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量子化学の共鳴積分について
今,2原子分子の結合について考えています. 原子AとBが結合することを考えて,1電子がAにのみ存在する状態をφA,Bにのみ存在する状態をφBとします.このとき,以下のような共鳴積分βの関係式が出てきました. β = ∫φA* H φB dV = ∫φB* H φA dV ここで,Hはハミルトニアン演算子です. 後半の等式 ∫φA* H φB dV = ∫φB* H φA dV (1) がなぜ成り立つのかが分かりません.式(1)の左辺を内積で表して (φA, H φB) = (H φA, φB) = (φB, H φA)* と変形しました.ここではHのエルミート性を用いています.しかしこれは,式(1)の右辺の複素共役になってしまいます. 共鳴積分が実数であるなら,式(1)は成り立つと思いますが,共鳴積分が実数である理由がわかりません. 共鳴積分が実数である理由,上の式変形の誤り,もしくは他の考え方をご回答いただけると幸いです.
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- siegmund
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大学で物理の研究と教育をやっています siegmund です. 分子軌道法周辺は専門ではありませんのでそのつもりでお読みください. ∫φ_A* H φ_B dV = ∫φ_B* H φ_A dV (1) はおっしゃるように一般には成り立ちません. > 共鳴積分が実数であるなら,式(1)は成り立つと思いますが,共鳴積分が実数である理由がわかりません. そのとおりで,実数とは限りません. 波動関数は位相(つまり e^(iθ) 倍)はどうでもよいので, もし ∫φ_A* H φ_B dV が実数としても, 例えばφ_A を iφ_A に変えれば実数でなく純虚数になってしまいます. 重なり積分ではなく ∫φ_A* H φ_A dV (両方とも φ_A) なら任意の位相因子は消えてしまいますので, こういう問題は起きません. つまり,H を φ_A と φ_B を基底に取って2行2列の行列で表示したときに, ∫φ_A* H φ_A dV の類は対角成分,∫φ_A* H φ_B dV の類は非対角成分になっていますが, 対角成分はきちんと決まるのに対し,非対角成分は位相因子が不定なのです. β = ∫φ_A* H φ_B dV = ∫φ_B* H φ_A dV と書かれていたのであれば, その積分が実数になるようにφ_A と φ_B の位相関係を決めているのだと思われます. 分子軌道法ではしばしば暗黙の内にこういう選択がなされています. また,∫φ_A* H φ_B dV を実数になるように選んだとしても符号の自由度がありますから (+と-),その選び方によりこの積分は正にも負にもできます. したがって,分子軌道法でこういう積分の正負だけ見ていろいろなことを判定してはいけません. ちょっとネット検索してみましたら, http://www.rsi.co.jp/kagaku/cs/pio/pio_files/kaisetsu.pdf に軌道の符号の選び方の注意が載っていました. oze4hN6x さんのご回答で, (φA+iφB, H(φA+iφB)) = λa+λb+i{(φA, H φB)-(φB, H φA)} が実数であることから i の係数(つまり { } 内)がゼロとなっていますが, { } 内は純虚数でもよいです. これは H のエルミート条件に他なりません.
- oze4hN6x
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No. 1です。すみません、見当違いのことを書いてしまいました。 正しくは以下です。 まずは、エルミート演算子 H について (φA, H φA) = λa (φA, H φB) = λb としたときのλa, λbが実数であることを示します。 (φA, H φA) = (H φA, φA) = (φA, H φA)* ですから、λa = (λa)* つまり、λaは実数です。(同様にして λb も実数です) さて、これが任意のφA, φB について成り立つことを踏まえると、 (φA+iφB, H(φA+iφB)) = λa+λb+i{(φA, H φB)-(φB, H φA)} の右辺もまた実数であることになります。したがって、 (φA, H φB) = (φB, H φA) となります。
- oze4hN6x
- ベストアンサー率65% (26/40)
複素関数の内積の定義の問題ですね。一般に複素関数f, gの内積(f,g)は (f,g)=∫f* g dV です。つまり、 ∫φA* H φB dV = (φA, H φB) ∫φB* H φA dV = (H φA, φB) ということですから、後はおわかりでしょう。
補足
ご回答ありがとうございます. > ∫φB* H φA dV = (H φA, φB) この式なのですが,H φAとφBの順序がなぜこのようになるかが分かりません > (f,g)=∫f* g dV にあてはめてみるなら, f = φB g = H φA なので, ∫φB* H φA dV = (φB, H φA) ≠ (H φA, φB) となるのではないでしょうか?
お礼
ありがとうございます. 返事が遅れてしまい申し訳ありません. 「暗黙の了解」で話が進んでいると,初心者には厳しいですね. ご回答のように扱うことができる,ということを頭に入れて勉強していこうと思います. これらもよろしくお願いします.