#6の者です。
補足です。この2日ほどちょっと考えたり、調べてみたりしました。
最初に確認しておきますが、私の立場は、
「この場合、”capable…” が 名詞句”an intelligent creature”の直後に位置していることから、 exordiaさんのことばを用いれば「形容詞句」だと見るのが自然である」
です。
〔I〕
そもそも、分詞構文という分類は日本的なもののようで、われわれは分詞節(participle clause)の副詞的な用法を特に分詞構文と呼びます(安藤貞雄『現代英文法講義』(開拓社、p.241)が、海外の文法家はどう分析しているかが参考になるように思います。
以下に、著名でよく引用されるMichael Swanの”Practical English Usage”(OUP, 第3版、pp.382-383)で見てみます。
同書は分詞節のタイプを、まず基本的な2つのパターンから説き始めます。
(以下日本語は私訳で、[ ]内は私のコメントです。)
(1)名詞の後で:the people invited to the party
分詞節は名詞や代名詞の後に用いることができる。
(例文)
1. We can offer you a job cleaning cars.
2. There’s Neville, eating as usual.
3. In came the first runner, closely followed by the second.
4. I found him sitting at a table covered with papers.
分詞節は、完全な動詞ではなく分詞を有しているという点を除き、極めて関係詞節によく似ていることが多い。(…are often very like relative clauses…)
(2)副詞節:Putting down my paper, I . . .
分詞節は同じように完全な副詞節にも用いられ、条件・理由・時間関係・結果などを表すことができる。(当然のことではあるが、これは条件・理由などの観念が極めて明白なためそれを伝える接続詞が必要とされない場合にのみ成り立つ。)
(例文)
5. Used economically, one tin will last for six weeks. (=If it is used …)
6. Having failed my medical exams, I took up teaching. (=As I had failed…)
7. Putting down my newspaper, I walked over to the window.
(= After I had put down my newspaper, …)
8. It rained for two weeks on end, completely ruining our holiday.
(= …so that it completely ruined our holiday)
(この後、いわゆる懸垂分詞の説明に入りますが、省略します)
(1) がexordiaさんの言う「形容詞句」で、(2)が「分詞構文」と言えると思います。
ここで注目をしていただきたいのは、例文2と3で、名詞の後にカンマをふって、その後に分詞が来ているタイプのものを(2)のわれわれが言う「分詞構文」ではなく、(1)の「形容詞句」として分類していることです。
[II]
今、改めて感じるのは、「名詞の後をカンマで区切ってその後に形容詞句続くパターン」を非制限用法の形容詞句と見るという認識が広く認知されるにはいたっていないようだということです。
例えば、
「先週1週間ほど私が滞在した彼の別荘」 ⇒ “his villa, where I stayed last week”
というように、「名詞, 関係詞節」は非制限用法の関係詞節として広く認知されています。
ところが、
9. 「音に満ちたいつもの生活に戻りたくなった」というときの「音に満ちたいつもの生活」は、「いつもの生活」イコール「音に満ちている」わけだから、もし形容詞fullを用いるならば ⇒ my normal life, full of noise(,)
とカンマを付して非制限的な使い方をしなければなりません。
また、分詞でも同じで、
10. 「本州の真ん中にある東京」 ⇒ Tokyo, situated in the middle of the mainland(,)
11. 「酸素と水素でできている水」 ⇒ water, consisting of oxygen and hydrogen(,)
です。
(以上の例は、前回にタイトルをご紹介した大矢 復著『大学入試最難関大への英作文―書き方のストラテジー』(桐原書店)の問題33(p.78~)からお借りしました)
こういう例を考えると、前回の回答#6の(3)で引用した次の一節:
In America, new is good. Americans are the world's greatest believers in progress. They believe that life gets better all the time ― or that it should. They expect it to be a seventy-year climb to the top, starting at not-so-good, and rising to terrific.
(数研出版『Make Progress in English Reading(上級長文読解演習)』(五訂版)の第5課第1段落最後より)
の最後の英文の ”starting at not-so-good, and rising to terrific” 部分の解釈について、
(1)「it(=life)を意味上の主語にする分詞構文」である
(2)「名詞, -ing~」の形で、-ingは直前の名詞を叙述的に修飾する非制限用法の分詞である
の2つの見方があるようですが、(1)を支持する向きもあるようですが、私は(2)と見る方がずっと素直な解釈だとみているわけです。
関係詞だけでなく、分詞句にも存在する制限・非制限用法の違いをわが国の学校英文法では分詞構文に一本化して説明しようとしているところに私は無理を感じます。
さらには、今回の、
The chimpanzee is an intelligent creature, capable of solving simple problems.
の ”capable of…”部分のように、名詞の後にカンマが付いたパターンまで、形容詞の前にbeingが補うという操作までして分詞構文であるという説明・解釈(?)に私は不自然さを感じるのです。
このように、関係詞に限らず、名詞の後ろに置かれるすべての修飾句には制限的なものと非制限的なものがある。逆に言えば、制限用法・非制限用法の区別は、いろいろな修飾法に存在する、という認識が今こそ必要であるように思います。
(大津由紀夫氏の講演の一部に関連することが述べられています。次の「2 英語教育の目的」の上から1/4ぐらいのところです。http://www.otsu.icl.keio.ac.jp/essays/kansai.html)
お礼
回答をいただいた皆さんへ、 せっかく回答をいただいたのに、お礼が遅くなって、そして、お一人お一人にお礼を言うことができずに申し訳ありません。急に多忙になったため失礼をいたしました。 私は頭がよくないので、ここでみなさんに回答をいただいても、すぐにその内容が理解できず、何度も何度も読み返して、そして、そのまま置いておいて、また、ある時にふと読み返して、なるほどそういうことなのか、とわかります。だから、どの回答が一番ためになったかというのは、だいぶ後になってからしかわかりません。 今回の分詞構文か形容詞句かというのも、ただ、カンマがあるからといって、直ちに形容詞句ではなく、分詞構文だとは決め付けられない、というのをどこかで読んだことがあります。 ということで、申し訳ありませんが、このへんで失礼いたします。