
お礼
またまた懇切ご丁寧な御回答を誠に有難う御座いました。大変に勉強になりました。
お礼
懇切ご丁寧な御回答を誠に有難う御座いました。
補足
Wildgen: "Kognitive Grammatik" に、wandern と eine Wanderung machen の違いを示す図として、wandern は、Wandererたちの一人一人を際立たせて(プロファイルして)描いてあり、eine Wanderung machen は、Wanderer たち全員の Wanderung 全体を際立たせて描いてある(説明文でも Wanderung 全体をカプセルに入れたように認識すると書いてある)のですが、違いが良く分かりません。違いをお教え頂けますでしょうか。