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エーリッヒ・フロムの思想
素人です。 エーリッヒフロムの書籍『愛するということ』や『生きるということ』などを読んで、彼の社会分析が鋭いな~と感銘を受けたのですが・・・。 現在の社会分析の学問として彼の分析はどう捉えられているのでしょうか?? 少し調べたところ、フロムはネオフロイト主義と呼ばれるらしいですね。 このネオフロイト主義は一番新しい思想体系なのでしょうか??
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現在の精神医学界の発表や論文でも頻繁に参考文献に挙げられる著者の一人ですね。とくに合衆国では。フランスでも評価は高いです。 あいにく他の国のことは知りません。 エーリッヒ・フロム国際協会があるくらいだから、まあ、国際的な学究対象の人物ではあるでしょう。 合衆国では相当数の大学で教鞭を取ったためもあり、ヨーロッパの精神分析を合衆国に根付かせた意味では第一人者です。 サイコダイナミクの考え方は、社会学と見合わせた上では今も有効といえます。 社会も個人も、文化の影響をいかに受けるかという問題を、 精神医学の臨床で応用しうるに至る論理化へみちびき、またセラピーに反映した点は、フロムの功績は数えてよいでしょう。 精神科医である以上、社会分析が目的なわけではないですから、 個人の病を社会の病をふまえてどう見極め、治癒ないし予防、対処するかが目的ですから、 社会分析の参考とされることはないですね。一次資料としても二次資料としても使いようがないですね。 フィールドワーク、ケースワークといった種類のものではないし、 社会のダイナミクスの予見を立てるものではないということです。 フランクフルト学派であり、マルクス主義の影響もあるところをふまえると、 社会分析自体には彼のオリジナリティはないでしょう。 だが、家族、集団というくくりから、個人の意識・無意識の力学を調整するアプローチには、戦後派らしいオリジナリティがあります。 フロムがネオフロイト派かどうかはともかく、ネオフロイト派は思想体系を形成するものではありません。 精神病理学の学説をフロイトから新たに展開した人々を指します。 ほかにも数えきれないほどの学説が諸説林立し、もちろんフロイトにもとづく分析派もあります。 言ったもの勝ちというところで、日進月歩に新しい学説が出てるのではないでしょうかね。
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- tyr134
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ANo.4です。 お礼ありがとうございます。 少し補足しますね。 >簡単にいうと科学至上主義の方からは評価を受けなかったということでしょうか?? 概ね、そんな感じですかね。(科学至上主義をどう定義するかに拠りますけど) フロイトの精神分析やマルクスの社会科学を(科学ではないと)否定したのは、カール・ライムント・ポパーという20世紀中頃に活躍したオーストラリア生まれの英国人哲学者です。 彼は「科学哲学」を発展させて「反証主義」の立場に立って、その理論を発展させました。。 これは、「反証されないモノは科学ではない」として、「狭義での科学」を確立しました。 主なプロセスとして、 ある仮説が反証される可能性(仮説が真か否かを実験・観察で見極められるか)があるかを検証する→反証可能性がある場合、実験・観察を通して批判を加えていく→その批判に耐えられた理論のみが科学的に真であると言える。 と言う感じです。 つまり、フロイトやマルクスの理論にはそれがないと主張しています。 さらに突っ込むと、社会学は多くの場合反証可能性が乏しいので、この「反証主義」に立つと、科学ではないと言えます。 そして、このポパーの立場に立つ心理学者(認知科学・脳科学)側からは批判の対象となることが多いと言えます。 そうした立場に立つ人から見れば、フロムの社会分析も意味のないモノ(少なくとも科学ではない)という事になります。 しかし、一方で社会分析にフロイトの精神分析学的な手法を取り入れた事に対して、社会学分野ではそこそこの評価を得ています。 この違いは、やはり社会科学と自然科学の対象の差から来ていると思います。 社会学は人間社会の行為・動きの原因や結果を分析しようと言う学問です。 研究対象が人間社会そのものなので、自然科学のように実験室での実験・観察が出来ません。 よって、「反証可能性が無い」とされることも多いです。 ただ、ここで注意したいのが反証主義に立って社会科学を否定したからといって、学問である「社会学(=社会科学)」を否定しているワケでも無いと言うことですね。 まぁ、ここら辺はそれぞれの思想的立場によって変化します。 >この近代的な人間至上主義・自己至上主義・自然征服主義から脱却した思想を提唱した人はいますでしょうか?? う~ん、すいません。 これについては、私の浅薄な知識では分らないですね。 お薦めとしては、E・H・カーという人の『歴史とはなにか』(岩波新書)という本ですね。 彼は、英国の歴史家であり外交官だった人です。 表題通り、「歴史哲学」について書かれた本で、非常に示唆に富む本です。 訳も20世紀を代表する社会学者で、優れた文章を書く事で定評のあった清水幾太郎氏が書かれていますので、非常に読みやすくなっています。 興味があれば是非読んでみてください。
