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白鳥事件とは、いうまでもなく、昭和27年1月21日夜当時の札幌市警備課長白鳥一雄警部が札幌市内の道路上でピストルにより射殺された事件である。 本件再審申立人は、当時日本共産党札幌委員会の委員長の地位にあったものであるが、右事件の共謀共同正犯として起訴され、一審有・無期懲役、二審有罪・懲役20年(二審判決は、一審の事実認定を維持したが、量刑不当として職権破棄自判)と経過し、昭和38年10月17日上告棄却(刑集17・10・1795、一、二審判決も収録されている)により、右事件が確定した。 特に注目すべき点は、証拠の明白性の具体的判断の前提として示された法律見解である。 本決定は、刑訴法435条6号にいう「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」の意義、証拠の明白性の判断方法等を説示しているが、特に再審請求の審判にも「疑わしいときは被告人の利益に」という原則が適用されること及び証拠の明白性の判断は、新証拠と既存の全証拠との総合的評価により判定すべきであるとしていること(新証拠のみに基づいて確定判決が覆されることを必要としない趣旨であろうが、この問題は、確定判決における証拠判断の拘束性とも関係する)は、従来これらの点につき学説上対立がある点であり、本決定の見解と反する高裁判例もあるから、注目に値する。 証拠の明白性の判断は、最終的には裁判所の心証判断の問題に帰着するが、本決定がその判定基準を示したことは、判断の客観化に資するものであり、再審請求が6号に基づく場合が圧倒的多数であることを考えると、本決定の意義は大きいと思われる。 本決定は、右の見解を前提として、原判断の当否を審査し、結局、原判断の結論は是認できるとしているが、その中で注意を引く点は、原決定の判断を前提とすると、証拠弾丸に関し第三者の作為ひいては不公正な捜査の介在に対する疑念が生じうるとし、刑訴法435条6号の運用は、同条全体の総合的理解の上に立ってなされるべきであり、証拠の明白性の判断にあたって、右の疑念を充分念頭に置き、厳密な審査を加えることを要するとしている点である。 確定判決の証拠の一部に右のような疑念が生じるということは、その証拠の内容がどのようなものであれ重大なことであり、本決定は、この点を充分考慮に入れ、証拠の明白性の有無を判断したものと思われる。 事案が複雑であり、簡単にコメントできる性質のものではないから、前の確定判決と本決定を対比しつつ、全体を通読されることを望みた。