古典の大鏡、時平と道真の敬語の質問です。

質問

あさましき悪事を (1)申し 行なひ (2)給へ りし罪により、この大臣の御末は (3)おはせ ぬなり。
さるは、大和魂などは、いみじく (4)おはしまし たるものを。

「世間の過差の制きびしきころ、左大臣の、一の人といひながら、美麗ことのほかにて (5)参れ る、便なきことなり。はやく (6)まかり出づ べきよし (7)仰せ よ。」

この文の(1)～(7)までの語句
i 尊敬語、謙譲語、丁寧語のどれか
ii 誰から誰の敬意か

というのを知りたいのですが、尊敬語と謙譲語の見分け方はどうすればいいのでしょうか。
また誰から誰の敬意というのも全くわかりません・・・・。

解答お願いいたします。

回答No.3

fumkum · ベストアンサー

ＮＯ２です。追加を。

次に会話文の部分になりますが、説明の都合上、引用が長くなりますが。
『延喜の世間の作法したためさせ給ひしかど、過差をばえしづめさせ給はざりしに、この殿、制を破りたる御装束の、ことのほかめでたきをして、内に参り給ひて、殿上にさぶらはせ給ふを、帝小蔀より御覧じて、御気色いとあしくならせ給ひて、職事をめして、「世間の過差の制きびしきころ、左大臣の、一の人といひながら、美麗ことのほかにて (5)参れ る、便なきことなり。はやく (6)まかり出づ べきよし (7)仰せ よ。」とおほせられければ、承る職事はいかなることにか』
会話文の場合、会話文の直前直後に話し手のヒントになる言葉があることが多いです。この文章の場合、直後の「おほせられ」がヒントになります。「おほせられ」は「言ふ」の尊敬語ですが、同じ意味の尊敬語の「仰す」より尊敬度が高く、一般には天皇に用います。
また、直前には、「帝」から続いて、「御覧じ」「御気色」「せ給ひ」「めし」など天皇に用いる表現が続いています。「帝」からの文を訳しても、会話は帝と考えられます。そして、会話の受け手は、会話文の後に、「承る職事は（「承る」は「聞く」の謙譲語）」とありますので、職事になります。
となると、５~７の敬語表現の、【誰から】は会話文なので、話し手は「帝」になります。
＊「おほせられ」は、尊敬語「仰す」に、尊敬の助動詞「らる」が付いて尊敬語が重なって連語となり、成立しています。
＊「せ給ひ」は、尊敬の助動詞「せ」の連用形に、尊敬の補助動詞「給ひ」が付いたもので、尊敬表現が重なっているので二重敬語と言い、また、天皇などの最高身分に用いるので最高敬語とも言います。ただ、この作品である『大鏡』は、摂関クラス（時平も含まれる）にも二重敬語を使うことが多いので、注意が必要です。
さて、会話文の中にも当然主語があります。ここの会話文で人名が出てくる部分は、「左大臣の、一の人といひながら、美麗ことのほかにて (5)参れ る、便なきことなり。」の部分になります。この部分は、前文の「この殿、制を破りたる御装束の、ことのほかめでたきをして、内に参り給ひて、」と共通点を持っています。「この殿」と「左大臣」、「御装束の、ことのほかめでたきをして」と「美麗ことのほかにて」、「内に参り」と「参れ る」の共通する内容、訳からも主語は「左大臣」となります。「参れ る」の問題の解答のポイントは、共通する内容です。最初に「内に参り」とあります。格助詞の「に」は方向性の先＝ここでは行く場所を表しますが、「内」は、宮中・内裏・天皇などを表します。つまり、「参れる」（行く・来の謙譲語）の【誰へ】は内裏・天皇ということになります。
「はやく (6)まかり出づ べきよし (7)仰せ よ。」のセンテンスですが、６が謙譲語下二段動詞終止形、７が尊敬語下二段動詞命令形ですが、問題の１，２のように一人の人物の動作によるものではなく、別々の人物の動作ということになります。
＊問いの１、２のように、一人の動作による謙譲＋尊敬の場合、尊敬の部分は補助動詞であること多く、謙譲語と尊敬語が直接接続しています。６，７の場合、間に「よし」という名詞が間に挟まっています。
６の「(6)まかり出づ」は、この会話文の後に、「いそぎまかり出で給へば」と同じような内容の部分があります。両方を比較しながら考えると、「(6)まかり出づ」の動作の主体が「左大臣」だと分かってくると思います。このような方法を使いながら訳すと、「早々に（内裏から）退出せよとの趣旨を、命ぜよ（申し伝えよ）」となります。６は大臣の動作に謙譲表現ですから、当然受け手は身分が大臣以上ということで、天皇となります。７は大臣に退出しろと命令するのですから、動作の主体は天皇になります。天皇の会話で、天皇が自分自身の動作に尊敬語を使うことを、「自敬表現」と言い、敬意の受け手（動作の主体も）は天皇ということになります。（謙譲語の場合も自敬表現とする考え方もあります。）また、天皇が、自分の動作に尊敬語を用いたり、相手の自分（天皇）に対する動作に謙譲語（敬意は天皇に向かう）を用いることを「自尊敬語」と言うこともあります。
＊天皇が会話文の話し手の場合、尊敬語でも謙譲語でも、【誰から】は当然天皇、【誰へ】も天皇となることがほとんどです。
敬語に関するページ（最後の方に天皇から天皇への敬意の例があります）
http://todai7.step13.cc/2006/07/post_104.html