お礼
回答ありがとうございます。 反証可能性がポイントなのですね。ありがとうございました。
3です。 psychodynamicsは英語のwikipediaでご覧になるとよいと思います。 ついでにフロムについても英語のwikiを読んでみられたらいかがでしょうか。 サイコダイナミクスはフロイトが定着させた理論で、日本語では精神力学と訳されたりします。 イド、自我、超自我といったレベル区分や、無意識と意識における情動や動機から、人間の行動や性格について分析したものです。 フロイトの分析理論の体系は、生理学や脳生理学や解剖学と並走していた、発達心理学に端を発するもので、 これらは19世紀後半に生まれたものです。心理学は人間の発達と同時に人間と社会の関わりを重視するようになります。 いっぽう、精神医学は神経学や遺伝学のアプローチによって病理学的研究が進められてきた分野で、脳の仕組みの解明と治療を主眼としています。 ですが、分析派から派生した研究者たちは、多かれ少なかれ心理学の要素を含んでおり、 社会や生育環境や集団や家族といった関係性の場について避けることができません。 おもにヨーロッパにおいて盛んだった現象学派もこれにあてはまります。 アメリカはヨーロッパからこれらの学派を導入しましたが、1970~80年代になると、脳神経の研究と投薬治療の発達によって、より生理学的、生物学的なアプローチに切り替わりました。 現在日本の精神医学の主流も同様です。ただし、慶応など分析派の牙城も存在します。 著書を出している日本の精神科医はたいてい、分析派か現象学派かそれに近いですから、社会と病を知りたいなら何か読んで見られてもいいでしょう。 心理学の読み物には、より軽やかに社会分析の視点が織り混ぜてあるはずです。 質問に答えると、社会分析と精神医学が結びついているのは心理学の諸分野のすべてとなりますね。 社会分析そのものにご興味があるのなら、フロイトのフロムのといった精神医学に足を突っ込んでも埒があきません。 とはいえ、フーコーのような、精神科医をやめて社会学畑へ転身した人物もおりますが。
- otherwind
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> 思想としては啓蒙とはいえないのですね。 私の文章の主語-述語が分かり難かったようです。ごめんなさい。私が言いたかったのは、フロムは単なる啓蒙として捉えられているということでした。 > この人の思想は読んだほうがいいというのがあれば教えて頂きたいたいです。 うーーーーーーん。これは人それぞれですねぇ(^0^;)。ジジェクとか図書館で一冊借りてみられて面白ければ(たられば)、日本語訳のあるものは読破とか……。
- tyr134
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エーリッヒ・フロムは、評価が二分される思想家の一人です。 と言うのも、彼の思想の土台はマルクスとフロイトに拠っています。 マルクスの社会分析とフロイトの精神分析を結びつけた点で、彼の評価は高いと言えます。 そして、精神学や社会学に多大な影響を残しました。 しかし、20世紀半ば頃から、行動科学や認知科学が進み、結果としてフロムやマルクスの唱える社会科学などへの批判が高まりました。 結果として、フロムの論文には「科学的根拠が無い」とのレッテル貼りが流行りました。 特に、ポパーの科学哲学により「狭義の意味での科学」が確立されると、そこに依拠する立場からの批判が高まりました。 その一方で、社会科学の立場では、彼の分析を高く評価する人も多くいます。 まぁ、20世紀半ばに一気に「社会科学」と「自然科学」が二分した事により、「精神分析」の世界でも「社会科学的立場」と「自然科学的立場」に二分されたと言えるでしょう。 そして、前者からはある程度高い評価を受け、後者からは疑似科学だとして否定する人が多いようです。
お礼
回答あちがとうございます。 「社会科学的立場」では評価を受け、「自然科学的立場」では受けなかったのですね。 簡単にいうと科学至上主義の方からは評価を受けなかったということでしょうか?? 西洋哲学って感じですね・・・。 この近代的な人間至上主義・自己至上主義・自然征服主義から脱却した思想を提唱した人はいますでしょうか??
