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回答No.2

1 事案 本件は,権利能力のない社団であるAを債務者とする金銭債権を表示した債務名義を有するXが,本件不動産がAの構成員全員の総有に属する不動産であると主張して,登記名義人であるYに対して承継執行文の付与を求めた事案である。 2 最高裁判決 最高裁判決は,「権利能力のない社団を債務者とする金銭債権を表示した債務名義を有する債権者が,構成員の総有不動産に対して強制執行をしようとする場合において,上記不動産につき,当該社団のために第三者がその登記名義人とされているときは,上記債権者は,強制執行の申立書に,当該社団を債務者とする執行文の付された上記債務名義の正本のほか,上記不動産が当該社団の構成員全員の総有に属することを確認する旨の上記債権者と当該社団及び上記登記名義人との間の確定判決その他これに準ずる文書を添付して,当該社団を債務者とする強制執行の申立てをすべきものと解するのが相当であって, 法23条3項の規定を拡張解釈して,登記債務名義につき,上記登記名義人を債務者として上記不動産を執行対象財産とする法27条2項の執行文の付与を求めることはできないというべきである。」と判示して,原審とは理由は異なるものの,結局のところXは本件執行文の付与を求めることはできないから,Xの請求を棄却すべきものとした原審の判断は結論において、任用することができるとして,Xの上告を棄却した。 3(1) 権利能力のない社団の債権・債務関係については,構成員全員に総有的に帰属するものと解されている。他方で,法人格のない社団も,代表者の定めがあるものは,訴訟当事者能力及び執行当事者能力を有する(民訴法29条・民執法20条)。したがって,権利能力のない社団の債権者は,社団自身を債務者とする金銭債権を表示した債務名義を取得することができ,かつ社団の構成員全員に総有的に帰属する財産に対して強制執行をすることができる。 (2)  また,民事執行手続においては,迅速性の要請から,執行手続の形式主義の1つとして,いわゆる「外観主義」が採用されている。すなわち,執行機関は差し押さえるべき財産が執行債務者に帰属しているか否かを審査せず,権利の帰属を推認させる外観(メルクマール)が利用されるのであるが,不動産執行の場合,ここにいう外観とは執行債務者の登記名義ということになる(民執規23条1号・73条参照)。もっとも,不動産の登記名義については,不動産登記法上,権利能力のない社団名義又は社団の代表者である旨の肩書を付した代表者の個人名義の登記をすることは許されず,社団の代表者が個人名義で登記をすることができるとするのが判例、及び実務である。とすると,執行債務者が権利能力のない社団である場合,判例理論に従えば,不動産について執行債務者の登記名義ということはあり得ず,構成員の総有不動産について,金銭債権を表示した債務名義上の債務者と登記名義人とは常に一致しないこととなる。そして,この場合に強制執行をすることができないと解するのは,最高裁も判示するように「上記債権者が権利能力のない社団に対して有する権利の実現を法が拒否するのに等しく,かかる解釈を採ることは相当でない」以上,権利能力のない社団の構成員に総有的に帰属する不動産に対する強制執行の方法を解釈によって導き出す必要性があるのである。 (3) 最高裁は,上記有力説の弱点を克服しつつ債権者による強制執行を許容するために,「構成員の総有不動産につき,当該社団のために第三者がその登記名義人とされているときは,登記記録の表題部に債務名義上の債務者以外の者が所有者として記録されている不動産に対する強制執行をする場合に準じて,上記債権者は,上記不動産が当該社団の構成員全員の総有に属することを確認する旨の上記債権者と当該社団及び上記登記名義人との間の確定判決その他これに準ずる文書を添付して,当該社団を債務者とする強制執行の申立てをすることができると解するのが相当である(民事執行規則23条1号参照)。」と判示する。すなわち,執行対象となっている不動産が,金銭債権を表示した債務名義の債務者である権利能力のない社団の構成員全員に総有的に帰属することの証明を,執行文付与の手続又は執行文付与の訴えの段階ではなく,債権者による強制執行の申立てより前の段階でなされるべきことを要求しているということができる。 田原補足意見 「上記不動産が当該社団の構成員全員の総有に属することを確認する旨の上記債権者と当該社団及び登記名義人との間の確定判決その他これに準ずる文書」としては,上記の確定した確認判決のほかに,和解調書や公正証書,さらには判決理由中で社団の構成員の総有不動産であることが認定されている確定判決など,証明力の強いものが要求されることになるであろう(田原睦夫裁判官の補足意見参照)。また,上記確認の当事者としては,登記名義人の手続保障の必要性もあることに鑑みれば,権利能力のない社団を債務者とする金銭債権を表示した債務名義を有する債権者,及び執行債務者である権利能力のない社団自身のほかに,構成員の総有不動産について登記名義人となっている第三者も含まれると解するのが相当である。

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  • shintaro-2
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