まとめると、次のようになります。
１謙譲語・【誰から】作者・【誰へ】天皇
２尊敬語・【誰から】作者・【誰へ】大臣
３尊敬語・【誰から】作者・【誰へ】大臣
４尊敬語・【誰から】作者・【誰へ】大臣
５謙譲語・【誰から】天皇・【誰へ】天皇
６謙譲語・【誰から】天皇・【誰へ】天皇
７尊敬語・【誰から】天皇・【誰へ】天皇

＊文法も定義が変わることがあります。「謙譲表現（語）」は、以前、動作する人（動作の主体）が、動作を受ける人（動作の客体）に対して謙譲（敬意）する。」とされていました。その後、玉上琢弥先生の「受手尊敬説」、森野宗明先生の「被影響主尊敬」などの学説から、現在では最初に上げたように、「話し手または書き手が、話題の登場人物の動作やその人物に関わる事物に用いて、その動作を受ける人物（動作の客体）を敬う表現。「受け手尊敬」とも言います。」と変化しています。１の謙譲語「申し行なひ」について具体的に説明すると次のようになります。
「申し行なひ」＠文＝地の文　＠動作の主体（動作主）＝大臣　＠動作の客体（受け手）＝天皇
≪以前の考え方≫【誰から】大臣・【誰へ】天皇
≪現在の考え方≫【誰から】作者・【誰へ】天皇

長々とした説明となった上に、記述が飛ぶこともあり、枝葉の部分を詳しく説明することもあったりで、逆に分かりづらいと思います。体面で、口頭で説明した方が楽ではあるのですが、記述するとどうしても長くなります。ごめんなさい。ともかく、古典敬語の学習は、分かりづらい上に、謙譲表現の定義の変更もあったりと、教える側も、教わる側も混乱しやすい事項です。敬語表現は３つのポイントを頭に、丁寧に訳をすることが大切です。最初は焦らず、わからない語は辞書を引き、間違っても構わないので、自分の力で訳してみましょう。それを訳のされている（できれば品詞分解もされている）参考書などで確認してください。間違った部分を修正して行く内に、古文の力がついてきます。頑張ってください。

回答No.2

fumkum

こんにちは。
古典の敬語表現について考える時に、丁寧に訳することが基本ですが、それ以外にポイントとなる大きな事柄が三つあります。

１、尊敬語、謙譲語、丁寧語を知る。そして敬語表現に注意しながら丁寧に訳しましょう。
＠古典文法の教科書などには、主な敬語の一覧などが解説付きで記載されていることが多いので、覚えるようにしましょう。ちなみに、ネットでも下記のようなものがあります。
http://www.hello-school.net/haroajapa011001.htm
＊この文では、一般の敬語一覧には出ていないと思われる「申し行なひ」という謙譲語があります。このように、全ての敬語が記載されているわけではないので、注意してください。最初は辞書・教科書・教員等の力を借りながら学習を進めて、将来的には力をつけて、類推できる古典力を持つようにしましょう。

