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まだマウスから学ぶべきことはある
- マウスをヒトの疾患のモデルとして考えることがあるが、遺伝子操作したマウスの治療方法が臨床で失敗することが多い
- 異なる遺伝子系統のマウスでは欠損遺伝子の機能がどう補償されるかが異なるため、マウスの遺伝子操作の意義について疑問が残る
- ウイルスによる遺伝子編集でも同じ変異マウスでも異なる結果が出ることがあり、再現性の確保が課題となっている
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(1) 「Too often, however, scientists consider them models of human disease」 too oftenなので、否定的な内容だと思います。considerは第5文型をとって「AをBとみなす」です。訳は「しかし、科学者たちはそれらをヒトの疾患のモデルとみなしすぎるきらいがある。」 「as if a manipulated gene or two could actually recapitulate a disease in a different species.」 このasは「as if」の一部です。「ひとつかふたつの遺伝子操作が本当に異なる生物種の疾患を再現するかのように。」 「Therapies that ‘cure’ a mutant mouse but then fail in the clinic, bring the mouse into disrepute」は、主文が「Therapies bring the mouse into disrepute」で、「that ‘cure’ a mutant mouse but then fail in the clinic」はtherapiesを修飾しています。モデル動物は治せるのに実際の患者は治せない治療法というのが、そのモデル動物の評判を落とすと言っています。「as recently lamented by Steven Perrin」ですが、おそらくこの記事の直前にSteven Perrin氏がどこかでこのことについて嘆くコメントを発表したと推測します。「who has witnessed the phenomenon too many times in relation to this disease」の「the phenomenon」は主文の「Therapies that ‘cure’ a mutant mouse but then fail in the clinic, bring the mouse into disrepute」を指します。つまり訳は「変異マウスは『治す』が臨床ではうまくいかない治療法によって、モデルマウスの評判が貶められている。この現象を何度も目にしているSteven Perrin(マサチューセッツ州ケンブリッジ、筋萎縮性側索硬化症治療法開発研究所)も最近嘆いていた。」 (2) 「this makes a big difference to whether the function of a missing gene will be compensated for.」 「compensate for」は生物分野では「(遺伝子操作による機能喪失を)補う」というニュアンスです。訳は「このことは、失われた遺伝子の機能が補われるかどうかに大きな影響を与える」となります。前後がないので推測ですが、マウスの系統や遺伝子操作方法の細かな違いによって、失われた遺伝子の機能が補われうるかどうかに大きな違いが生じる、と言いたいのではないでしょうか。 (3) 「This is why it is so desirable to have repositories that guard the health and genetic quality of the deposited mice.」 「これこそが、デポジットされたマウスの健康状態と遺伝学的品質を守るレポジトリの構築が望まれる理由である。」 「It is also why the IMPC is so important」 「それはまた、IMPCが重要である理由でもある」 「— by detailing the function of each gene in a standard genetic background, it will provide a necessary source of information for researchers for many decades, and help in the effort to ensure that biological results are reproducible.」 「すなわち、標準的な遺伝学的バックグラウンドにおけるそれぞれの遺伝子の機能を詳述することにより、IMPCは長期間にわたり研究者に対して必須な情報源を提供し、生物学的な結果の再現性を担保する努力を補助するだろう。」 訳は以上のような感じです。以下は個人的感想も含みます。もしかしたら元の文章とは全く関係ないかもしれませんが、ご参考になれば幸いです。 ノックアウトマウスやトランスジェニックマウスなどの疾患モデルは山ほど存在しますが、確かに表現型の再現性が乏しいことがあります。同じ遺伝子を同じように操作しているのに、必ずしも同じ結果が得られないのだとすれば、単一の疾患モデルに基づいて治療法の開発を進めることは危険です。なぜなら、その治療法はある特定のバックグラウンドのマウスでのみ有効であるとか、そういう可能性があるからです。 なので、レポジトリを作って古今東西作製されたモデルを集め、ある遺伝子の破壊で生じる表現型のうち、何が共通していて、何が共通していないのか、という知識を共有することが、「モデル動物→臨床試験」の間にある壁を乗り越えるのに大切だと思います。
