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御成敗式目

第三条で守護の職権を定め、「これ以外のことはするな」という旨を記している目的は何でしょうか。 職権乱用禁止以外に、朝廷の指示は聞くなという牽制も目的なのでしょうか。

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  • fumkum
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回答No.2

御成敗式目の第3条の原文は、 右々大將家御時所被定置者、大番催促謀叛殺害人〈付、夜討強盜山賊海賊〉等事也、而至近年分補代官於郡鄕、宛課公事於庄保、非國司而妨國務、非地頭而貪地利、所行之企甚以無道也、抑雖爲重代之御家人、無當時之所帶者、不能驅催、兼又所々下司庄官以下、假其名於御家人、對捍國司領家之下知云々、如然之輩可勤守護所役之由、縱雖望申一切不可加催、早任大將家御時之例、大番役并謀叛殺害之外、可令停止守護之沙汰、若背此式目相交自餘事者、或依國司領家之訴訟、或就地頭土民之愁鬱、非法之至爲顯然者、被改所帶之職、可補穩便之輩也、又至代官可定一人也 とあります。 この中で三条の前半部分には、「代官を郡郷に分ち補し、公事を庄保に充て課せ、国司に非ずして国務の妨げ―略―所行の企て甚だ無道なり。」とあり、守護(人奉行)の庄園・公領への侵略、国衙への介入について言及しています。 また、後半部分では「もしこの式目に背き自余の事に相交る者、或は国司領家の訴訟により、或は地頭土民の愁鬱につき、非法の至り顕然たる者は、所帯の職を改められ穏便の輩を補すべきなり。」とあり、国司・(荘園領主の)領家や地頭・土民に非法を訴えられ、判明すれば解任とされています。 さらに、第4条では、 右重犯之輩出來時者、須申子細隨左右之處、不決實否不糺輕重、恣稱罪科之跡、私令沒收之條、理不盡之沙汰、甚自由之姧謀也、早注進其旨、宜令蒙裁斷、猶以違犯者、可被處罪科、次犯科人田畠在家并妻子資財事、於重科之輩者、雖召渡守護所、至田宅妻子雜具者、不及付渡、兼又同類事、縱雖載白状、無財物者更非沙汰之限 とあり、重罪の者の取り調べの徹底と、子細の幕府への報告、幕府の指示に従うこと、勝手に犯罪者の財産を没収しないことを定め、違反したならば罪科に処す(具体的には解任)としています。 一般に法律に禁止されている事項は、現実に行われていることだとされています。ですから御成敗式目が制定された時点で、すでに守護による荘園・公領への侵略、国衙・行政権への介入、犯罪者の財産没収などの不法行為が行われていたとみることが出来ます。ですから、このような不法行為を禁止するために、重ねて職務権限を大犯三ヶ条に限定し、解任処分を定めているものとみられます。 一般に守護による守護領国制の構築は室町時代であり、鎌倉時代では地頭による土地の横領などが目立ちますが、鎌倉時代でも守護による荘園・公領への侵略、国衙・行政権の掌握、在庁官人・地頭などの被官化などの事例も多く、特に守護が在庁官人を兼ねている場合には、国衙の持っている行政権限の接収、公領(国衙領)への侵略、他の在庁官人の被官化が進む傾向が見られます。 また、三浦義村がしばしば御成敗式目を破るような行為を繰り返し、吾妻鑑に傍若無人とされているように、式目ができてもそれを破る者があるなど、守護の行動に制限を加えることは必要と思われたのではないかと思います。特に、御成敗式目成立時には北条氏の他氏排斥の途上であり、最有力の三浦氏も現存しています。三浦氏に限らず有力御家人が任命される守護は、元々大きな武士団の長であることが多く、従う武士も多く、領地も広いことも多いですから、守護の地位を利用して、御家人・国人などを被官化したり、荘園・公領を横領して経済力を高めたりしてより勢力を拡大させることに対する警戒もあったのではないでしょうか。御成敗式目51条中、1条神社祭礼、2条、寺塔仏事で、3条目に守護人奉行ですから、守護を警戒を含めて重視していたことがうかがえます。 なお、第6条では、 右國衙庄園神社佛寺領、爲本所進止、於沙汰來者、今更不及御口入、若雖有申旨、敢不能敍用、次不帶本所擧状、致越訴事、諸國庄園并神社佛寺領、以本所擧状可經訴訟之處、不帶其状者既背道理歟、自今以後不及成敗 として、国衙・荘園(本所など)・神社・寺(領)が起こす裁判に幕府は介入しないとし、律令を継承している公家法の体系や、本所が荘園支配のための本所法の体系による裁判と、御成敗式目(武家法の大系)による裁判との間に一線を設け、式目の制定者である北条泰時が北条重時にあてた式目制定の趣旨・目的である、「頼朝以来の先例や、武家社会の道徳規範たる道理に基づいて、武士にも分かり易いように作った法で、公家社会の律令、格式(などから発している公家法・本所法など)を変更したり、改廃するものではない」ことを別の面から言っており、朝廷・公家・寺社に対抗するのではなく、朝廷・公家・寺社などの法体系とその支配を認めることを言っています。 ですから、第3条についても朝廷の指示は聞くなという牽制ではなく、守護の職権乱用による勢力拡大(土地侵略・国衙への介入・被官化など)の防止と、朝廷・公家・寺社などの荘園領主勢力への配慮した条項ではないかと思います。 以上、参考まで。

mourisi3
質問者

お礼

原典史料をひいてのご教示、越権行為の具体が大変よく分かりました。 また、執権の北条氏からする他氏への警戒と牽制の目的や朝廷公家への遠慮も分かりました。 積極的に朝廷の言うことを聞くなという強い示唆ではないようですね。どうもありがとうございました。

その他の回答 (1)

  • oska
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回答No.1

>「これ以外のことはするな」という旨を記している目的は何でしょうか。 たった51条ですから、「職権乱用禁止」が主な目的でしようね。 「御成敗式目に記載が無い業務は、幕府の指示を仰げ!」という事です。 >朝廷の指示は聞くなという牽制も目的なのでしょうか。 実際は、その通りかも知れませんね。 が、朝廷側の「律」は既に無きに等しい状態でした。 それでも、朝廷支配下の地域では「律」が優先していました。 「御家人社会にのみ適用される」と、わざわざ断わっている事も意味深ですねぇ。

mourisi3
質問者

お礼

両方が目的なのですね。 御家人社会のみに適用されるという断りが、どのように意味深なのでしょうか。