２、登場人物を全て抜き出す。作者も忘れないようにしましょう。
＠登場人物の文中の別名にも注意する。例えば、この文では、時平については、大臣だけではなく、殿などの言い方をされています。
＠できる限り、上下関係を考える。この時に、作者を忘れないようにする。古典力が付くと、敬語表現の違いから、主語や動作の主体などを類推することもできるようになります。
＊この文では、帝（延喜）＞大臣（この殿・左の大臣・一の人・本院）＞職事＞？作者
これ以外に、御随身・御前どもも登場します。参考に書けば、帝は醍醐天皇で、大臣は左大臣藤原時平のことです。教科書などには脚注（本の下の方に書かれている注釈・説明）に説明されていると思います。
＊職事は天皇の秘書的な存在である蔵人や、その長官である蔵人頭をいいます。
＠人名がわかる部分から、主語を考えていく。また、動作の主体・客体についても考える。
＊動作の主体（動作主）とは、動作をしている人物等は誰かということです。ほぼ、主語と同一です。動作の客体（受け手）とは、動作を受ける人物等、動作の方向性の人物等は誰かということです。
例えば、「私はウサギにエサを与えた。」では、「与えた」という動作をしたのは「私」、その動作を受けた（「与えられた」）のは「ウサギ」ですから、「私」が動作の主体（動作主）、「ウサギ」が動作の客体（受け手）になります。

３、「地の文」と「会話文等」を分ける。
＊地の文は、詳説・物語などの中で、会話文・手紙文・心の中のつぶやき・和歌・引用文などを除き、説明や描写の部分。
「話し手または書き手」といった場合、地の文では作者、会話文では発言人物のことをいいます。
＠現在の敬語表現の三種類を次のように定義しています。なお、謙譲表現については以前と定義が変わっているので注意（後述）。
「尊敬表現」＝話し手または書き手が、話題の登場人物の動作やその人物に関わる事物に用いて、その人物を敬う表現。「為手（して）尊敬」とも言います。
【簡潔に】話し手または書き手が、（話題の中の）動作の主体に敬意を表す。

「謙譲表現」＝話し手または書き手が、話題の登場人物の動作やその人物に関わる事物に用いて、その動作を受ける人物を敬う表現。「受け手尊敬」とも言います。
【簡潔に】話し手または書き手が、（話題の中の）動作の受け手に敬意を表す。
＊受け手の方が主体より身分が高い。

「丁寧表現」＝話し手または書き手が、聞き手（読み手）に対して直接敬意を表す表現。

「誰から誰への敬意か」について、よく出題されるのは尊敬・謙譲表現ですから、それをまとめると、次のようになります。

敬語表現
地の文＝【誰から】作者・【誰へ】動作の主体
会話文＝【誰から】話し手・【誰へ】動作の主体

謙譲表現
地の文＝【誰から】作者・【誰へ】動作の客体（受け手）
会話文＝【誰から】話し手・【誰へ】動作の客体（受け手）
＊上記したように【誰から】は、地の文では作者、会話文では発言人物のことです。

では、次の文で具体的に解答してみましょう。なお、「尊敬語、謙譲語、丁寧語のどれか」については、下に解答を記載しますが、ご自身でも古語辞典を引いて、確認してください。

「あさましき悪事を (1)申し行なひ (2)給へ りし罪により、この大臣の御末は (3)おはせ ぬなり。さるは、大和魂などは、いみじく (4)おはしまし たるものを。」

