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本件判例は、必要的共同訴訟の上訴の利益という有名論点である。しかし、本件訴訟は確認の訴えということもあり上訴の利益がやや抽象的にわかりにくいのでそこは留意されたい。 1 事案の概要 本件は,亡Aとその内縁の妻との間の子であるXが,亡Aとその離婚した妻との間の子であるYらに対し,「Y2は,同人に亡Aの遺産のほぼ全部を相続させる旨の亡Aの自筆証書遺言書(以下「本件遺言書」という。)を偽造したものであり,民法891条5号所定の相続人欠格者に当たる」旨主張して,Y2が亡Aの相続財産につき相続人の地位を有しないことの確認を求める事案である(同確認請求を,以下「本件請求」という。)。第1審は,本件遺言書は亡Aの自筆によるものではないが,Y2がこれを偽造したとまでは認められないとの理由により,XのYらに対する本件請求を棄却した。XがYらを被控訴人として控訴したところ,原審は,Y2が本件遺言書を偽造したとの事実を認定した上で,(1)第1審判決をY2の関係でのみで取り消し,Y2に対する本件請求を認容する一方,(2)Y1に対するXの控訴を,控訴の利益を欠くものとして却下し,その結果,Y1の関係では,本件請求を棄却した1審判決が維持されることとなった。これに対し,Y2のみが上告を提起した。 2 Y1の上訴の利益  本件請求に係る訴えのような,共同相続人が,他の共同相続人に対し,その者が被相続人の遺産につき相続人の地位を有しないことの確認を求める訴えは,固有必要的共同訴訟であるというのが判例の立場である。固有必要的共同訴訟においては,共同訴訟人の1人による上訴の提起は,利益な訴訟行為として共同訴訟人の全員のために効力を生じ(民訴法40条1項),上訴を提起しなかった共同訴訟人も上訴人の地位に立つとするのが通説・判例であり、これを前提とすれば,Y2の上告により,Y1も上告人の地位に立つことになる。 本判決は,まず,本件請求に係る訴えが固有必要的共同訴訟であることからすれば,(1)1審判決は,Y1に対する本件請求をも棄却したものであって,XのY1に対する控訴につき控訴の利益が認められることは明らかであり,(2)また,原審は,Y2に対する本件請求を認容する一方で,Y1に対する本件請求を棄却した1審判決を維持したものであり,そのような判断は,固有必要的共同訴訟における合一確定の要請に反するものであると判示した。このように,原判決には,その全部につき合一確定の要請に反する違法があると考えられるが,本件ではXから最高裁に対する不服申立てがされていないため,不利益変更禁止の原則との関係で,原判決のうちXが敗訴した部分(XのY1に対する本件請求を棄却した1審判決を維持した部分)を破棄することができるかが問題となる。この問題につき,本判決は,判決要旨のとおり判示して,Y2に関する部分のみならずY1に関する部分についても原判決を破棄することができるとした。 3 三面訴訟  原告甲の被告乙に対する請求並びに参加人丙の甲及び乙に対する各請求が合一にのみ確定すべき当事者参加訴訟(いわゆる三面訴訟。民訴法47条により40条1項から3項までが準用される)につき,判例は,(1)甲の乙に対する請求を棄却し,丙の甲及び乙に対する請求をそれぞれ一部認容する旨の第1審判決に対し,甲がその敗訴部分の取消しと,甲の乙に対する請求の認容及び丙の甲に対する請求のうち一部認容部分の棄却を求めて控訴したにとどまり,乙が控訴及び附帯控訴をしない場合であっても,控訴審は,合一確定に必要な限度で,第1審判決のうち丙の乙に対する請求を認容した部分を丙に不利に変更することができるとし、(2)また,例えば甲が乙のみを相手方として上訴した場合,上訴審は,丙の上訴又は附帯上訴がなくても,当該訴訟の合一確定に必要な限度においては,原判決を丙に有利に変更することができるとする。  前記イの各判例は,「当事者参加訴訟(三面訴訟)における合一確定の要請は,紛争の一挙的かつ矛盾なき解決を図るという公益に由来する職権調査事項である。上訴審においても,職権調査事項は,不服申立の有無にかかわらず調査すべきであり,その結果原判決を取り消すべきときには,当事者の不服申立の範囲に拘束されない。」との考え方を前提とするものと理解されている。そして,この理は,民訴法40条1項から3項が適用される固有必要的共同訴訟にも当然に当てはまると思われる。すなわち,固有必要的共同訴訟において,原判決の内容が合一確定の要請に合致したものであるか否かは,職権調査事項であって,不利益変更禁止の原則の適用はないと考えられ,本判決が判決要旨のとおり判示したのも,このような考え方を前提とするものと考えられる。  また,後記のとおり,原審確定事実を前提とすれば,本件請求は認容されるベきものであるところ,Y1の関係で原判決を破棄できないとすると,合一確定の要請に反する原判決を維持せざるを得なくなり,そのような事態となれば,亡Aの遺産分割手続等において,Y2を相続人として扱うべきか否かにつき解決困難な問題が生ずることになり,「遺産分割前の共有関係にある遺産につきY2が相続人の地位を有するか否かを既判力をもって確定することにより,遺産分割審判の手続等における上記の点に関する紛議の発生を防止し,共同相続人間の紛争解決に資する」という本件請求に係る訴訟の目的に反する結果となる。この点からも,本判決が判決要旨のとおり判示したことは妥当であろう。