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>(1)Too often, however, scientists consider them models of human disease, as if a manipulated gene or two could actually recapitulate a disease in a different species. Therapies that ‘cure’ a mutant mouse but then fail in the clinic, bring the mouse into disrepute — as recently lamented by Steven Perrin, of the Amyotrophic Lateral Sclerosis Therapy Development Institute in Cambridge, Massachusetts, who has witnessed the phenomenon too many times in relation to this disease (Nature 507, 423–425; 2014). >しかし、常日頃、科学者はヒトの疾患のモデルをマウスで考える。一つもしくは二つの遺伝子操作したマウスが異なる種においても実際にその疾患を再現するかといったように。 >変異マウスが「治る」治療方法のほとんどが臨床では再現性がなく失敗に終わり、ケンブリッジの筋委縮性側索硬化症治療施設代表でこの疾患に関する大半の事象の目撃者であるStevenがそのことを惜しむようにマウスは使いものにならないと烙印を押される。 「しかしながら、まるで一つか二つの操作された遺伝子で、二つの種における(共通した)ある疾病を表せると言わんばかりの態度で、科学者はそれら(=変異マウス)をヒトの疾病のモデルになると考えることが多過ぎる。変異マウスでは成功したが、ヒトへの臨床では失敗に終わった治療法があると、変異マウス(という方法)は不評に晒される。マサチューセッツ州ケンブリッジにある筋萎縮性側索硬化症治療開発研究所のSteven Perrinは最近、この疾病(=筋萎縮性側索硬化症)に関して、あまりにも多く、そのような現象(=変異マウスの不評)を目にし、そう(=科学者が安易に同じ遺伝子ならマウスとヒトで同じことが起こると考えること)嘆いた。」 >as 以降がどう訳せばいいかわかりませんでした。 「~がしたように」の用法で、Steven Perrinがマウスでの成果がヒトでも同じくうまく行くと暗に考える傾向を批判したという英文です。簡略化した受動態、もしくは過去分詞句の後置形容と考えて訳すといいのではないかと思います。 >(2)this makes a big difference to whether the function of a missing gene will be compensated for. >このことは(違う研究室で作られたマウスは当然異なる遺伝子系統であること)一つの欠損遺伝子が本当にその原因遺伝子となるかどうかという大問題を形成している。 「このこと(=研究室ごとで遺伝系統の異なるマウスなので、同じ実験で結果が異なる)により、欠損させた遺伝子の機能が(他の遺伝子により)補償されるか否かに、大きな差異が出る。」 例えば、ある遺伝子セットにおいて、ある生体機能がたった一つの遺伝子で行われていれば、その遺伝子の欠損は生命維持等に決定的な影響があります。しかし、他の遺伝子セットにおいて、その遺伝子に関する代替機能を持つ遺伝子があれば、遺伝子欠損がさしたる影響がないということも起こりえます。 すると、ある研究で「この疾病の原因遺伝子はこれだ」とされた結論が、他の研究所で追試すると「そのようなことは起こらない」と否定する結論が出てくる、ということも起こります。 さきほどの「たった一つや二つの遺伝子で」云々と絡めて考えれば、生物という複雑系に対して、自然科学でよく使う素朴な還元主義(=現象を単純な要素まで切り分け、一つ一つを理解すれば全体も分かるはず、という態度)では、うまく行かないことが多い(、とはいえ、個々の研究結果もないがしろにはできない)、といったことを言いたいように見えます。 >This is why it is so desirable to have repositories that guard the health and genetic quality of the deposited mice. It is also why the IMPC is so important — by detailing the function of each gene in a standard genetic background, it will provide a necessary source of information for researchers for many decades, and help in the effort to ensure that biological results are reproducible. 「このこと(≒変異マウスの遺伝系統の差異による個々の研究の混乱)が、保有するマウスの健全性と遺伝的品質を保証するリポジトリを持つべき理由である。そのことはまた、IMPCが非常に重要であることも物語る。それはすなわち、標準的な(≒健康な個体の)遺伝的背景における各遺伝子の機能の詳細を明らかにすること(≒そういうマウス等をきちんと管理して保持すること)により、今後何十年も研究者にとっての必要不可欠な情報源となり、生物学的研究結果の再現性を確実にするための努力に対する一助となるだろう。」 ウイルスが遺伝子改変することがあるのはよく知られていますが(進化論に適用しようと試みることもある)、そんなことが起きるマウスではthe health and genetic qualityが保証されているとはいえません。ウイルスの存在に気が付かない、あるいはウイルスの影響を無視してしまうと、同じ遺伝系統のはずのマウスでも、実験結果が異なってしまうでしょう。 どういうマウスなのか、が詳細に渡って分かっているマウスを使うべきであるわけですね。そういうマウスを常時ストックして、必要とする研究者に供給できれば、実験結果の再現性が高くなりますし、異なる結果を得た場合の分析にも役立ちます。といったことを言いたいように思われます。
お礼
還元主義だとか二分法に傾向しがちなものが科学の影を生んでいるという文章を以前に読んだことをご指導をいただいた内容を拝読して想い返しました。 またmissng geneの文章ではまったくの勘違いをしていたのでご指導を頂いたおかげで手前との関係、そして文章の内容がわかりすっきりしました。 いつも本当にありがとうございます。
お礼
生物分野での使い方における compensated for のご説明などこのような形でご指導を賜れるのが本当に嬉しく存じます。 (3)はby 以降がお手上げでしたのでお陰様でこの分の内容理解がようやくできました。 いつもありがとうございます。