まず、地の文か会話文等かを確認します。地の文と分かりますので、１～４の敬語の【誰から】は全て「作者」ということになります。
次に主語を考えてみましょう。この「　」内の文章は二文（センテンス）からできていますが、最初の「あさましき～おはしましたるものを。」には、「大臣」という名称があり、途中の格助詞「より」が、理由・原因を表し、下に結果・結論になっています。簡単に訳すと、「あきれるほどの悪事を言上申上げなさった罪により、この大臣の御子孫はいらっしゃらないのだ」となります。このように考えると、このセンテンスの主語は、大臣（時平）ということになります。次のセンテンスも訳すと、「しかし、大和魂－物事を処理する知恵才能は大変すぐれていらっしゃったのになあ」となり、やはりこのセンテンスも主語は大臣ということになります。
ここで、１～４の敬語表現を分類すると、１「申し行なひ」＝謙譲語・四段活用動詞・連用形。２「給へ」＝尊敬語・四段活用補助動詞・已然形。３「おはせ」＝尊敬語・サ行変格動詞・未然形。４「おはしまし」＝尊敬語・四段活用補助動詞・連用形となります。
【誰へ】については、尊敬語の場合、敬意の対象は動作の主体ですので、２～４の【誰へ】は「大臣」ということになります。
１については、謙譲語です。動作の主体である大臣より、受け手の方が身分が高いことになります。動作の主体が大臣ですから、受け手は大臣より身分が高い、つまり、ポイントの２にあるように、当然大臣より帝の方が身分が高いので、受け手は「帝」になり、１の【誰へ】も「帝」になります。
＊「申し行なひ給へ」は、謙譲語＋尊敬語と敬語表現が重なっていますが、これは動作の主体が大臣ですが、受け手が帝なので、「申し行なひ」と謙譲語を使って帝への敬意を表していますが、主体の大臣の身分も高いので、「給へ」と尊敬語を付け加えて、大臣への敬意を表しています。このような表現はよく使われますので、覚えておかれると良いと思います。

回答No.1

fujic-1990

> 尊敬語と謙譲語の見分け方

　それは言葉です。単語を覚えるだけでしょう。

　現代語でたとえれば「伺う」なんて、どう見たって「尊敬語」ではありません。「総理大臣が私の意見を伺った」なんて言いません。私は一体何様でしょうか、という話になってしまいます。

　めんどうでも、覚えるしかないと思います。そんなに数は多くないですし。

> 誰から誰の敬意というのも

　これは、まず、現代語でも同じでしょうが、地位が下の者が自分の行動等には謙譲語（それによって間接的に相手を高める）を使い、地位が上の者の行動等には直接的に尊敬語を使います。

　それはまあ誰でも知っているのですが、・・・ 古文を読んでいてその点について混乱するのは、登場しない登場人物がいるからだと思います。

　質問者さんの挙げられた文で登場するのは、時平と道真の二人みたいですが、もう二人、読者が考えなければならない登場人物がいます。

　それは、著者と天皇です。

　唐突に、著者の主人公への尊敬や、天皇に対する尊敬が、敬語として出てきます。天皇に至っては、自分の行動に敬語を使ったりします。

　また、どう考えても目上の人の発言内で、（目下の人の行動に）尊敬語が使われている場合もあります。そんなときは、著者がその目下の人を尊敬しているんだと考えればいいでしょう。

　そのあたりを踏まえて整理すると、当たらずといえども遠からずという訳ができるんじゃないでしょうか。

> あさましき悪事を (1)申し 行なひ (2)給へ りし罪により、この大臣の御末は (3)おはせ ぬなり。
さるは、大和魂などは、いみじく (4)おはしまし たるものを。

（１）「申し行う」　で１つの語で、敬語ではないと思います。
（２～４）　著者の、「この大臣：時平の地位」への尊敬

> 「世間の過差の制きびしきころ、左大臣の、一の人といひながら、美麗ことのほかにて (5)参れ る、便なきことなり。はやく (6)まかり出づ べきよし (7)仰せ よ。」

（５）「参る」　来るの謙譲。時平を下げることで、天皇・朝廷を尊敬した。
（６）「まかり出づ」　退出の謙譲。　　同上
（７）「仰す」　言うの尊敬語。言う人を高めて、言われる人（時平）を下げる。

　だと思います。