時制の面での二者択一である前に、次のような基本的な確認を行いたいと思います。
1.謙譲語の選択
この報告は、株主に向かって行う筋のものだとすれば、その言葉は謙譲語(1)であるべきで、このような謙譲語(2)では、単に聞き手への丁重さを表したもので、会社内(身内)の上司への指向ばかりで、眼前の株主への敬意に欠けたきらいがあるのではないでしょうか。
例1)「以上、ご報告申し上げます。」
また、「いたす」を使うなら、謙譲語(1)を加えて二側面表現にする。
例2)「以上、ご報告いたします。」
2.サ変動詞「漢語(動作名詞)+する」での敬意表現の難しさ
簡潔に徹すれば「以上、報告終わり。」と「名詞」で良く、またテヲニハを付けた文章形式にします。「以上」とか「報告する」という表現はもともと事務性が強く社内用語に近いため、今回のような対外的な「株主様」相手にはもっと社会性の水準を意識した表現が求められるでしょう。
例3)「このようにご報告を申し上げます。」
3.完了形表現の難しさ
東北の一部地域では電話を受けると会社や自分の名前を過去形で受ける「はい、こちらは田中でした」といった表現が使われているようですが、常体「…だ」という助詞だけしか完了形のないため一般的には現在形が使われます。過去形ではそこでこれまでの流れが一旦中断あるいは離別する、そんな最後の場合のトーンが籠ってしまい、そうでない場合に使うと、結局、今の相手に対して敬意が弱まった印象を与え兼ねない面があります。
例4)「以上で環境事業部の活動報告を終わります。」
どうしても現在形は使いたくない場合は、例えば「…だ」の敬体を使って、
例5)以上、環境事業部の報告でした。」「以上、環境事業部の活動報告でありました。」
または、別に第三者のような立場で司会役に言わせるなら、問題の言い回しも可能でしょう。
例6)「以上、環境事業部の田中がご報告いたしました。」
要は、今回の中間決算報告会において、報告者の皆さんには「株主様」に向かっての報告であるという意識が希薄だった、そこを株主として出席されて、敏感に感じとられた、ということではないでしょうか。
お礼
丁寧なご指摘ありがとうございます。 英語には文法上、現在完了形がある、つまり欧米人は「現在完了」という時制の認識がありますが、日本語だと現在完了は言葉の上では過去形と同じ、つまり現在完了という時制の認識がないのでしょうね。それは前からそう思っていましたが、それと丁寧語とどう結びつくのか勉強不足を感じます。