その判例は、温泉法において、知事の諮問機関である温泉審議会の意見が持廻り決議というかしある方法でされた場合、このような意見を聞いてした知事の温泉湧出量増加のための動力装置許可処分は無効かどうかである。
一審判決は、審議会の意見聴取は温泉に関する学問的、技術的考慮の確保にあり、知事の処分のための不可欠の要件であるから許可処分は無効と断じ、二審判決(行裁集14・12・2242)は、意見聴取は処分の適正を期するための参考とするに止まるから処分の無効原因とはならないとした。
本判決は、原審を支持したものである。
本判例は、「同法一九条は、都道府県知事の諮問に応じ、温泉およびこれに関する行政に関し調査、審議させるため、都道府県に温泉審議会を置く、右審議会の組織、所掌事務、委員その他の職員については都道府県の条例で定める旨規定しており、その他、同法の目的を定める一条、許可不許可の基準を定める四条等の規定に徴すれば、前記二〇条が知事に対し温泉審議会の意見を聞かなければならないこととしたのは、知事の処分の内容を適正ならしめるためであり、利害関係人の利益の保護を直接の目的としたものではなく、また、知事は右の意見に拘束されるものではないと解せられる。そして、これらの諸点を併せ考えれば、本件許可処分にあたり、知事のした温泉審議会の意見聴取は前記のようなものではあるが、そのかしは、取消の原因としてはともかく、本件許可処分を無効ならしめるものということはできない。」と述べている。
ただし、一般論として、持ち回り決議でも全部有効と考えるべきではない。行政処分にあたり特別の機関の意見を聞くべきこととしている法律は多いが、諮問にまつわるかしが処分の効力にどのように影響するかは、諮問を要求する法の趣旨の理解如何にかかると思われる。(調査官解説抜粋)