- otherwind
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エーリッヒ・フロムがかなり若い頃に「社会の性格」(「自由からの逃走」の昔の日本語訳では「社会的性格」と誤訳されていました。昔、フロムの日本語訳はどれも本当にひどかったです。えーとフロムの「社会の性格」というのは、例えば第二次世界大戦が始まる直前のドイツ社会という社会の性格が権威主義的だということがアンケート調査で分かるというような意味です。「社会的性格」と訳してしまうと、ある一個人に、個人的性格と社会的性格があるかのように聞こえますが、そういう意味ではなくて、たとえば国民性みたいなものですね、を指していますので「社会的性格」というのは誤訳で、「社会の性格」が正しいです。)という概念を出した論文があるのですが、ちょっとタイトルを失念してしまったのですが、これがヴィルヘルム・ライヒが書いた論文とほぼ全く同じ内容なんですよ、誰が虚心坦懐に読んでも、盗作としか思えない論文。 フロムはユダヤ人で、時代が非常に悪く、大変困っていたんだと思うんですね。だから生きていくために、同情には耐えません。 けれども、通常、思想史上、特に高い評価を受けていることはない人だと思います。 デビュー作かどうかまでは失念しましたが、初期の論文がNGというだけでなく、フロムは、生涯、特に独自な理論ですとか、画期的な作品というのは一つも残していないと思います。 但し、啓蒙というか、一般受けは日本とドイツかな、多分、世界二カ国だけだったかとは思うんですが、受けてベストセラーになったのではなかったかと思います。
お礼
回答ありがとうございます。 思想としては啓蒙とはいえないのですね。 とても勉強になりました。 この人の思想は読んだほうがいいというのがあれば教えて頂きたいたいです。 よろしければお願いします。
- otherwind
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思想辞典などでは、フランクフルト学派の一員として認められている場合が有り得るとは思いますが、フランクフルト学派というと、たとえばアドルノは大変有名ですが、フロムは、正直、世の中ではあまり相手にされていないというか(と言ってしまうと、ご本人は、アメリカ合衆国には住みにくくなってメキシコに移住されたりされていたはずなので可哀想なのですが)、それほど買われているというか、思想史上、高く評価されているわけではないと思います。日本ではベストセラー本はいっぱいあります。
お礼
回答ありがとうございます☆ フロムは社会学思想という点ではなく精神医学との結びつきで知られているらしいですね・・・。 とても勉強になりました。 これは読んだほうがいいと思われる思想があれば知りたいです。 もしよろしければお願いします。
お礼
回答ありがとうございます☆ >>現在の精神医学界の発表や論文でも頻繁に参考文献に挙げられる著者の一人ですね。 精神医学で有名なのですね。 >>サイコダイナミクの考え方は、社会学と見合わせた上では今も有効といえます。 恥ずかしいのですが、サイコダイナミクスとはなんでしょうか??ウィキペディアを調べたのですがなかったので・・・。 >>社会も個人も、文化の影響をいかに受けるかという問題を、精神医学の臨床で応用しうるに至る論理化へみちびき、またセラピーに反映した点は、フロムの功績は数えてよいでしょう。精神科医である以上、社会分析が目的なわけではないですから、個人の病を社会の病をふまえてどう見極め、治癒ないし予防、対処するかが目的ですから、 社会分析の参考とされることはないですね。一次資料としても二次資料としても使いようがないですね。 私が感じていたのは正しくそれです。わかりやすく説明&対処方法が書かれていたので感銘を受けました。 >>フロムがネオフロイト派かどうかはともかく、ネオフロイト派は思想体系を形成するものではありません。精神病理学の学説をフロイトから新たに展開した人々を指します。 なるほど。ありがとうございました。 現在の社会分析でお勧めがあれば教えて頂けたら幸いです。 また、フロムのように社会分析に精神医学を結びかけた人がいたら知りたいです。 もしよろしければお願いします。